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MLBキャンプを視察した少年野球指導者による「ベースボールから野球を問い直す」セミナー
4月中旬、『ベースボールから野球を問い直す〜MLBから見る組織の文化と育成とは?〜』と題したセミナーが横浜西公会堂で開催され、小中高、社会人の野球指導者や保護者、現役高校球児など33人が集まった。
<MLBキャンプ視察から得た「5つ」の学び>
セミナーを主催したのは横浜市西区を中心に活動する『横浜Jブルーウインズ』のコーチで、この春MLB球団のキャンプを視察した野下卓泰氏と石田睦人氏の2人。
そもそも学童野球の指導者が、なぜMLBのキャンプを視察に行ったのだろうか? その理由を両氏はこう話す。
「日本の野球の良さや特徴を知りたいという思いが自分の中にありました。そのためには他国のことを知らないといけない。他国の野球を見ることで自分たちの特徴が浮き出てくるかなと思ったんです。一昨年にU12侍ジャパンのコーチとして色んな国と戦って色んな特徴があるなと感じましたし、そういう思いの下で視察に行きました」(野下)
「自分のチームの子どもや対戦相手の子どもを見ていても『諦めがち』な傾向をすごく感じていて、外国ではどうなのだろう? という関心がまずありました。また、シンシナティ・レッズのマイナーでコーチをされている三好貴士さんがオフシーズンに神奈川県内で野球教室をされているのですが、そこではMLBで行っている指導を子ども達に噛み砕いて落とし込んだ指導をされていました。それを見て本場のトップクラスの指導を自分で見てみたいと思ったんです」
2時間に及んだセミナーの中では、視察したシンシナティ・レッズ、ロサンゼルス・ドジャースの二球団の選手育成のアプローチが同じMLBでも大きく異なること、二球団が「選手育成で大切にしていること」などについて、両氏がスライドを用いて報告を行った。後半は参加者がグループに分かれて、「日本の指導者(教師・コーチなど)に感じる特徴」、「子どもを育んでいく中で何を重要視していきたいのか?」をテーマにグループディスカッションも行われた。
大人からは「子ども達に自分で考えさせることが大事」、「子どもの成長を『待つ』指導が大切」という声が挙がったが、現役の高校球児からは「選手の成長を『待つ』指導だけでなく、高校野球という限られた時間で『成果を出す』指導も求めたい」という、大人目線では出てこなかったであろう意見も飛び出した。
今回のMLBキャンプ視察で両氏が得たのは、以下5つの学びであったという。
- 選手のハングリーさを培うために大人の「待つ」勇気が必要である
- 内側から自分を律する力が選手を成長させる
- 育成において大事なことは〝野球選手の育成〟より〝人づくり〟であること
- 組織の文化は、リーダーの〝言葉〟ではなく〝振る舞い〟で伝わる
- 活躍されているコーチは、日米共通で常に学び続けている
セミナーを通じて両氏が特に強調したのが③の「育成において大事なことは〝野球選手の育成〟より〝人づくり〟であること」であった。実際に現地で何人かのコーチ、球団関係者に「育成において大切なことは?」と尋ねたところ、以下のような答えが返ってきたという。
・社会で活躍できる人間を育てること
・どんな人に対しても敬意を持てること
・当たり前のことを手を抜かずに一生懸命できること
・野球がどれだけ上手いかではなく、1人の人間としてどれだけ成長を支えてあげることができるか
着目すべきは誰1人として「技術が大事」とは話さなかったという点。根底にあるのは「良い人間」という土台の上に「良い野球選手」が育つという考え方だ。
高いレベルの技術が備わっているメジャーリーグの選手と、技術もまだ未熟で個人差も激しい日本の少年野球を同じ土俵で論ずることは難しい。だが、最高峰の舞台であるメジャーリーグでそのような育成が行われているのであれば、日本の野球の裾野である少年野球の現場においても、〝人づくり〟という視点は見過ごすわけにはいかなくなる。
セミナーの中では、ドジャース在籍50年、80歳の有名コーチがクラブハウスに戻る際、グラウンドのコンディショニングをチェックして、当たり前のようにゴミ拾いをしながら帰っていたという話があった。
〝人づくり〟と言われると、難しく考えてしまいがちだが、まずは人がやりたくないことを指導者が率先して行う。そういう姿を子ども達に見せていく。そんなことが野球を通じた〝人づくり〟に繋がるのかもしれない。
