20敗投手が出れば15年ぶり
今季メジャーワーストの勝率.301と低迷するオリオールズ。しかし現地時間18日のインディアンス戦では、先発したアレックス・コブが5安打、2失点で完投勝利を挙げ、チームの連敗を2で止めた。
今季4勝目を挙げたコブだが、今季の敗戦数はすでに勝利数を大きく上回る「15」にのぼる。もし閉幕までローテーションを守れば、残り7試合前後に先発することになるが、打線の援護次第では、シーズン20敗の可能性もあるだろう。
今季のコブは、9イニング当たりの援護点(ランサポート=RS)がア・リーグの規定投球回に到達している37投手のなかでワーストの3.35。自身の防御率5.09もあいまって、とにかく勝ちに恵まれず、敗戦数が増えている。
1シーズンが162試合になった1961年以降(※ナ・リーグは62年~)、シーズン20敗以上を喫した投手は26人。うち5人が2回ずつ記録しており、のべ31回を数える。もしコブが20敗に達すれば、2003年のマイク・マロース(タイガース)以来、15年ぶりの不名誉な記録となってしまう。
なお、03年のマロースは9勝を挙げており、“借金”という意味では「12」だった。今季のコブは4勝15敗で、借金は「11」ということになる。
1961年以降、最も“借金”が多かった投手は1963年メッツのロジャー・クレイグ(5勝22敗)と85年パイレーツのホセ・デレオン(2勝19敗)でともに「17」。コブが残り7試合を0勝6敗以下なら、借金の部門で2人に並ぶことになる。
“一度も勝てずに2桁敗戦”も
投手にとって最も不名誉で屈辱的な「敗戦」。1979年から82年にかけてツインズでプレーしたテリー・フェルトンという投手は敗戦数にまつわる興味深い記録を保持している。
フェルトンにとってメジャー最後のシーズンとなった82年、主に中継ぎとして48試合に登板したが、なんと0勝13敗でシーズン終了。通算でも0勝16敗と、一度も勝利投手になることなく現役を引退しているのだ。
ただし、セーブを3つ記録しているのがせめてもの救いか。通算勝利数が「0」で敗戦数が2桁に達している投手はメジャー史上、フェルトンを含めて4人いる。
1961年以降ではフェルトン以外にもう一人、現在メッツでプレーするポール・シーワルドがこれに該当する。
昨年4月、26歳でメジャー初登板を果たしたシーワルドの通算記録は0勝10敗。デビューから10連敗中のシーワルドは、フェルトンの不名誉な記録を塗り替えてしまうのだろうか。それとも16敗に到達する前に初勝利を手にすることはできるだろうか。
毎試合必ず1人の投手が手にする「敗戦」という記録。なかなか注目される機会はないが、そこにも様々な物語がある。
文=八木遊(やぎ・ゆう)