お立ち台でファンの声援に応える筒香嘉智 [写真=萩原孝弘]

◆ なつかしの「三塁」で大爆発

 8月9日、“野球の日”の横浜スタジアム。スターティング・ラインナップが発表されると、場内はどよめいた。

 「2番・サード・筒香」――。ハマの大砲が5年ぶりに三塁のポジションに就くことになったのだ。

 まずは初回、バットで魅せる。中日の先発エンニー・ロメロの速球を逆らわずに弾き返すと、打球は左中間スタンドに突き刺さる先制の20号ソロ。奇しくも最後に三塁の守備に就いていた2014年から6年連続となるシーズン20本塁打をマークしてみせる。

 第2打席は空振り三振に倒れたものの、同点に追いついてなおも無死満塁という絶好のチャンスで迎えた第3打席ではまたもロメロの外寄りの速球を逆らわずに流し、レフトスタンドまで運ぶ勝ち越しのグランドスラム。6回にも二死二・三塁のチャンスでセンターへ2点適時打を放ち、自己最多となる1試合7打点を記録した。

 注目の守りも、5回にダヤン・ビシエドのゴロを無難にさばき、ファーストにストライク送球。場内からは大きな拍手が沸き起こった。

 結局、守備機会はその一度きりだったが、5年ぶりの三塁スタメンは4打数3安打、2本塁打で7打点の大暴れ。守っても無失策で7回の守備からお役御免。正三塁手・宮崎敏郎の離脱という大ピンチを救う活躍を見せた。

◆ 「迷惑をかけないように必死で」

 試合後のお立ち台にはもちろん、筒香の姿。2本の本塁打について「かなり良かった」と手ごたえを語るも、やはり気になるのは守備の方。「迷惑をかけないように必死で構えました」と返してスタンドの笑いを誘ったが、少しホッとしたような表情も見せている。

 ヒーローインタビュー終了後、ダグアウトでもやはり守備についての質問が多く、三塁スタメンについては「いつもとは違う緊張感があった」という本音も。1度きりだった守備機会を振り返りながら、「自分のできる最低限の仕事をしっかりやった」とコメントした。

 3安打・2本塁打のバッティングの方は「もう少しかな」とやや辛め。それでも、徐々に本調子に近づいてきている手ごたえも確かにあるようで、これは8月・9月と厳しい戦いが控えるなかで希望の光となりそうだ。

◆ 指揮官のねらい

 また、同時に気になるのは、ラインナップに「三塁・筒香」と書いたアレックス・ラミレス監督の決断についてだろう。

 指揮官は前カードの広島でこのプランを筒香に持ち掛けたことを明かし、その時には「チームが勝つために貢献できるのであればやらせてもらいます」とすぐに前向きな返答が返ってきたという。

 これが「実にプロらしいリアクション」だったため、この日の決断に至ったと指揮官。つづけて、「“インパクト”を考えると、筒香をサードにするのは非常に大きい」とチーム内外に大きな衝撃を与えることができ、かつ様々な効果が見込まれること、たとえば「筒香が守っていたレフトに左の外野手を置くプラン(ラインナップに左打者を1人増やせる)もできるようになり、今日のように左投手の多い中日が相手ならば右の強打者の細川(成也)を使うことができる」といったメリットを挙げながら、これが「チームの勝ちにつながる、ベストな結論」だと説明した。

 守備のブランクについては、「過去に92試合もサードで出場していた経験があるうえ、彼は精神的にも非常に強い。苦にせずやってくれるだろう」と信頼して任せたことを明かしつつ、「ケガ人が続出して、良かった雰囲気が傾きかけてしまうかもしれなかったところ。そんな状況でチームの柱である筒香が『俺についてこい』という姿勢を示すことは、他の選手へとても大きな影響を与えてくれる」というようにピンチをチャンスと捉え、新たな良い流れを引き寄せるための策であったことも語っている。

 首位・巨人に0.5ゲーム差まで迫りながら、敵地の広島戦に負け越し。そのうえ、打線の軸を担っていた宮崎敏郎が骨折で離脱と、確かに嫌なムードは漂いかけていた。

 しかし、そのピンチをチャンスに変えるのが“ラミレス・マジック”。誰もが想像していなかった“三塁・筒香”がピタリとハマり、最高の形でカード初戦を取ることに成功した。

 今後この形が定番となるのか、はたまたオプションのひとつとしてここ一番で使っていくのか。これからの起用法については分からないが、勝負の8月・9月戦線を前に大きな、とてつもなく大きな一勝となったことは間違いない。

 
取材=萩原孝弘

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ベースボールキング編集部

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