ニュース 2022.09.02. 17:24

「11勝+30発」達成 大谷が次に目指す「前人未踏の大偉業」

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オールスター戦の会見で日米メディアの質問に答えるエンゼルスの大谷翔平投手=2022年7月18日 写真提供:産経新聞社
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、9月1日のヤンキース戦で30号本塁打を放ったエンゼルス・大谷翔平選手にまつわるエピソードを紹介する。

大谷翔平が、またまた新たな“伝説”をつくりました。8月30日(日本時間、以下同様)から本拠地アナハイムで行われた、今季(2022年)最後のヤンキースとの3連戦。目下、ア・リーグMVPを争う2人、2年連続受賞が懸かる大谷と、本塁打王レースを独走するヤンキースの主砲、アーロン・ジャッジの直接対決とあってチケットは完売。4万5000人近い観衆がスタジアムに詰めかけ、満員御礼となりました。

初戦は、2-2の同点で迎えた5回、大谷が右翼スタンドへ2試合連続の29号2ランを放ちます。ジャッジも負けじと8回に50号ソロを放ちますが、大谷の一発が決勝打となり、エンゼルスが4-3で勝って4連勝。ヒーローの大谷は、試合後MVP争いについて聞かれ、こう答えています。
『1シーズン、プレーしてきたのが、そういう形になるというのはプレーヤーとしては大事なことだとは思うので、まずはこのペースでしっかり出続けることが一番(大事)かなと思ってます』

~『日刊スポーツ』2022年8月30日配信記事 より

「無事これ名馬」と言いますが、夏場はただでさえ疲れがたまる時期。特に投打二刀流の大谷は、疲労も他の選手の倍近いはず。なのに淡々と試合に出続け、こともなげに結果を出してしまう。そのタフネスぶりには舌を巻くばかりです。

翌31日の第2戦は、大谷は二塁打を含む2安打を放ちますが本塁打は出ず、かたやジャッジは4回、2試合連続の51号3ランを叩き込みます。試合は4-7でエンゼルスが敗れ、これで1勝1敗のタイとなりました。

第3戦は、ヤンキースが5回に2点を先制しますが、6回、大谷は1死一・二塁のチャンスから、逆転の30号3ラン! 沸き上がるスタンド。試合はエンゼルスがそのまま逃げ切り、2勝1敗と勝ち越しました。

この3連戦、2発打ったジャッジもさすがですが、大谷も2発。しかも2本とも決勝アーチです。ライバルとの直接対決という見せ場で、これだけのことをやってのける。アナハイムの観客は大満足したのではないでしょうか。

またこの30号で、大谷は「2年連続30本塁打」を達成。松井秀喜も、シーズン最高は2004年に放った31本で、30本を超えたのはこの年だけです。「30発は最低限のノルマ」と言わんばかりに軽々と達成してしまった大谷。もう脱帽する他ありません。

ところでこのMVP争い、エンゼルス3連戦を終えた時点で、ジャッジの成績は打率.296、51本塁打、113打点。本塁打は独走、打点もトップの2冠王です。ジャッジはさらに、ロジャー・マリスが持つ球団記録「シーズン61本塁打」の更新に迫り、達成すれば61年ぶりの快挙になります。

ヤンキースは9月1日現在、ア・リーグ東地区首位を快走。かたやエンゼルスは西地区4位。大谷は今季何度もチームを勝利に導いていますが、ポストシーズン出場は絶望的な状況です。ジャッジはプレーオフでも活躍しそうで、この点は彼にとって大きなポイントとなります。

とはいえ、大谷が成し遂げた「ベーブ・ルース以来、104年ぶりの2ケタ勝利+2ケタ本塁打」には強烈なインパクトがあるのもまた事実。2人の最終成績がどうなるかにもよりますが、いずれにせよ今回は、大谷が満票でMVPに輝いた昨シーズンと違って、侃侃諤諤の大論争が起こることは間違いないでしょう。

この争いについて、米ESPNのヤンキース担当、マーリー・リベラ記者はこのように語っています。
『大谷とジャッジは非常に似ている。どちらもチームの勝ちを意識していて、個人の数字には興味がない。そういう2選手のMVPレースを見るのは、すごく面白い』

~『日刊スポーツ』2022年8月30日配信記事 より

本当にそのとおりで、大谷の出場試合を観ていると、彼が個人記録よりも、まず第一にチームの勝利を願ってプレーしているのが伝わってきます。ジャッジも同様。さらにリベラ記者はこんなことも語っています。
『今年に関して、大谷は(投打の)数字がものすごいというわけではない。去年は、とにかくものすごかった。(投打で)全ての数字がよければ彼がMVPだが、今年はそうではない。ただ、それは(彼にとって)不公平なこと。大谷のやっていることは、誰もやってきていないこと。だから、比較のしようがない』

~『日刊スポーツ』2022年8月30日配信記事 より

「11勝」も「30本塁打」も、それだけを見るとリーグトップの数字ではありませんが、そもそも1人の選手が、同じシーズンに投打両方において一流の成績を収めるなどということは、本来あり得ないことなのです。ジャッジの成績のすごさとはまた「次元が別」で、「比較のしようがないこと自体がMVPに値する」という意見もまた一理あります。

二刀流に関して、大谷が今季達成しそうなもう1つの偉業があります。それは「同一シーズンに、規定打席と規定投球回の両方に到達する」こと。これは1901年にメジャーが2リーグ制になって以降、達成者は皆無であり、もっと大きく取り上げられるべき大偉業です。

規定打席到達は、シーズンを通じて大きな故障やスランプに見舞われることなく、野手としてレギュラーを張った証しでもあります。また規定投球回到達も、シーズンを通じてローテーションを守り続けた証し。同一シーズンに両方到達するということは「投打両方で、1年を通じてチームの勝利に貢献したい」という大谷の理想が叶ったことを意味します。これこそ真の「二刀流完成」と言えるのではないでしょうか。

大谷は、規定打席(メジャーは502打席)にはすでに到達していますので、あとは規定投球回(162回)到達のみ。前回登板のブルージェイズ戦を終えた時点で、大谷の投球回は「128回」で、あと34イニング投げれば到達します。

大谷の次回登板は日本時間の9月4日、アストロズ戦の予定で、大谷は今季あと6試合登板する見込みです。1試合平均6イニング投げれば到達しますが、早いイニングで降板すると難しくなるかも……。エンゼルス首脳陣は全面的にバックアップする方針で、回数が少し不足した場合は、どこかで大谷をリリーフ起用するかも知れません。果たして、もう1つの大偉業達成なるか? 注目です。

なお大谷は、投手にとって最大の栄誉であるサイ・ヤング賞の候補にも挙がっています。こちらも規定投球回に到達すれば、残り6試合の成績によっては受賞の可能性も出てきます。ポストシーズンに出場しなくても、MVPの件や、また再燃するであろうトレード話も含め、大谷はオフも“主役”の座をキープしそうです。
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