「自分でやり遂げたという感覚はまったくない」
オリックスの左腕・田嶋大樹が、22日のソフトバンク戦(京セラD大阪)で無四球完封。
2020年9月15日の楽天戦(ほっと神戸)以来、2シーズンぶり2度目の完封勝利を挙げた。
前回は『がんばろうKOBE』ユニフォームで、許した安打はわずかに2本。一方、この日は初回に二死から柳田悠岐に二塁打を浴び、アルフレド・デスパイネにはセンター前に運ばれる安打。柳田は三塁を蹴ってホームを狙ったが、ここは中堅手・福田周平の好返球によりタッチアウト。最初にして最大の危機を切り抜けた。
試合後、中嶋聡監督も「大きかった」と福田のビッグプレーを称えたが、田嶋は「初回のピンチ?覚えてないです。めっちゃ集中していたので忘れてました」と笑う。
報道陣から詳細を聞くとすぐに思い出し、「周平さんの送球をはじめ、宗(佑磨)とか紅林(弘太郎)も。(中川)圭太のレフトへの飛球もそうですし、ヒットゾーンに行った球をしっかりアウトにしてくださったのが一番大きい」と、バックの好守に感謝の意を示した。
また、この日は無四球での完封劇。これには本人も「四球がなかったのはめちゃめちゃ大きい」と手ごたえを口にする。
一方で、「自分自身の貢献できたところはたぶんそれくらい。あとは打ち取って、野手の方に守ってもらって。若月(健矢)さんにテンポ良く、リズム良く投げさせてもらって。今日は僕が完封しましたけど、自分でやり遂げたという感覚はまったくない。みんなに感謝しなきゃいけない」とし、ここでもチームメイトへの感謝の言葉が並んだ。
球界を代表する左腕から得たもの
「ゆくゆくは圧倒的なピッチングができる選手になりたいなと思っていますが、まずはしっかりと段階を踏んで、みんなに助けてもらいながら、自分でもしっかりとギアを上げて、テンポ良く投げられたらいいかなと思います。とりあえずチームに貢献というか、チームの役に立ちたい。今日はそれができて良かったかなって」
少々謙虚すぎるようなコメントだが、その中にも田嶋の志の高さが垣間見える。
この日は試合の中で胸を張るような場面がたびたび見られたが、これは練習中から意識していたことだと言う。
「セットポジションの時は重心を後ろに、胸を張るような意識で投げるようにしてみたら、けっこう感覚が良くて。ちょっとこれで行ってみようかなと。胸を張る意識でずっと練習をしていました」
6月4日に一軍登録を抹消となり、その間に新たに取り組んだことが早速実を結んだ。
「キッカケは、中日の大野(雄大)さんと投げ合った時。おもしろいセットの仕方をしていて、まずは真似から入って、自分の形にしようと。そうしたら何か分からないけどすごく良くて。口にするのが難しくて言えないんですが、きっちりハマってくれた。当分はそういう意識でやろうかなと。引き出しが増えたということにしておこうかなと思います」
交流戦で相まみえた球界を代表する左腕との投げ合いが、新たな気付きを与えてくれたと明かした。
2年ぶりの完封について、感慨深さは「ないです」とキッパリ。
「初完封の時はめっちゃ感動したんですよ。やってきたことが結果となって出てきてくれたなと。じんわり来るものもあったんですが、今はそれじゃダメだと思う」と、その理由からも“自覚”を感じる。
つづけて「年に1回とか2回じゃなくて、大野さんみたいにいっぱい完投できる選手になれたら、理想の選手に近づけるんじゃないかと思う。1回だとまぐれもあるので。複数回できるように練習したい」と語り、自身の理想とする投手像についても言及した。
今季は防御率2.39と好投を見せながらも勝ち運に恵まれなかった中、この勝利で3勝3敗の勝率.500に。
ここから白星先行に持ち込み、その中で完投・完封をいくつ達成することができるか。今後の活躍に期待したい。
取材・文=どら増田