◆ 流れを渡さぬ圧巻の三者三振ピッチ
9月13日、横浜スタジアム。重苦しい緊張感が漂う終盤のイニング、マウンドに上がった吉野光樹の投げっぷりは圧巻の一言だった。打者3人をいずれも三振に仕留める完璧なピッチング。
外国人2人を含む一発のある三人に対して一歩も引かない強気な攻めで、スタジアムのファンを沸かせた。
試合後、強打者が並ぶ相手打線との対戦について吉野はこう振り返った。
「やっぱり真っすぐを強く弾いてくる。外国人はストレートに強いですし、やっぱ振りも強いんで、そのパワーに負けないように、押し切れるようにと思って投げました。あとは本当に甘くならないようにっていうの考えながら投げました」
5点のリードはあるものの、優勝を狙う巨人に隙は見せられない。そんな局面で真っ向勝負を選び、かつ丁寧にコースを突く。決して流れを渡さぬ圧巻の三振劇は、その狙い通りのアプローチが結実した形となった。
直近の登板でも2奪三振を記録するなど、高い奪三振率はストロングポイント。だが本人の思考は極めて冷静だった。
「あんまり三振にはこだわらないようにしています。こだわりすぎると、なんとしても三振取らなきゃっていう風になってきちゃうので。ほんとに内容と投げどころと、どういう過程を作っていくかっていうのを考えながら、1球1球丁寧に投げた結果が三振になるという感じですね。とにかくアウトを1つずつ増やしていくようにと思いながら投げて、その結果が三振になったら、それは嬉しいことでもあります。三振率は大事なアピールポイントでもあると思うんですけど、結果0じゃないと結局元も子もないので。奪三振は後からついてくるものかなって思っていますね」
まずは無失点に抑える。三振も狙うのではなく、結果が三振になる。ブルペンの一員として、チームに貢献するための矜持が、右腕には宿っていた。
中継ぎという新しい役割で腕を振る4年目シーズン。登板機会に恵まれないこともあり、調整も容易ではない。2度の二軍調整も経験し、その際に入来祐作コーチから送られた「心のコントロールも重要」という言葉も心に刻んだ。
出番が回ってこないときでも「しっかりやってやるぞっていうのを持っていけるように、丁寧な準備が大事」と、メンタルを切り替えて自分自身をコントロールする術を染み込ませてきた。
9月に入ってからは無失点を続け、ブルペンでの立ち位置や序列の上昇を感じさせる場面も増えてきた。それでもまだ、いまは足元を見続ける時期と考える。
「監督が行けって言ったら行けるように準備しておくのが、リリーフ陣の仕事。序列まで考え始めたら頭がパンクしてきちゃいますね。とにかく呼ばれた時にいい結果が出せるようにするだけです」
無駄なこだわりを捨て、シンプルに相手と勝負する。終盤戦を迎えたペナントレースで、吉野光樹の存在感は日に日に増している。
文・取材 / 萩原孝弘