甲子園史上初「先頭打者&サヨナラホームラン」を達成
新型コロナウィルスの影響で中止となった選抜高校野球。まさに“幻の大会”となってしまったが、チーム、選手にとってはこれからもシーズンは続いていく。ここでは、そんな幻の大会で見たかったドラフト有力選手を紹介していきたい。今回は高校ナンバーワンの呼び声高い三拍子揃った外野手だ。
▼ 来田涼斗(明石商)
【投 打】右投げ左打ち
<2019年秋季大会成績>
7試合:22打数9安打 0本塁打 5打点 7四死球 2盗塁
打率.409 / 出塁率.552 / 長打率.500 / OPS1.052
現段階で來田は、今年の高校生野手のなかでも甲子園での実績がナンバーワンと言える逸材だ。入学直後から外野の一角に定着すると、1年夏の甲子園は初戦で敗れたものの、2安打2四球をマークした。そして、一躍その名が全国に知れ渡ったのが昨年春の選抜だ。
準々決勝の智弁和歌山戦、第1打席で先頭打者ホームランを放つと、同点で迎えた9回裏にもサヨナラホームランを放って試合を決めて見せた。長い甲子園の歴史でも、先頭打者ホームランとサヨナラホームランを同じ試合で記録したのは史上初のこと。続いて出場した昨年夏の甲子園でも、準決勝の履正社戦で先頭打者ホームランを放っている。
新チームでは主将を任され、秋の公式戦では4割を超える打率をマークしているが、バッティングの状態は決して良くはなかった。
近畿大会の準々決勝、大阪桐蔭戦では2点タイムリーツーベースを放ったが、芯を外された打球が上手く外野の間に落ちたものだった。それでも厳しいマークの中でも2つの四球を選んで、4打席で3度出塁したのはさすがと言えるだろう。
最後の夏に“聖地”で大暴れを期待
来田の持ち味は、体勢を崩されてもしっかりバットを振り切れるところにある。タイミングをとる動きが非常に小さく、ステップも慎重なのでボールを長く見ることができ、ミート力も高い。昨年の秋は体が大きくなって、さらに遠くへ飛ばそうという欲が出たのか、反動をつける動きが少し大きくなっていた。
さらに高いレベルを目指して、バッティングの形が変わるというのは決して珍しいことではない。現状に甘んじることなく、高い向上心を持つことには好感が持てる。そして何より頼もしいのは、大舞台でしっかりと結果を残しているという点だ。
昨年春の甲子園終了後には故障もあって少し調子を落としていたが、夏の甲子園にはしっかり合わせて試合を重ねるごとにレベルアップしているように見えた。
脚力、地肩の強さも申し分なく、外野手としての総合力は間違いなく超高校級だ。ただ、走塁の各塁への到達タイムはバラつきがあり、センターからの返球も正確性に欠けるところがある。このあたりは同じ高校生外野手として一昨年のドラフトで1位指名を受けてプロ入りした藤原恭大(大阪桐蔭 ⇒ ロッテ)と比べると、明らかに劣っている部分ではある。
とはいえ、来田が持つ潜在能力の高さは間違いなく、体つきやプレーの力強さを見ても着実なレベルアップを感じる。自身4度目となる予定だった選抜の舞台は幻となったが、“最後の夏”に、再び聖地で大暴れしてくれることを期待したい。
記事提供:プロアマ野球研究所