就任3年目の吉井理人監督が率いるロッテが着々と歩を前に進めている。
吉井監督が井口資仁前監督からバトンを受けたのは、5位に沈んだ2022年のオフ。就任1年目の23年に一気に2位まで順位を引き上げたが、24年は3位と小休止があった。
それでも就任から2年連続で勝ち越しを達成。これはロッテの監督として1984~85年の稲尾和久氏以来の快挙だった。今季は1968~70年の濃人渉監督以来、55年ぶりとなる就任から3年連続勝ち越しを狙う。
今季のロッテを左右するカギの一つが扇の要だ。昨季のチーム防御率3.17はパ・リーグ5位。オフに抜けた佐々木朗希の穴をいかに埋めるかが大きなポイントで、その投手陣を引っ張る捕手の役割が非常に重要となりそう。
本来なら3年前に高卒ルーキーとして開幕スタメンを務めた松川虎生が正捕手の座に就いているべきだったかもしれない。松川は同年4月に佐々木朗希が完全試合を達成した際にマスクを被っていたことで大きな話題となった。
ところが、1年目は76試合に出場したものの打率.173に終わり、その後の2年間も出場試合数を減らしている。23年は9試合に出場し、打率.188。24年は打率.250をマークしたが、わずか2試合の出場だった。
高校通算43発を放つなど“打てる捕手”としてドラフト1位指名を受けた松川だったが、プロ入り後は打撃が大きな課題として付きまとっている。一軍ではいまだノーアーチで、二軍でも3シーズン合計144試合で1本塁打に留まっている。
高卒4年目の21歳は早くも正念場を迎えているといっていいだろう。4年目の今季もオープン戦で8打数1安打(打率.125)と、打撃開眼の気配は見えない。
一方で、松川を尻目に一気に正捕手争いに参戦しようとしているのが、高卒2年目、19歳の寺地隆成だ。
高知の名門・明徳義塾から23年のドラフト5位でロッテに入団した寺地は、松川のようなパワーはないが、左打席からシュアな打撃を見せる巧打者。昨季は二軍で松川を押しのけてレギュラーに定着すると、ルーキーながら104試合に出場し、イースタン・リーグ2位の打率.290、同3位の出塁率.368マークした。オープン戦でも打率.286と、その打撃は一軍レベルでも通用するところを見せている。
ただ寺地の前に大きく立ちはだかるのが、昨季116試合に出場し、ベストナインにも輝いた27歳の佐藤都志也である。2月のキャンプ中に右足親指を骨折し、戦線を離れていたが、15日に実戦復帰。イースタン・リーグの日本ハム戦で指名打者として出場した。順調に回復すれば開幕マスクを被ることになるだろう。
年齢的にもこれからがピーク。易々とレギュラーの座を渡すつもりはないはずだ。また、佐藤以外には、かつての正捕手で13年目を迎える30歳の田村龍弘も健在で、チームきっての有望株と呼ばれた松川の存在もかすむほどロッテの捕手の層は厚い。
佐藤がその座を守るのか、それとも寺地が飛躍を続けるのか、はたまた松川が間に割って入るのか。超激戦区のロッテ正捕手争いから目が離せない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)