3年ぶりにシーズン100安打以上を達成し、打撃復活を果たしたオリックスの宗佑磨内野手。プロ13年目に向け、苦手とする高めのボールへの対応を始めている。
「ウイークポイントだとわかっていたんですが、これができるようになればコンスタントに2割8分は打てるようになるんです。これ、とんでもないことですよ」。シーズン最終戦を控えた10月1日、京セラドームで行われた全体練習後の個別練習を終えた宗が、練習の取り組みを説明した。最後まで一人でバットを振っていた宗は、練習を手伝ってくれていたアシスタントスタッフの漆戸駿さんが置いた高めのティーのボールを、左脇が潰れないようにしてネットに打ち込んでいた。今季の終盤から取り組んでいる高めのボールへの対応だった。
宗は横浜隼人高から内野手として2014年ドラフト2位でオリックスに入団。外野手に転向したこともあったが、7年目の2021年に三塁に定着。俊足、好打で球際に強く強肩堅守の三拍子そろった選手として、2021年からのリーグ3連覇、日本一に大きく貢献し、2021年から3年連続してゴールデングラブ賞、ベストナインに輝いた。
しかし、2024年から2年連続して好不調の波の激しい打撃に苦しみ、出場100試合を切ってしまった。「打てないと使ってもらえない」と臨んだプロ12年目。打率こそ.245にとどまったものの、134試合に出場し4年ぶりに規定打席に到達、キャリアハイの14本塁打、65打点をマークした。打点はチームトップ、本塁打は紅林弘太郎選手(18本)に次いで2位、6盗塁も渡部遼人選手(18)に続いて2位だった。
高めのボールへの対応は、昨年までチームメートだった福田周平さんの助言だった。「1か月ほど前に食事をした時に『お前、高め(のボールを)打てへんやろ』と言われたんです。今でも映像を見て『いい感じやん』『もっとこうした方がいいんじゃないか』とラインをしてくれていたんです。その時、僕は『いや、別に。今はこんなことに取り組んでいる』と返事をしていたんです。でも、めっちゃ必死に高めを打つことの重要性を伝えてくれて。それで、高めを打てた方がいいんじゃないかと思い始めたのです」
宗にも自覚はあった。コース別のデータ分析で、高めのボールをヒットにする確率は最も低いことを示す「青」だった。それでも、「自分はローボールヒッターだから、低めを打てばいいじゃん」と修正する気持ちはあまりなかった。「(練習で)高めを打つのって結構、体力を使うんです。バットは重いから普通に打ったら低めを振るんです」という理由や、短所を直すより長所を伸ばした方が結果はついてくるという考えだった。ただ、福田さんの真剣な言葉に気持ちが変わった。「(低めを)強みとしてやっていくのもいいのですが、それじゃ自分自身の逃げの部分でもあるんで。打てなくてもいいというのは、打てない自分を肯定しちゃっているんで。しっかり(自分と)向き合うことに気付いたのです」
それからはティーの高さを上げ、打撃練習では左中間への打球を意識している。「僕の場合、左中間への打球が弱くなっちゃっているんです。(練習で)いい打球を打ちたいと思えば右中間に打てばいいのですが、左中間にもしっかりと打ちたい。左中間に打てる状態であれば、引っ張れる状態でもあるっていうところですね」と宗。左中間を抜くような打球を打つためには、高めのボールへの対応が必要だった。「高めのティーのボールを上からたたく必要はないんですが、高めをしっかりと打てる状態を作っておかないと。そこがピッチャーの一番強いボールなんで、そこが弾ければもう何でもいけるんです」。弱点を克服することで、新たな自分を作り出す。
効果は表れているという。「最初は全然やり方がわからなかったのですが、なんとなくわかりだして。試合でも、これまでファウルになっていたのが前に飛び始めて、ヒットになったり。高めを常にしばける状態にしておけば、バットは重いから低めなんかいつでも振れるんです」
「ホームランも増えるし、コンスタントに2割8分は打てるようになります。この1年、いい自分も見えたし課題も見えて、成長しかないって感じですね。自分で自分が楽しみなんです。ワクワクしています、本当に。楽しくて仕方がありません。次のレベルにステップアップしているなという感覚があるんです」。苦しんだ2年間、自分に言い訳をせず新境地を開いた宗佑磨はさらに進化する。
取材・文=北野正樹