ロッテの思惑とは…
ポストシーズンが終わり、日米の野球界はストーブリーグに突入した。メジャーリーグはFA選手の動向が話題の中心になっているが、活発化するのは来月のウインターミーティング前後からだろう。
今オフの最大の目玉はやはりヤンキースのフアン・ソトだ。26歳にして通算201本塁打の傑出したパワーを誇り、持ち前の勝負強さはポストシーズンで証明済み。大谷翔平超えの史上最高契約になるのではと囁かれているほどである。
そんなソトに実績では遠く及ばないが、若さとポテンシャルの高さでロッテ・佐々木朗希の名前も取りざたされている。
プロ5年目のシーズンを終えたばかりの佐々木は、海外FA権の取得はまで数年先。しかし、一部の米国メディアが今オフのポスティングの可能性に言及したことで、現地でも一躍注目の存在となった。最有力候補としてドジャースの名前も挙がっている。
佐々木といえば、ロッテ入団時からメジャーへの強い思いを持ち、毎年オフにはメジャー挑戦に関して球団と話し合いを設けてきた。今年1月の契約更改後には、将来的にメジャー挑戦の希望を自ら表明しており、ロッテがポスティングを容認するかどうかが“オフの風物詩”となっているほどだ。
ただ、現行のメジャーリーグの労使協定では、25歳未満で移籍する場合はマイナー契約しか結べず、年俸も低く抑えられる。17年オフに大谷翔平が海を渡った際は、このルールが適用されたため、当初はマイナー契約で、初年度の年俸も当時のレートで6000万円程度だった。
仮に佐々木が今オフのポスティングを容認されメジャー移籍を果たすとなると、契約金は最大で700万ドル(約10億5000万円)程度になるという。ただ、メジャー志向の強い佐々木にとって金額の大小は大きな問題ではないだろう。
一方で、ロッテにとって、佐々木が25歳になる前のポスティングは大きな損失となり得る。仮に佐々木が700万ドルの契約金を受け取った場合、ロッテの懐に入るのは20%の140万ドル(約2億1000万円)だけだからだ。
ちなみにこの条件は佐々木が24歳となる来オフも同じである。
逆に佐々木が25歳となる2年後にポスティングとなった場合は、当然メジャー契約を結ぶことができ、契約金の上限もなくなる。
25歳になるのを待ち、昨年オフにメジャー挑戦を果たした山本由伸がこの例で、ドジャースから譲渡金としてオリックスには約70億円が舞い込んだ。2年後に佐々木がどれだけの契約を結べるかは未知数だが、ロッテとすれば2年待つことにはメリットしかない。
もちろんロッテが佐々木の意思を尊重して、今オフのポスティングを認める可能性はゼロではないだろう。しかし、ビジネスという観点で考えれば、今オフ、もしくは来年オフのポスティング容認は損失でしかない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)