中日・涌井秀章 (C)Kyodo News

 不惑を迎えた涌井秀章が、また一つ球史に名を刻んだ。

 11日の広島戦に先発し、6回6安打1失点。今季初勝利を挙げ、2005年の新人シーズンから続く連続勝利を「22年」に伸ばした。22年連続は史上6人目で、プロ1年目からでは石川雅規、米田哲也に続く3人目の快挙となった。

 もっとも、中日にとって重要なのは記録の長さだけではない。

 40歳の右腕が、今も先発ローテーションの一角として計算できることを示した。功労者に用意された記念登板ではなく、巻き返しを狙うチームに必要な1勝だった。

 この日の涌井は93球を投げ、奪三振はわずか2個。それでも、18個のアウトのうち、併殺1つを含む12個のアウトをゴロで奪った。

 初回に4点の援護を得ると、無理に三振を狙わず、ゾーン内で打たせて取る投球に徹した。直球一辺倒ではなく、スライダーやシンカーを織り交ぜてバットの芯を外していく。派手さはないが、40歳まで一軍のマウンドに立ち続けてきた理由が凝縮されていた。

 象徴的だったのが4回だ。先頭の菊池涼介に二塁打を許したものの、ファビアンを三ゴロ、坂倉将吾を空振り三振、モンテロを一ゴロに仕留めた。無死二塁のピンチを無失点で切り抜け、広島に流れを渡さなかった。

 長打を浴びた直後にも崩れず、走者を背負えば次の打者との勝負へ切り替える。球速では測れないベテランの強みが、最も分かりやすく表れた場面だった。

 今季はここまで4試合、23回を投げ、与四球はわずか2個。奪三振は14個と突出していないが、自ら走者を増やさず、失点の芽を早い段階で摘んでいる。

 球速や奪三振数を見れば、全盛期との差は否めない。それでも、ストライクゾーンの中で勝負し、試合を複雑にしない投球は今も健在だ。

 近年は登板機会が減っている。2023年は21試合、2024年は16試合、2025年は12試合。かつてのように、年間を通してローテーションの中心を担う立場ではない。

 だからといって、必要性まで薄れたわけではない。

 若手投手の登板間隔を空けたい時。故障者が出た時。連戦の途中で救援陣を休ませたい時。5回、6回まで試合を壊さずに運べる先発が一人いるだけで、首脳陣の選択肢は大きく広がる。

 井上一樹監督も試合後、涌井について「いい仕事をしてくれた」と評価した。二軍で思うような結果が出ていなくても、一軍の緊張感や経験を力に変えられるとして、この白星を「大きな1勝」と位置づけている。

 一方で当の本人は、22年連続勝利にも浮かれていない。

 内容については、7月4日の巨人戦で7回1失点に抑えた投球の方が良かったと振り返った。手にした記録よりも、もっと良い投球ができたはずだという感覚の方が強いのだろう。

 中6日のローテーション通りなら、次回登板は7月18日の巨人戦が有力だ。ここでも試合をつくれば、直近2試合で見せた安定感への評価はさらに高まる。

中日の逆襲に必要なのは、若手の勢いだけではない。

 余計な走者を出さず、ゴロを打たせ、勝負を終盤へつなぐ。不惑の涌井が22年間磨いてきた生存術は、記録達成後の今こそ、苦しいチームに欠かせないはずだ。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

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この記事を書いたのは

八木遊

1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。

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