すでにキャンプ地・北谷に入り、新たな仲間と汗を流す松坂大輔(C)KYODO NEWS IMAGES

◆ 松坂の通算完投数は今なお現役No.1

 ソフトバンクを自由契約となっていた松坂大輔の中日入りが決まった。

 言わずと知れたかつての日本球界を代表する大エース。5年連続でBクラスに沈んだ中日からすれば、もし松坂が復活してくれればこれほどの補強はない。

 ただ、やはり心配されるのは、横浜高時代を含む若いころからの肩や肘の酷使による衰え。松坂といえば、とにかく数多く投げ込むことで状態を上げていく極度の“投げたがり”として知られた投手。しかも、試合でも絵に描いたような先発完投型であった。

 松坂が日本のプロ野球に残している驚くべき数字がある。以下をご覧いただきたい。

【現役投手・通算完投数ランキング】
1位 72 松坂大輔(中日)
2位 55 涌井秀章(ロッテ)
3位 48 杉内俊哉(巨人)
4位 43 金子千尋(オリックス)
5位 38 和田 毅(ソフトバンク)
6位 37 成瀬善久(ヤクルト)
7位 34 岸 孝之(楽天)
8位 27 内海哲也(巨人)
9位 25 石川雅規(ヤクルト)
9位 25 則本昂大(楽天)

 こちらはNPB現役投手による完投数のランキング。松坂の記録はルーキーイヤーの1999年からメジャー挑戦前年の2006年までというわずか8年間でのもの。にもかかわらず、その間に記録した「72完投」は現役投手の中で断トツの数字だ。

 ちなみに、現在メジャーで活躍する田中将大とダルビッシュ有は、ともに日本での7年間でそれぞれ53完投、55完投という記録を残しているが、松坂は彼らをもしのぐ驚異的なペースで完投数を積み上げてきたということだ。

◆ 豪腕とはちがうかたちでの怪物の姿を見せてほしい

 西武在籍時代の松坂は、8年間で4度の2ケタ完投を記録。特にメジャー挑戦直前の2004年〜2006年には、いずれも完投数は2ケタに達し、かつ先発試合の半数以上で完投するというとんでもない“完投率”を残している。

 なお、投球回では石川雅規(ヤクルト)の2559回2/3がNPBの現役投手No.1。松坂は1403回2/3で13位だが、日米通算なら2194回となり、石川に次ぐ2位に相当する。メジャー時代の後半は登板機会が限られたことや、ソフトバンクでの3年間で1イニングしか投げていないことを考えれば、やはりハイペースで投球回を積み重ねてきたことにはちがいない。

 先発ローテーションの軸として期待される投手たちは決まって「200投球回」を目標に掲げる。先発投手が長いイニングを消化してくれることは、長いシーズンを戦い抜かなければならないチームにとっては確かにありがたい。

 とはいえ、投手の分業制が確立した現代において、高校野球に限らず投手の肩や肘の酷使が問題視されて久しい今、長くチームに貢献することを考えれば、投球回にこだわり過ぎる必要はないのかもしれない。

 1998年、松坂が今なお野球ファンに伝説として語られる夏の甲子園を制してから間もなく20年。あの豪腕の復活に期待するのは現実的ではないかもしれないが、投球過多という若き日に背負った“負債”を返済し、またちがったかたちでの怪物の姿をもう一度見せてほしい。

文=清家茂樹(せいけ・しげき)

【清家茂樹・プロフィール】 1975年、愛媛県生まれ。出版社勤務を経て2012年独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。野球好きが高じてニコニコ生放送『愛甲猛の激ヤバトーク 野良犬の穴』にも出演中。

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