切り込み隊長が無念の離脱
タイガースが不動のリードオフマンを欠いて正念場を迎えている。
開幕から1番打者としてチームをけん引してきた近本光司が、右肋骨骨折で4日に出場選手登録を抹消されて戦線離脱。2日のジャイアンツ戦の7回に左腕・高梨雄平から右脇腹付近に死球を受けていた。
責任感の強い男は離脱を回避すべく、ギリギリまで患部の状態を見極めた。死球から一夜明けた3日には一軍の遠征先である広島にも入って当日の朝まで様子を見たが、試合出場は困難と判断してチームを離れることになった。
今季は開幕から好調を維持し、リーグトップの44得点と12盗塁を記録。好機を生み出す役割だけでなく、得点圏打率も4割を越えており、ポイントゲッターとしても機能していた。
岡田彰布監督は「骨折やねんから普通は無理。心配してもしゃあないやんか、骨折やねんから」と当面の間、打線の中核を欠いて戦っていくことを覚悟。
5月に球団最多記録となる19勝を挙げるなど、快調に白星を量産してきたチームにとって初めて訪れた大きな危機に、まずは二軍から佐藤輝明、小野寺暖を招集して外野手を補充した。
ドラ1ルーキーも1番スタメンを経験
ラインナップの上で空いた1番には、4日のカープ戦では中野拓夢を配置。2番は“恐怖の8番”として下位打線から好機を作っていた木浪聖也に任せた。
だが、その一戦で左腕エース・床田寛樹の前にシェルドン・ノイジーのソロによる1得点に終わり完敗。翌日のカード2戦目は中野を2番、木浪を8番と定位置に戻し、1番に入った島田海吏が先頭打者アーチを放つなど2-0で勝利した。
「あんまり打順いじるのも嫌やからな。だから、木浪も定位置の方がええわ。中野もそうやけどな、ずっとあの打順でやってたからな」
岡田監督はレギュラーメンバーの打順を組み替えて1番の穴を埋めるのではなく、当面は対戦投手などによって日替わりの1番を起用して難局を乗り切る方針を示した。
空席となった「1番・中堅」の候補は、昨年も22試合で1番としてスタメン起用されてセンターもこなせる島田のほか、右ではドラフト1位の森下翔太が先のカープ3連戦からセンターに入って守備練習を行っていた。指揮官は「大学の時、センターやんか」と起用の可能性がゼロではないことを示唆したうえで、8日のヤクルト戦では実際に「1番センター森下」が実現している。
いずれにしても、近本の穴を誰か1人でカバーすることは難しい。
本来の爆発的な打棒の復活が期待される佐藤輝に、有望株の前川右京のさらなる飛躍、そしてノイジーの奮起……。
“アレ”に向けた踏ん張りどころであることは間違いない。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)