来季の日本ハム4番候補は球界屈指の俊足外野手・五十幡亮汰
日本ハムの「ビッグボス」こと新庄剛志新監督が独自の理論をぶち上げた。それは、「6番最強打者論」ともいうべきもの。
12月6日放送のバラエティー番組に出演した新庄監督は、「僕の4番バッターは、6番バッターなんです。6番(が打席に入るとき)が、いちばんランナーがたまっている」と語り、「4番バッターが足の速いバッター」「内野をしていたとき、二死満塁で足の速いバッター、とくに左バッターがいたら慌てる。で、悪送球とかしていた。それで2点入る野球も面白い」と、独自の理論を展開した。
その後、実際に、陸上短距離ランナーの「サニブラウン(・アブデル・ハキーム)に勝った男」として知られる球界屈指の俊足外野手・五十幡亮汰を来季の4番候補に位置づけていることが判明した。「足があるから下(半身)もしっかり使える。バッティング技術を磨いていけば、飛ばせるパンチ力も出てくる」というのがその理由だ。
もちろん、ふつうに考えれば、打順の流れとして4番に強打者がいるからこそ6番にもチャンスが巡ってくるということになるため、単純に4番打者を6番にずらせばいいというわけではないだろう。しかし、シンプルに考えると、6番打者の成績がいいということはクリーンアップも含めた野手の層が厚いということを示すともいえる。当然、そんなチームは強い。
では、新庄流の6番最強打者論はどれほど勝敗に絡むのか。今季における12球団の6番打者成績を振り返ってみる。
【2021年12球団6番打者成績】
セ・リーグ
<ヤクルト>打率.256/7本/46打点/11盗塁/出塁率.336/長打率.364/OPS.700
<阪神>
打率.253/25本/73打点/12盗塁/出塁率.301/長打率.447/OPS.748
<巨人>
打率.240/15本/46打点/9盗塁/出塁率.303/長打率.392/OPS.695
<広島>
打率.235/9本/56打点/2盗塁/出塁率.290/長打率.327/OPS.617
<中日>
打率.214/10本/46打点/4盗塁/出塁率.266/長打率.321/OPS.586
<DeNA>
打率.237/21本/70打点/2盗塁/出塁率.296/長打率.407/OPS.703
パ・リーグ
<オリックス>打率.221/10本/49打点/2盗塁/出塁率.293/長打率.333/OPS.625
<ロッテ>
打率.228/16本/60打点/6盗塁/出塁率.310/長打率.382/OPS.692
<楽天>
打率.262/14本/63打点/8盗塁/出塁率.330/長打率.412/OPS.742
<ソフトバンク>
打率.227/10本/48打点/12盗塁/出塁率.308/長打率.328/OPS.636
<日本ハム>
打率.225/10本/60打点/8盗塁/出塁率.275/長打率.321/OPS.596
<西武>
打率.253/17本/82打点/4盗塁/出塁率.326/長打率.427/OPS.753
現時点では6番打者成績とチーム成績に明確な相関は見えないが……
セ・リーグにおいて6番打者がトップレベルの数字を残したのが阪神。25本塁打、73打点、12盗塁、長打率.447の他、出塁率と長打率を足し合わせた値であり得点との相関関係が非常に強いとされる指標・OPS.748はいずれもリーグトップだ。
これらの数字は、主に佐藤輝明の他、サンズ、ロハス・ジュニアという外国人選手によるもの。たしかに、3〜5番のクリーンアップのあとを打つ6番にも長距離砲を置けるというのは大きな強みだ。阪神が最後まで優勝争いをできたひとつの要因と見ることはできるかもしれない。
ただ、他球団の数字を見てみると、6番打者の成績とチーム順位にそこまで大きな関連があるとはいえそうもない。たしかに、ペナントレースを制したヤクルトの6番打者はリーグトップの打率.256を残しており、Bクラスの広島、中日の6番打者成績は相対的に低い。とはいえ、ペナントレースで最下位に沈んだDeNAの6番打者成績は阪神の6番打者成績に迫るものだ。
パ・リーグなら、同じようにペナントレース最下位だった西武の6番打者は、阪神の6番打者をもしのぐような数字を残している。その82打点、OPS.753は12球団トップだ。さらには、リーグVを果たしたオリックスの6番打者が残した打率.221、2盗塁といった数字はいずれもリーグワーストである。
もちろん、チームの勝敗には投手陣の活躍も欠かせない。単純に、DeNAや西武の投手が打ち込まれてしまったために、6番打者が好成績を残してもチームの成績が振るわなかったとも考えられる。また、そもそも今季の12球団が新庄の提唱する6番最強打者論を前提に打線を組んだわけではないため、今季の6番打者成績とチーム順位にそれほど大きな相関がないことは当然かもしれない。
その「常識」を、新庄日本ハムが覆すことになるのか。メジャー流の「2番最強打者論」が広く知られるようになったいまの球界では、かつてのような小技がうまいタイプではなく、強打者を2番に起用するケースも増えている。6番打者に関しても、同じような「革命」が起きるのか。やはり、新庄という男からは目が離せない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)