「僕のことをあまり知らないと思いますが、すごいバッターから名前を出していただいたのは率直にうれしかったですね」。今季、オリックスの中継ぎとして30試合以上登板している入山海斗投手が、ほほを赤らめた。
ネット上の意外なところで自分の名前が紹介されているのを、友人らから教えられて初めて知ったのは、今年7月21日のことだった。今季限りでの現役引退を発表したロッテの角中勝也選手が、引退理由として挙げたのが、7月11日のオリックス戦(ZOZOマリン)での入山との対戦だった。途中出場で2三振したが、2つ目の三振は9回2死三塁でカウント2‐2から入山の内角高めのストレートを空振り。
角中は石川県七尾市出身。日本航空二高、四国IL高知から2006年大学・社会人ドラフト7位でロッテに入団。2012年に打率.312で独立リーグ出身として初の首位打者のタイトルを獲得し、2016年にも最多安打、2度目の首位打者に輝いた。一方の入山は大阪府守口市出身。日高高中津分校(和歌山)、東北福祉大から2022年育成ドラフト3位でオリックスに入団。150キロ台前半のストレートと鋭く落ちるフォークを武器に1年目から抑えとして起用され、昨年7月に支配下登録された。
角中の引退で入山の名前もクローズアップされることになったが、二人には共通点もある。プロ20年、39歳のレジェンドと、4年目、26歳の中継ぎは、決してエリートの道を歩んでプロ入りしたのではないところだ。角中は「独立リーグがなければ高校で野球を辞めていた」といい、入山は大学時代、公式戦には1年秋の1試合しか登板できなかった。育成でプロ入り後も、2年目には退団を真剣に考えたこともある。人並み以上の努力を重ねて打者の頂点に立った角中が、育成から支配下に這い上がった入山の若い力と勢いに限界を悟ったことは、プロを目指し次代を担う若者にとっても一つの道標になるだろう。
入山は、8月14日の日本ハム戦(京セラドーム)で今季、35試合目の登板となった。2‐2の7回2死一、二塁から救援し、水野達稀選手を4球で中飛、五十幡亮汰選手を1球で左飛に仕留めてピンチを断った。試合は、8回を3番手の山崎颯一郎投手が締め、9回宗佑磨選手の2打席連続の2ランを呼び込んで勝利した。
開幕前の今季の目標は「40試合登板」だったが、試合後には「50試合」に上方修正。「クイックでも投げることができるようになったのと、落ち着いて投げることができている」ことが昨年より成長しているところだという。また、「サインや構えから、キャッチャーの意図を考えてそこに投げることができている場面も増えました」と胸を張る。
2軍投手コーチとしても指導にあたった岸田護監督は「入った時は、パワーはありましたがコントロールにあまり自信がないピッチャーでしたが、ラインもしっかりと出るようになっていますし、変化球も扱えるようになっています。バッターをしっかりと抑えていることが一番の自信になっていると思います」と成長ぶりを語る。
「まだ自分のボールを扱えていませんので、恐れずに自分の成長のためのピッチングができるような気持ちでマウンドに上がりたいと思います」と入山。名前を出してくれたレジェンドに恥じぬよう、飛躍を誓う。
取材・文=北野正樹