昨年の秋季大会で“猛打爆発”
新型コロナウィルスの影響で中止となった選抜高校野球。まさに“幻の大会”となってしまったが、チーム、選手にとってはこれからもシーズンは続いていく。ここでは、そんな幻の大会で見たかったドラフト有力選手を紹介していきたい。今回も今年の高校球界を代表する長距離打者を取り上げたい。
▼ 小深田大地(履正社)
【投 打】右投げ左打ち
<2019年秋季大会成績>
11試合:37打数20安打 2本塁打 17打点 7四死球 0盗塁
打率.541 / 出塁率.614 / 長打率.946 / OPS1.560
強打者タイプの選手としては、前回取り上げた西川僚祐(東海大相模)と双璧をなすと見られているのが、この小深田だ。1年夏からサードのレギュラーをつかむと、秋にはクリーンアップに定着。全国デビューとなった昨年春の選抜では、初戦で星稜に敗れたものの、最終回に奥川恭伸(ヤクルト)から痛烈なライト前ヒットを放って存在感を示した。
さらに、昨年夏の甲子園では、全6試合に3番・サードとして出場し、9安打を放つ活躍で、チームの全国制覇にも貢献している。しかしながら、長打は二塁打1本、打点も「1」に終わっており、本人もまた、大会後には嬉しさよりも悔しさが残った大会だったと語っている。
“夏の鬱憤”を晴らす活躍を見せたのが、昨年の秋季大会だ。大阪府大会では8試合で12安打を放ち、打率5割を記録すると、続く近畿大会でも準々決勝の京都翔英戦でコールド勝ちを決めるサヨナラ本塁打を放ち、6割を超える打率をマークした。秋季大会で放った20安打のうち9本が長打というのも見事という他ない。
長打力を生み出す原動力は強靭な下半身
小深田の魅力は長打力と確実性を兼ね備えている点だ。上背はそこまでではないものの、自然体で力を抜いた大きな構えは迫力十分。高校生のスラッガーの場合、反動をつけようとしてバットの動きも大きいことが多いが、小深田は小さい動きでトップの形を作り、無駄なく力強いスイングができている。これは先輩の井上広大(阪神)とも共通している長所だ。
井上と比べてもボールを芯でとらえる力は上回っており、昨年秋は11試合で三振もわずかに「2」という数字が残っている。飛距離を生み出す原動力は、強靭な下半身だ。踏み出した右足でしっかりと地面をつかまえており、股関節を使って上半身の動きをリードしている。
腕力に頼ってバットをぶつけるようにして打っていると、木製バットになった時に苦しむことが多い。しかし、小深田の打ち方であればしっかり対応することができるだろう。
脚力はそれほど目立たないが、サードの守備も安定感は申し分ない。一歩目の反応が良く、グラブさばきとスローイングも高校生ではトップレベルだ。高校の先輩で、同じサードを守っていた安田尚憲(ロッテ)と比べても、守備力は確実に上だと言える。
井上、安田とともに上位指名でプロ入りした履正社の先輩を引き合いに出したが、彼らと比べても野手として総合力では既に同等のレベルに達しているように見える。高校生野手の場合は、何度も試合を見ると欠点が目につくことが多いのだが、小深田についてはそこまで気になる点が見当たらない。
高校からプロ入りしても、早い段階で高いレベルに対応できる可能性は高そうだ。プロでは現在、サードの強打者が不足しているだけに、そういう意味でも注目を集めることは間違いないだろう。
記事提供:プロアマ野球研究所