3、4月度のファーム西地区の「SMBC信託銀行 ファーム月間MVP賞」を受賞したオリックスの山中稜真選手が、5月も首位打者をキープし1軍昇格の準備を整えている。
「獲れたらいいな、くらいで全く気にしていませんでした」。月間MVPにも山中からは浮ついた言葉を聞くことはない。
山中は神奈川県出身。木更津総合高(千葉)、三菱重工Eastから2024年ドラフト4位でオリックスに入団。広角に強い打球を打ち分けるシュアな打撃がセールスポイント。捕手登録だが、主に1塁手、外野手として出場している。1年目に開幕1軍をつかみ、初出場の日本ハム戦(4月5日、エスコンフィールド)でプロ初安打を含む2安打、2打点。出場6試合目の西武戦(4月17日、京セラドーム)に「1番・左翼」で先発出場し、1打席目の初球をスタンドに運んだ。
チームの外野の層は厚く、1年目は1軍で19試合に出場し打率.122に終わったが、オフには台湾のウインターリーグに派遣され、打率.340の好結果を残した。「年齢も年齢なのでやらないといけない。本当に勝負の1年になると思う」と臨んだ2年目のシーズン。開幕1軍は逃したが、ファームで3、4月に28試合に出場し、西地区トップの打率.302、32安打、出塁率.367で「SMBC信託銀行ファーム月間MVP賞」を獲得した。10試合で複数安打、うち4試合で“猛打賞”の固め打ちで、チームの首位に貢献した。
5月に入ってもバットの快音は止まらず、11試合のうち安打のなかったのは4試合だけ。通算38試合に出場し、145打数41安打、打点10、通算打率.282で首位打者をキープし、5月度のMVPも視野に入れる。
ただ、外野手、一塁手が充実する1軍の出場機会は訪れていない。2軍ではけが人が多く、育成選手の出場が制限される関係で支配下選手の出場は減ることがなく、1軍に選手を供給しにくいのが実情だ。
それでも、山中は前向きだ。「体力的にしんどい部分もあるのですが、これだけ試合に出られる機会はありません。連戦が続く中で、どう自分のパフォーマンスを維持し調子を落とさず安定した成績を残すか、をテーマにしています」。1軍では数多く経験することができない打席を重ねることで得られる感覚は、何物にも代えがたいというわけだ。
「いくらアドバイスをもらっても、実際に打席に立って経験することが一番だと思います。打撃も守備も走塁も、ゲームを重ねることで練習よりうまくなる要素があるし、反省できる部分があると思います。試合に出続けていくしかないと思います」と山中。
実戦で得たことが大きい。「相手投手のボールに合わせるのではなく、自分のスイングにボールを入れるという練習をしていたら(試合で)、結構、いい感覚がありました」という。5月6日のソフトバンク戦(タマスタ筑後)では、最速156kmで2日後に支配下登録された藤原大翔投手の内角寄りの155kmをとらえ右越え適時2塁打を放った。「藤原君のような球の速い投手に対して、ストレートを引っ張ってとらえることができた。投手の球に合わせようとしたら、もっと弱い打球になっていたと思います。このやり方で速球に対応できるという引き出しの一つになりました」。打席を重ねることができる2軍戦だからこそのトライ・アンド・エラーで、また一つ打撃の可能性が広がった。
「後々、1軍に上がった時に生かせる準備や(1軍の)打席につながるプレーを続けていくだけです」。雌伏の時をブレることなく、心静かに過ごす。
取材・文=北野正樹