「良かったですよ。感覚的にもまだ手術前のいい感覚があったので、技術的な部分をもうちょっと上げていけたらなと思っています」
4月30日に『左アキレス腱断裂の縫合術』を行ったロッテの種市篤暉は30日、ロッテ浦和のブルペンで15球の立ち投げを行った。
種市は、植田将太捕手とキャッチボールを行い、その後ブルペンへ。捕手を務めた植田を立たせた状態で14球投げ、「もう1球いきます」とおかわりして立ち投げを終えた。
“技術的な部分をもうちょっと上げていけたら”という部分について詳しく訊くと、「ずっと平地でキャッチボールしていたので、マウンドで投げると着地しないないう感じで突っ込んでしまうので、そこは気になった点かなと思います」と話した。
種市の球を受けた植田は「強く投げられていたと思うので、状態は良くなっているんじゃないですかね。あとは感覚の問題というか」と話し、種市が進化した部分については「球の勢いは他のピッチャーを受けていても全然スピード感が違いましたね」と明かした。
◆ ブレずに160キロを目標
種市は昨季オールスター明け、10試合・74回1/3を投げ、6勝2敗、94奪三振、防御率は驚異の1.45をマーク。9・10月度はリーグトップの4勝、48奪三振をマークし、自身初となる9・10月度の『大樹生命月間MVP賞』パ・リーグ投手部門を受賞した。
今年3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表に選出され、リリーフで3試合に登板し、力強いストレートと落差の大きいフォークを武器に、世界の強打者をねじ伏せ、“TANEICHI”の名を轟かせた。
「一番は自信を持ってマウンドに上がれるようになったのが、そこが一番大きいんじゃないかなと思っています。野球人生で初めてワクワクしながら投げられているので、マウンド上で。いい緊張感の中で、投げられているんじゃないかなと思います」(26年4月23日取材)
WBCで掴んだ自信を胸に今季は、シーズン通して“圧倒的な投球”を期待した中でのアクシデント。
気分的にも落ち込んでもおかしくないところだが、「今回はすごくリハビリをしていて、前向きに取り組めているなと思ってやっています。それはトミー・ジョンの経験があったからだと思っているので、そういうマインドになっていったかなと思います」と、種市は “日本一の投手”になるため、いつもと変わらず、向上心をもってリハビリに励んでいる。
筆者が取材でロッテ浦和に訪れた時には、7月21日のオリックス二軍戦の試合前練習ではギプスが外れており、2、30メートルの距離でキャッチボール。7月26日のロッテ浦和練習ではランニング、長い距離のキャッチボール、8月11日の日本ハム二軍戦の試合前練習では外野のランニングのスピードが気持ち上がっているように見えた。
そして、8月18日のロッテ浦和での練習では横、後ろからキャッチボールで投げているところをスタッフに撮影してもらい、キャッチボール後に自身の映像をチェック。8月11日までロッテ浦和での練習を見た際、穏やかな表情だったが、8月18日の練習では表情が険しく、一軍での試合前練習の時のような雰囲気があった。
種市は復帰の過程で「色々試しながらやっています。アキレス腱を断裂して元に戻ったなじゃ意味がないと思うので、レベルアップしていけたらなと思っているので、技術的にも毎日トライアンドエラーを繰り返しやれています」と前を向く。
振り返れば、20年9月に『右肘内側側副靭帯再建術の手術』をし、長いリハビリを経て、一軍本格復帰を目指していた23年の石垣島春季キャンプでも、「過去の自分の成績、技術を越えたいなと思っています。なので昔みたいな感覚に戻りたい、19年、20年みたいに戻りたいなというのは思っていないです」と決意し、同年自身初の10勝、翌24年に自身初の規定投球回に到達、そして昨季は2年連続規定投球回到達、シーズン自己最多の161奪三振、特にオールスター明けは支配的な投球で、日本を代表する投手の1人に成長した。
そして今回も、前の状態に戻るのではなく、“進化”して復帰するつもり。常に自身の成長のためにトレーニングを積んできた種市らしい言葉にどこか安心した気持ちになった。具体的にどういった部分を進化させようと思っているのだろうかーー。
「いつも言っていますけど、全て足りないと自分の中で思っているので、スピードもコントロールも。あとは技術的に掴める部分があったらいいなと思いながら、毎日練習しています」
WBC後の4月23日の取材でも、投手としてのレベルをさらに上げるために必要なことについて、「全てだと思うんですけど、その中でも真っ直ぐの平均球速をあげること、その他のコマンドをあげること、思ったところに投げられること、そこが一番重要になってくるんじゃないかなと思います」と挙げていた。
スピードに関しては、2月27日に行われた『ラグザス 侍ジャパンシリーズ2026名古屋 侍ジャパンvs中日ドラゴンズ』で自己最速156キロを計測したが、常々口にしている“160キロ”を目標にリハビリに励んでいるという認識で良いのだろうかーー。
「そこをいちばんの目標に練習しています。口だけじゃなくて、ちゃんと行動で考えながらやっていかないと達成できないと思っているので、160キロを目指して取り組んでいます」
◆ レベルアップした姿で
これまでも何度も記事で紹介してきたが、種市といえば、一軍定着前のプロ2年目の2018年4月15日、当時一軍の先発ローテーションだった石川歩が遠征に帯同せず、ロッテ浦和球場で調整していた際にはブルペンの投球練習を見学。「見ているだけで勉強になります。まっすぐのスピードの質であったり、コツというか投げ方を教わっていたので、そこを最後までずっと見ていましたね」と目を輝かせ教えてくれたことを、昨日のことのように想い出される。
あれから8年――。若手時代の種市のように、ガンガン質問してくる熱い若手はいるのだろうかーー。
「フォームの話とか聞いてきたりするのは、武内とか秋山が多いですね」と育成選手の武内涼太、秋山正雲の2人の名前を挙げた。また、先輩の石川柊太とも話すことも多かったという。
種市を取材している中で、気になったのはトレーニングの成果だろうか、上半身がかなり大きくなったように見えたこと。「毎日ウエイトしています」と明かし、自身の左足を掌で触りながら、「下半身が戻らないんですよね、めっちゃトレーニングしているんですけど。この感じなんか、僕的には違和感しかないです。下半身を戻していけたらなと思います」と吐露。
種市は新人時代から変わることなく、24時間365日、野球に対して真摯に向き合い続けている。例を挙げれば、今年はWBC日本代表に選出されていたこともあり、「このオフは常に1日中練習していたので、リラックスしていないと言ったらアレですけど、ほぼほぼ野球に1月は費やしていたかなと思います」とハードなトレーニングを積んできた。復帰に向けた過程の中で、ガンガン練習をしてストップがかかったりしていないか心配になる。
「ウエイト、ランニングもどっちも攻めすぎていたので、いい塩梅ではやってほしいと。ちょっとだけ落とされていますが、それもあって比較的早くは進んでいますね」
リハビリは順調そのもの。「怪我しちゃっているのでアレですけど、レベルアップして元に戻ったなじゃなくて、こいつエグくなったと思われるピッチャーになりたいと思っています」。パワーアップした姿、ワクワクしたストレート、圧倒的な投球をマリーンズファンに見せるため、試行錯誤しながらより良くなるために進化していく。
取材・文=岩下雄太