各球団が下位指名で狙う逸材
いよいよ、2020年のプロ野球ドラフト会議が今月26日に開催される。“運命の一日”まで1週間を切り、各球団が最終の絞り込みに入る時期となった。
ここまで来ると、やはり連日ドラフト関連のニュースも増えてきている。ただし、主だった報道は上位候補についてがほとんどで、一般的にはあまり知られていない有力候補も少なくない。
そこで今回も、「上位指名の可能性は高くないが、今後が楽しみな選手」を紹介していきたい。ここでは、前回の投手編に続いて、高校生野手をピックアップした。
近年のような“目玉”は不在
まず、高校生の野手で2位以内の上位指名の可能性がある選手はというと、小深田大地(履正社)、来田涼斗(明石商)、元謙太(中京)、井上朋也(花咲徳栄)あたりの名前が挙がる。
1位指名が確実、という大物は不在の印象だが、彼らは場合によっては1位の12人に入ってくる可能性もある実力者たちだ。
それ以外の選手では、ショートの守備ではNo.1と見られている土田龍空(近江)や、夏に少し調子を落としていた細川凌平(智弁和歌山)の2人も実績のある選手だけに、3位以内は十分射程圏内と言えるだろう。
支配下での指名が期待できる捕手4選手
彼らにつづく候補となると、今年の高校生は捕手に好素材が多いように見える。なかでも支配下での指名が期待できるのが牧原巧汰(日大藤沢)、二俣翔一(磐田東)、中川拓真(豊橋中央)、関本勇輔(履正社)ではないだろうか。
まず、打撃に関しては牧原が頭一つ抜けている印象だ。
そこまで上背があるわけではないが、ヘッドスピードの速さは高校生の中ではトップクラス。広角に長打を放つことができ、もちろんスローイングとキャッチングも高レベルだ。
一方、地肩の強さでは二俣がNo.1。投手としても140キロ台中盤のスピードを誇り、低い軌道で一直線にセカンドベースまで届く。
中川と関本の2人も、いかにも捕手らしいたくましい体つきで攻守ともに高いレベルを誇る。若手捕手が不足している球団にとっては垂涎の存在と言えるだろう。
その他にも、3拍子揃う古谷将也(成田)や大舞台で経験を積んでいる内山壮真(星稜)、合同練習会で見事なスローイングを見せた藤田青空(弘前東)、荒木友斗(加茂暁星)、古市尊(高松南)なども面白い。
遊撃手には3人の好選手が揃う
プロからの需要が高いショートでは中山礼都(中京大中京)、高寺望夢(上田西)、岡本大翔(米子東)が有力候補となる。
中山と高寺は3拍子揃ったいかにもショートらしい選手で、広角に打ち分ける打撃技術は高校生離れしている。ともに「プロ志望高校生合同練習会」で鋭い当たりを連発し、木製バットへの対応力の高さを見せつけた。
岡本は、その合同練習会では左手首の故障で打撃を回避したが、その分ショートの守備でアピールした。190センチと大柄ながら動きには軽さがあり、そのプレーぶりは日本人離れしたものがある。
昨年の甲子園に出場した時とは別人とも言えるフットワーク、グラブさばきだっただけに、この一年での成長を評価する声も多い。スケールの大きさという意味では今年の候補の中でも屈指と言えるだろう。
強打者タイプは6人、一芸に秀でた俊足選手も
近年、プロが積極的に指名している強打者タイプでは、入江大樹(仙台育英)、西野力矢(大阪桐蔭)、石川慧亮(青藍泰斗)、西川僚祐(東海大相模)、漁府輝羽(おかやま山陽)、山本大斗(開星)などの名前が挙がる。
全員が右打ちで、打つ以外のプレーに特徴のない選手もいるが、何よりも遠くへ飛ばせるというのは大きな魅力である。西野や石川、漁府は合同練習会で木製バットでも長打力を見せており、スカウト陣からも評価するコメントが多く聞かれた。若手の強打者タイプが不足している球団にとっては面白い選手たちだ。
逆にスピード自慢では、奥野翔琉(明徳義塾)が筆頭候補となる。
4.0秒を切れば十分に俊足と言われる一塁の到達タイムで、コンスタントに3.8秒台をマークするスピードはプロでも上位に入るレベルだ。
甲子園交流試合でも2盗塁をマークしており、積極的に次の塁を狙う姿勢も光る。“一芸候補”として狙う球団は多いだろう。
身長2メートルの“未完の大器”
最後に、スケールの大きさでは秋広優人(二松学舎大付)を推したい。
身長2メートルの長身で140キロを超えるスピードを投げるだけに、投手として推す声もあるが、ゆったりとしたタイミングの取り方と、軽く振っているようでも飛距離の出るバッティングはやはり捨てがたいものがある。これだけの長身ながら身のこなしに軽さがあり、ストライドの長いベースランニングも迫力十分だ。
典型的な未完の大器タイプだが、上手く育てば球界を代表するスラッガーに育つ可能性がある。
過去数年の指名を見ていると、どの球団も高校生の野手に対するプライオリティが上がっていることは間違いない。ここで名前を挙げた選手たちも、順位は高くなくとも、数多く指名されることが期待できるだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所