例年より早め、そして7年ぶりに東京で3月20日に開幕したメジャーリーグ。1869年に世界初のプロ野球チーム、シンシナティ・レッドストッキングス(現在のレッズの前身)が結成され150年という記念すべきシーズンは、翌3月21日に「イチロー現役引退」という歴史の転換点ともいえる長い夜を経て、早いもので2カ月を経過。すでにシーズンの1/3を消化しました。
昨シーズンの覇者レッドソックスのつまずき、マリナーズのロケットスタートとそのリバウンド、ヤンキースは取り憑かれたようにケガ人を続出させるも結局首位をキープ……予想通り、予想を覆す、想定内、想定外、つまりは何でもあり!な、MLBレギュラーシーズンをここまで総括しつつ、恐らく史上初、6月上旬にFA選手の争奪戦が行われるであろうMLBを占ってみましょう。
▼ 日本開幕シリーズの手記はこちら
・イチロー凱旋…歓喜と惜別の引退前夜
・唐突に訪れた“引退”の一報
・イチローとボクたちの幸福な関係
ア・リーグ東地区は、昨季5月18日に実験的に採用し、昨季後半に限っていえば世界一となったレッドソックスとほぼ互角の勝率をあげ、他のMLBのチームのみならずNPBにまでも影響を与えている「オープナー」戦法を確立したレイズが、適材適所の補強も成功し絶好調。他の地区なら断トツ首位!となりそうなところですが、ところがどっこいそこはア・リーグ東地区、”悪の帝国”ヤンキースが更にその上を走っているのです。
しかもアーロン・ジャッジを始め、本来アクティブ・ロースター(25名)に入るべき選手のうち現在10名(一時は13名も!)をケガ人で欠く状態にもかかわらず! ローテーションを守り続ける田中将大は勿論のこと、レイズのお株を奪うオープナーとしても登板するチャド・グリーン、ブーメランのようなスライダーを投げるヤンキー史上初にして最後の背番号一ケタ台「0」を背負うアダム・オッタビーノ、昨季の絶不調から高速チェンジアップを武器にV字回復を果たしたトミー・ケインリー、更には自身初の開幕メジャーから現在何とハーラーダービートップの9勝を挙げているドミンゴ・ハマーンなど、語弊を恐れずに言えば、脇役的な投手陣が大活躍。ここに負傷中の野手陣が復活となると……悪の帝国どころではなくなりますね……。
開幕前は誰しもがインディアンズの地区4連覇を疑わなかったでしょう、ア・リーグ中地区。蓋を開けてみれば…おいおいマジかよ、ツインズが独走しちゃってるじゃないですか! MLB監督としては史上初の1980年代生まれ(1981年)37歳、かつては往年の名選手にちなみ「ジョー・ディマジオ2世」とも呼ばれ、レイズで指導者としての薫陶を受けたロッコ・バルデッリ監督の下、投打共に生え抜きの若手が揃って覚醒し始め、そこに超優秀なユーティリティのマーウィン・ゴンザレス、更には大ベテランのDHネルソン・クルーズが加入し、5月末の時点で地区優勝の確率94.5%という絶好調っぷり。
その中でも話題沸騰なのが捕手ながら内外野も守り、アンコ型体型ながら一生懸命かつすばしっこい動きでファンのみならずMLB好事家達をも魅了している、ニックネーム”La Tortuga”、日本語に訳すと”亀”ことウィリアンズ・アストゥディーヨは、覚えていて損はありません!
西地区はア・リーグ、ナ・リーグ、共に下馬評通り、というか下馬評以上にアストロズとドジャースが独走開始。アストロズはホセ・アルトゥーベやジョージ・スプリンガー、カルロス・コレアなど看板選手が揃って5月下旬に故障者リスト入りしながらも、チーム打率MLB1位、チーム防御率MLB2位と、総合力で非の打ち所がありません。
ドジャースも前田健太やリュ・ヒョンジンなど先発陣の奮闘、コディ・ベリンジャーの覚醒、そして開幕は出遅れたもののチームを牽引している大黒柱クレイトン・カーショウの安定感もあり、高め安定の成績。特にカーショウは今季から変化球の割合を増やし、なかでもMLBマニアの間でも昨今話題沸騰の球種「スラッター」、つまりスライダーとカッターを組み合わせた変化球を投げ始め、更なる進化を遂げ始めているのではと囁かれています。
「私たちは資金を投じ始める予定だ。少々バカげたものになるかもしれない。」とのGMの発言から端を発し、ブライス・ハーパーを始め積極的な補強に打って出たフィリーズ、トレードを重ねて有望選手を数多く獲得したメッツ、ハーパーは失ったものの盤石の先発陣に更なる深みを求めたナショナルズ、それに対する昨季覇者のブレーブスによる激戦が予想されたナ・リーグ東地区。
ナショナルズが予想外の低迷、メッツはケガ人続出、大型契約の割にあまり良い数字を残してないハーパー要するフィリーズは首位ですが、ブレーブスもしっかり追いかけています。この地区はもう一波乱ありそう。それは後ほど触れますね。
最後にナ・リーグ中地区。昨季は地区優勝決定戦を制しワールドシリーズまであと1勝まで迫ったブリュワーズは、名前だけみればオールスターと間違えてしまうほどに戦力が整い、なかでも昨季MVPを獲得したクリスチャン・イエリッチが開幕から(何故かホームゲームを中心に)打ちまくり、2年連続MVPも(現時点だと)現実味を帯びてきています。
しかし、そのブリュワーズを抑え5月まで首位に立っていたのが、昨季その決定戦で敗れたカブス。ダルビッシュは今年から通訳なし、現地メディアとも直接英語で対応し、しかもそれが非常に熱心なものの、結果が追いつかず、良い日と悪い日がはっきりしていて、「これから本気出す」状態。それでもカイル・ヘンドリクスを中心に他の先発陣が盤石、また野手陣も昨季打点王のハビアー・バエズを筆頭にヒーローが日替わりで現れ、今季すでに5試合ものサヨナラ勝ちを飾っています。
下馬評の高かったカージナルスが若干低迷する中、2強状態が続いていく感じでしょうか。
今季からトレードのデッドラインが7月31日に一本化され、8月以降は移籍が出来なくなりました。ですが、今年は異例中の異例、6月上旬に一つ目の山を迎えます。
時期は6月上旬に開催されるドラフト終了後。ここに絡んでくるのは未だFA状態の大物投手2人、クレイグ・キンブレルとダラス・カイケル。2人はFAとなり、同時に古巣からクオリファイング・オファーを受けていましたがそれを拒否。拒否した選手を獲得したチームはドラフト上位の指名権をその選手の古巣チームに譲らなくてはなりません。
ですが、その期限は翌年のドラフト会議まで。つまり、6月上旬のドラフトが終わると、そのリスクはなくなり、一気に争奪戦が始まるのです。
もちろん、開幕から出遅れての合流になりますが、少なくとも後半戦、下手すればポストシーズンだけでもしっかり働いてくれれば本望、くらいの感じで今季チャンスのあるチームがこぞって獲得に動くことは間違いありません。
カイケルに関しては、ヤンキースが興味を示しているとの噂が流れていますし、もしキンブレルが古巣ブレーブスに復帰!となるとナ・リーグ東地区は大混戦に……いやフィリーズがそれを許さない!?はたまた他の球団が獲得?今年はドラフト「後」の二人の行方にも要注目です!
※数字等は6月1日終了時点
文=オカモト“MOBY”タクヤ(おかもと“もびー”たくや)
昨シーズンの覇者レッドソックスのつまずき、マリナーズのロケットスタートとそのリバウンド、ヤンキースは取り憑かれたようにケガ人を続出させるも結局首位をキープ……予想通り、予想を覆す、想定内、想定外、つまりは何でもあり!な、MLBレギュラーシーズンをここまで総括しつつ、恐らく史上初、6月上旬にFA選手の争奪戦が行われるであろうMLBを占ってみましょう。
オープナーを確立したレイズ、「雨後の筍」ならぬヤンキース
▼ 日本開幕シリーズの手記はこちら
・イチロー凱旋…歓喜と惜別の引退前夜
・唐突に訪れた“引退”の一報
・イチローとボクたちの幸福な関係
ア・リーグ東地区は、昨季5月18日に実験的に採用し、昨季後半に限っていえば世界一となったレッドソックスとほぼ互角の勝率をあげ、他のMLBのチームのみならずNPBにまでも影響を与えている「オープナー」戦法を確立したレイズが、適材適所の補強も成功し絶好調。他の地区なら断トツ首位!となりそうなところですが、ところがどっこいそこはア・リーグ東地区、”悪の帝国”ヤンキースが更にその上を走っているのです。
しかもアーロン・ジャッジを始め、本来アクティブ・ロースター(25名)に入るべき選手のうち現在10名(一時は13名も!)をケガ人で欠く状態にもかかわらず! ローテーションを守り続ける田中将大は勿論のこと、レイズのお株を奪うオープナーとしても登板するチャド・グリーン、ブーメランのようなスライダーを投げるヤンキー史上初にして最後の背番号一ケタ台「0」を背負うアダム・オッタビーノ、昨季の絶不調から高速チェンジアップを武器にV字回復を果たしたトミー・ケインリー、更には自身初の開幕メジャーから現在何とハーラーダービートップの9勝を挙げているドミンゴ・ハマーンなど、語弊を恐れずに言えば、脇役的な投手陣が大活躍。ここに負傷中の野手陣が復活となると……悪の帝国どころではなくなりますね……。
5月末の時点で地区優勝の確率94.5%!?
開幕前は誰しもがインディアンズの地区4連覇を疑わなかったでしょう、ア・リーグ中地区。蓋を開けてみれば…おいおいマジかよ、ツインズが独走しちゃってるじゃないですか! MLB監督としては史上初の1980年代生まれ(1981年)37歳、かつては往年の名選手にちなみ「ジョー・ディマジオ2世」とも呼ばれ、レイズで指導者としての薫陶を受けたロッコ・バルデッリ監督の下、投打共に生え抜きの若手が揃って覚醒し始め、そこに超優秀なユーティリティのマーウィン・ゴンザレス、更には大ベテランのDHネルソン・クルーズが加入し、5月末の時点で地区優勝の確率94.5%という絶好調っぷり。
その中でも話題沸騰なのが捕手ながら内外野も守り、アンコ型体型ながら一生懸命かつすばしっこい動きでファンのみならずMLB好事家達をも魅了している、ニックネーム”La Tortuga”、日本語に訳すと”亀”ことウィリアンズ・アストゥディーヨは、覚えていて損はありません!
西地区は両リーグとも予想通り
西地区はア・リーグ、ナ・リーグ、共に下馬評通り、というか下馬評以上にアストロズとドジャースが独走開始。アストロズはホセ・アルトゥーベやジョージ・スプリンガー、カルロス・コレアなど看板選手が揃って5月下旬に故障者リスト入りしながらも、チーム打率MLB1位、チーム防御率MLB2位と、総合力で非の打ち所がありません。
ドジャースも前田健太やリュ・ヒョンジンなど先発陣の奮闘、コディ・ベリンジャーの覚醒、そして開幕は出遅れたもののチームを牽引している大黒柱クレイトン・カーショウの安定感もあり、高め安定の成績。特にカーショウは今季から変化球の割合を増やし、なかでもMLBマニアの間でも昨今話題沸騰の球種「スラッター」、つまりスライダーとカッターを組み合わせた変化球を投げ始め、更なる進化を遂げ始めているのではと囁かれています。
大混戦が予想されたナ・リーグ東地区は?
「私たちは資金を投じ始める予定だ。少々バカげたものになるかもしれない。」とのGMの発言から端を発し、ブライス・ハーパーを始め積極的な補強に打って出たフィリーズ、トレードを重ねて有望選手を数多く獲得したメッツ、ハーパーは失ったものの盤石の先発陣に更なる深みを求めたナショナルズ、それに対する昨季覇者のブレーブスによる激戦が予想されたナ・リーグ東地区。
ナショナルズが予想外の低迷、メッツはケガ人続出、大型契約の割にあまり良い数字を残してないハーパー要するフィリーズは首位ですが、ブレーブスもしっかり追いかけています。この地区はもう一波乱ありそう。それは後ほど触れますね。
ナ・リーグ中地区は昨季同様2強状態
最後にナ・リーグ中地区。昨季は地区優勝決定戦を制しワールドシリーズまであと1勝まで迫ったブリュワーズは、名前だけみればオールスターと間違えてしまうほどに戦力が整い、なかでも昨季MVPを獲得したクリスチャン・イエリッチが開幕から(何故かホームゲームを中心に)打ちまくり、2年連続MVPも(現時点だと)現実味を帯びてきています。
しかし、そのブリュワーズを抑え5月まで首位に立っていたのが、昨季その決定戦で敗れたカブス。ダルビッシュは今年から通訳なし、現地メディアとも直接英語で対応し、しかもそれが非常に熱心なものの、結果が追いつかず、良い日と悪い日がはっきりしていて、「これから本気出す」状態。それでもカイル・ヘンドリクスを中心に他の先発陣が盤石、また野手陣も昨季打点王のハビアー・バエズを筆頭にヒーローが日替わりで現れ、今季すでに5試合ものサヨナラ勝ちを飾っています。
下馬評の高かったカージナルスが若干低迷する中、2強状態が続いていく感じでしょうか。
今年は6月上旬に「確変」がおこる!
今季からトレードのデッドラインが7月31日に一本化され、8月以降は移籍が出来なくなりました。ですが、今年は異例中の異例、6月上旬に一つ目の山を迎えます。
時期は6月上旬に開催されるドラフト終了後。ここに絡んでくるのは未だFA状態の大物投手2人、クレイグ・キンブレルとダラス・カイケル。2人はFAとなり、同時に古巣からクオリファイング・オファーを受けていましたがそれを拒否。拒否した選手を獲得したチームはドラフト上位の指名権をその選手の古巣チームに譲らなくてはなりません。
ですが、その期限は翌年のドラフト会議まで。つまり、6月上旬のドラフトが終わると、そのリスクはなくなり、一気に争奪戦が始まるのです。
もちろん、開幕から出遅れての合流になりますが、少なくとも後半戦、下手すればポストシーズンだけでもしっかり働いてくれれば本望、くらいの感じで今季チャンスのあるチームがこぞって獲得に動くことは間違いありません。
カイケルに関しては、ヤンキースが興味を示しているとの噂が流れていますし、もしキンブレルが古巣ブレーブスに復帰!となるとナ・リーグ東地区は大混戦に……いやフィリーズがそれを許さない!?はたまた他の球団が獲得?今年はドラフト「後」の二人の行方にも要注目です!
※数字等は6月1日終了時点
文=オカモト“MOBY”タクヤ(おかもと“もびー”たくや)