ニュース 2018.04.17. 18:53

選手が成長しない「勝利」もあるのです

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私は「勝負事は勝たなければならない」と言っています。

本当は「勝ち負けよりも勝利を目指すプロセス」に意味があると思いますが、プロセスを強調しすぎると「頑張ってます」という言葉に逃げる選手もいるので、結果にこだわるよう伝えます。

「負けて学ぶこともある」という人もいますが、「勝って学ぶこと」はもっとあります
ところが「学びのない勝利」もあります。

あるプロ野球選手は「チームは勝っても自分が活躍できなければ面白くない」と言います。
日本ではこういう考え方を「独善的」と批判する人も少なくないですが、私はアスリートとして正しい考え方だと思います。
自分が活躍し、勝利に貢献した手応えがあるからこそ「成功体験」「自信」になると考えられるからです。

自分はベンチに座っているだけでチームメイトが活躍し、優勝してメダルをもらう。
こんな選手生活が続くと「いい選手入って来ないかなぁ」とか「ここで●●が打ってくれないかなぁ」と他力本願な考え方になり、負けた時にも「××が打たれたから」など他責にしてしまう考え方が育ちます。

成長のためには「主体的に行動し、自ら掴み取ったと実感できる経験」が必要なのです。

これは試合中の采配にも言えることです。
指揮官が作戦に凝りすぎると、選手は作戦に依存した考え方になってしまいます。
私は小・中学生くらいの時は作戦よりも前に「目の前の相手と向き合うこと」を覚えるべきだと思います。
2アウト2塁で打席が回ってくれば「何球目を打てばいいですか?」ではなく「自分が決めるしかない!」とおかれた状況を理解して、投手と向き合うことが大事だと思います。

私が小学生の時は、チャンスに打席が回ってくるとベンチから声がかかっても「うるせーな。集中してるんだから黙って見てろ!」と心の中で思っていました。
当時の監督はやがて何も言わなくなり「四球はいらん。お前が決めてこい!」と送り出してくれるようになりました。

私は中学生くらいまでは「2アウト2塁」って絶対的に打者有利だと思います。
中学生くらいだと「勝負するか歩かせるか」の腹極めが中途半端な投手も多いですし、コントロールミスも多い。
打者が集中度を高めるほど、絶対的に打者有利の状況が高まります。
昨今の野球では自軍ベンチが動きすぎることで打者の集中を削いでいるケースも少なくないと思います。

大人があれこれ口を出さず、選手は「勝負と向き合う」「自分でなんとかする」。
そんな主体的なプロセスがあってこそ、「成長につながる勝利」が得られるのだと思います。


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著者プロフィール

著者:廣川寿(ひろかわひさし)
愛媛県出身。松山北高校時代に投手として選抜高校野球(春の甲子園)に出場。甲南大学時代は投手として阪神大学野球連盟の数々の記録を塗り替える。社会人野球まで投手として活躍。自身の息子が少年野球チームに入部したことをきっかけに学童野球のコーチとなる。現在は上場企業の管理職として働く傍ら、横浜港北ボーイズのコーチとして「神奈川NO.1投手の育成」を目標に掲げ、中学生の指導に情熱を注ぐ。


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