コラム 2020.09.29. 08:00

巨人・中島宏之、38歳の華麗なる逆襲

無断転載禁止
巨人・中島選手=東京ドーム

どん底からの再スタート


 43試合で打率.148、契約更改では1億3000万円減、来年38歳。

 それが約1年前の中島宏之の置かれた立場である。19年にオリックスから原巨人へ移籍するも、打撃不振で二軍降格も経験するなどまったく結果を残せなかった。年齢を考えれば、切実に終わりが見えてくる成績だ。野手史上最大となる87%の大幅減俸でのチーム残留にも「来季の年俸2000万円でも中島を使うぐらいなら若手を使え」なんて厳しい声が自チームのファンからさえも上がっていた。

 いつの時代も30代の転職組は、新天地で即結果を残さない限り未来はない。そこに見るのは、夢じゃなく現実だからだ。崖っぷちどころか、すでに崖から落ちている。いわば、プロ20年目はどん底からの再スタート。だが、信じられないことに、中島はそこから這い上がってきた。この男が激動の2020年シーズンで、一軍の一塁レギュラーを掴むなんて誰が予測しただろうか。そう、指揮官の原辰徳以外に。

 71試合、打率.311、7本塁打、25打点、OPS.845、得点圏打率.340(9月27日現在)。これが今シーズンの中島の成績だ。キャンプから過去とプライドは捨て、石井琢朗野手総合コーチのマンツーマン指導を受け、フォームやスイング軌道を見直した。

 春先はオープン戦トップタイの4本塁打をマークするも、新型コロナウイルス感染拡大の影響で無念の開幕延期。だが、仕切り直しとなった6月19日の阪神戦において「6番ファースト」で開幕スタメンを勝ち取ると、7月は月間打率.232と一時低迷するも、8月は打率.362と調子を上げ、その後も亀井善行と並ぶチーム最年長野手として首位独走の巨人を支えている。今季、東京ドームでは打率.394と本拠地に滅法強い頼れるベテランだ。

 ちなみに19年の巨人一塁手出場数は、「1位:岡本和真(116試合)、2位:大城卓三(46試合)、3位:阿部慎之助(37試合)」だった。つまり、今季の巨人が「4番サード岡本」と「打てるキャッチャー大城」を固定させることができたのも、背番号5の頑張りがあったからこそ。

 もし、中島の復活がなければ一塁は昨年と同じように岡本や大城が日替わり起用され、阿部不在の穴に泣くことも多かっただろう。「24歳三塁手・岡本」と「27歳捕手・大城」の定着は、チームの未来像を考えたら大きな意味がある。同時にそれを可能にした中島のチームへの貢献度も、とてつもなく大きかった。


名将のチームマネジメント術


 それにしても、38歳の華麗な逆襲は感慨深い。

 中島と言えば、西武時代はアイドル的な人気を誇り、2008年には26歳の3番打者として栗山巧や中村剛也らとともにヤングレオ打線を牽引し、日本シリーズでは原巨人を4勝3敗で下し日本一に。この年の中島は打率.331、21本塁打、81打点、OPS.937。最高出塁率のタイトルに加え、ショートとしてベストナインとゴールデングラブ賞も受賞した。

 つまり泣く子も黙る「松井稼頭央のあとに正遊撃手を託され、清原和博の背番号3を継承した男」だったわけだ(なお巨人でも清原の背番号5を背負っている)。若い野球ファンにはいまいち実感がないかもしれないが、巨人で言う坂本勇人的な立ち位置である。選ばれし者の恍惚と不安、あの頃のナカジは間違いなく所沢のスーパースターだった。

 それがアメリカ挑戦やオリックスを経て、巨人に流れ着いた19年には37歳で打率1割台と低迷。気が付けば、西武時代の盟友・片岡はベッキーと結婚して……じゃなくて、いまや巨人ファームの内野守備走塁コーチだ。同世代の選手も続々とユニフォームを脱いでしまった。

 昨年、甲子園で見た阪神巨人戦で、攻守に精彩を欠く丸みを帯びた中島の背中にはかなり強烈な野次が飛んでいた。チームは5年ぶりにリーグ優勝も蚊帳の外。栄光と転落。そして、どん底からの復活。

 もちろん全盛期より力は落ちただろう。けど、中島はいい意味で“巨人らしくない”選手だ。

 原監督は前政権時の小笠原道大や谷佳知、杉内俊哉や片岡治大といったパ・リーグの匂いがする個性派でチームの空気を変える手法をとってきた。でも岩隈は一球も投げてないし……というのは置いといて、高橋由伸が選手時代に「パ・リーグの選手たちが移籍してきてロッカールームの雰囲気が変わった」と証言していたように、あえて違う血を入れて組織を活性化させるタツノリのチームマネジメント術は健在だ。

 ちなみに巨人で過去に38歳以上での打率3割は王貞治、張本勲、落合博満の3名しかいない。中島は現在234打席で打率.311。3割を維持したまま120試合制の規定となる372打席到達となれば、彼らレジェンドと並んで球団史にその名を刻むことになる。

 1年前、「なんであいつを使うんだ」と批判されていたベテランは、連覇が秒読み段階に入った今、多くの巨人ファンにこう感謝されている。

「中島宏之の復活が最大の補強だった」と。

 See you baseball freak……


文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

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