白球つれづれ2024・第22回
セ・リーグのペナントレースは全く先が見通せない。
24日現在(以下同じ)、首位を走る広島から4位の巨人までが3ゲーム差。同率の最下位に沈むヤクルト、中日まででも5.5ゲーム差しかない。1週間の戦い次第では順位がどう変わってもおかしくない。
一方のパ・リーグは先頭を行くソフトバンクと2位の日本ハムで10ゲーム差。あまりの独走にライバルチームは、この先Aクラスに入ってクライマックスシリーズでの逆襲を考え始めているかも知れない。
そんな中で今月21日、ヤクルト球団はドミンゴ・サンタナ、ホセ・オスナ両選手と新たに3年契約を結んだと発表した。共に来日4年目。年齢も30代前半から中盤に差し掛かろうとする時の長期契約は、シーズン途中と言う発表の時期も含めて異例の出来事だ。
それほどまでに2人の貢献度は素晴らしい。
今季だけを見てもサンタナが打率.313でリーグトップ。38打点は僚友のオスナと並走してこちらも先頭を走っている。
新たな契約は、サンタナには総額900万ドル(約14億3000万円)、オスナには同825万ドル(約13億1000万円)で共に出来高払いがついている。(金額は推定、以下同じ)。これによりヤクルトは両選手と7年に及ぶ契約を結んだことになり、いかに貴重な人材かが証明された格好だ。
今季のヤクルトは開幕直後から山田哲人、田口麗斗ら投打の主力選手に故障者が相次ぎ最下位に転落。それでも借金を大幅に増やすことなく上位進出の望みをつないでいるのは、野手ならサンタナとオスナ両助っ人によるところが大きい。
セ・リーグの打撃成績を見ると、規定打席に到達して名前が載っている外国人選手はヤクルト勢の2人だけ。ちなみに首位を行く広島は新外国人選手の不振で今では純国産打線で戦っている。2位の阪神もシェルドン・ノイジーが昨年より精彩を欠き、巨人はメジャー178発の触れ込みで入団したルーグネッド・オドーアが開幕前に突如退団。打線に空いた大きな穴は5月に緊急補強したエリエ・ヘルナンデスが活躍しだして、やっと一息ついているのが現状だ。
パ・リーグを見渡しても野手で機能している助っ人はロッテのネフタリ・ソトとグレゴリー・ポランコ両選手と日本ハムのアリエル・マルティネスくらいか。これら3選手はいずれもセ・リーグに在籍したのち、パの各球団が獲得に動いたもの。こうした事情もヤクルトが早めに複数年契約を結んだ要因のひとつになったのだろう。
助っ人の活躍が混セを抜け出すカギ?
日本球界では今でも外国人選手がチーム内で重要な役割を占めている。だが野手に限っては、近年活躍する助っ人は減少している。
2018年のセ・リーグでは首位打者にダヤン・ビシエド(中日)、本塁打王にソト(当時DeNA)打点王はウラディミール・バレンティン(当時ヤクルト)と打撃三冠部門を独占したが、20年以降タイトルホルダーは生まれていない。
メジャー各球団の囲い込みや、日本野球のレベルアップが主たる要因だろうが、一人で試合の流れを変え、優勝の行方も左右する助っ人大砲の不在がどのチームも決め手不足を招いているのか。
セの場合は下位に沈むヤクルトにサンタナとオスナ。中日には絶対的クローザーのライデル・マルティネス投手がいる。上位チームに抜け出すだけのパワーがなく、苦戦を強いられている下位チームにはまだ、頼れる助っ人がいる。これでは史上空前の混戦模様となってもおかしくない。
パ・リーグが派手な連勝連敗を繰り返すチームが多いのに対して、今季のセ・リーグは5連勝以上したのは、ヤクルトを除く5チームがそれぞれ1度だけ。あとは勝ったり、負けたりの一進一退の戦いが続いている。
交流戦明けの23日、巨人vsヤクルト戦では緊急補強の外国人・ヘルナンデスが打っては4号2ラン。守っては外野フェンス際でジャンプ一番の超美技。巨人の5割復帰に大きく貢献した。
推定年俸5000万円。真面目で研究熱心と首脳陣の評価も高いと言う。意外な“掘り出し物”が、ペナントレースの模様まで変えていくかも知れない。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)