実力派が揃う“捕手陣”
新型コロナウィルスの影響で中止となった選抜高校野球。“幻のセンバツ”で見たかった選手として高橋宏斗(中京大中京)、中森俊介(明石商)、小林樹斗(智弁和歌山)、西川遼祐(東海大相模)、小深田大地(履正社)、来田涼斗(明石商)、細川凌平(智弁和歌山)の7人を個別にピックアップしてきたが、それ以外の新3年生の有力選手についても紹介したい。今回は野手編だ。
まず捕手から見ていくと、内山壮真(星稜)、印出太一(中京大中京)、関本勇輔(履正社)といった選手たちが有力候補に挙げられる。
内山は旧チームでは山瀬慎之助(巨人)がいたこともあり、入学直後からショートを任せられていたが、新チームからは本職である捕手に戻った。小柄でも体に強さがあり、イニング間のセカンド送球タイムは1.8秒台前半と、先輩の山瀬と比べても遜色ない速さを誇る。
打っても早くから中軸を任され、昨年夏の甲子園でも2本塁打を放つ活躍を見せた。守備面では捕球が時折雑になり、攻撃面でも反動の大きさや走塁への意識など気になる点はあるものの、センスの高さは申し分ない。
続いて紹介したい印出は、強打が魅力の大型捕手だ。大きな構えでゆったりとタイミングをとってボールを呼び込み、バランスの良いスイングで広角に強い打球を放つことができる。優勝した昨年秋の明治神宮大会でも、3試合連続で打点をマークする勝負強さを見せた。スローイングにもう少し強さが出てくれば、打てる捕手として、さらに注目度は増すはずだ。
一方、攻守のバランスの良さが光るのが関本。旧チームでは控え捕手だったが、新チームでは不動の4番に定着。秋の大阪府大会では、決勝の大阪桐蔭戦で9回裏に同点スリーランを放つなど、8試合で4本塁打、25打点の活躍を見せた。無駄のないシャープなスイングで長打力と確実性を兼ね備えた打撃は高校生では上位。捕手らしいたくましい体格で、小さい腕の振りで強く正確に投げられるスローイングも一級品だ。
“内野陣”はショートとサードに注目
内野手では、入江大樹(仙台育英)、中山礼都(中京大中京)のショート2人と、佐々木泰(県岐阜商)、西野力矢(大阪桐蔭)のサード2人に対する注目度が高い。
入江は185cm、82kgと大型ながら、動きに軽さがあるのが持ち味。捕球から送球の流れがスムーズで、スローイングの安定感も申し分ない。打つ方は右手の力が強いスイングで内角の速いボールに弱点はあるものの、神宮大会ではレフト中段への一発を放っているように長打力は魅力だ。
中山は欠点らしい欠点のない三拍子揃った完成度の高い選手。守備のスピード感は高校生のレベルを超えており、球際の強さも見事。打っても全身を使ったフルスイングは迫力十分で、なおかつ高いミート力も備えている。昨年秋の東海大会では3試合で6安打10打点の大暴れを見せている。
佐々木は多くの選手を指導してきた鍛治舎巧監督が「素材はトップクラス」と語る強打者で、旧チームから不動の4番、サードとして活躍している。少し左足を高く上げるフォームだが、トップの形が安定しているためミート力も高い。外のボールも強靭なリストで絡めとるように強く引っ張り、長打力も高校生ではトップクラスだ。また投手として140キロを超えるスピードを誇り、サードから見せる強いスローイングも持ち味である。
西野は大阪桐蔭らしい積極的な打撃スタイルが光るスラッガー。甘いボールは逃さずにフルスイングでき、昨年秋の近畿大会では明石商の中森から起死回生の逆転スリーランをライトスタンドに叩き込んだ。少し太めに見える体型だが、守備の動きも良く、強肩も持ち合わせている。
“外野”にも逸材たち
外野手では井上朋也(花咲徳栄)、西村友哉(中京大中京)、仲三河優太(大阪桐蔭)などの名前が挙がる。
井上は、関東では東海大相模の西川と並ぶ右のスラッガー。入学直後から外野の一角に定着すると、1年春の埼玉県大会、関東大会でいきなりホームランを放ち、注目を集めた。1年秋からは不動の4番となり、2年連続で夏の甲子園にも出場。パワーは同校の先輩である野村佑希(日本ハム)にも引けを取らないものがある。脚力はそれほどでもないが、外野から見せる強肩も持ち味だ。
西村は強打のトップバッター。運動能力の高さが攻守両面によく生かされており、動きに躍動感があるのが長所だ。1年秋から不動の1番、センターに定着し、昨年の明治神宮大会でも攻守にわたる活躍でチームを牽引した。捕手・印出、遊撃手・中山の2人と並ぶセンターラインは、今年のチームのなかで全国でもナンバーワンと言えるだろう。
仲三河は投手として大阪桐蔭に入学したが、現在は強打の外野手として注目を集めている。下級生の頃と比べて、明らかに体が大きくなり、少し泳がされたようなスイングでも外野の頭を超えるパワーは出色。レギュラーに定着したのは新チームからだが、昨年秋の大阪府大会では3本のホームランを放ち、チームを優勝に導いた。投手として再挑戦する意思があるとも報じられているが、現時点での将来性の針は、野手の方に触れていることは間違いないだろう。
記事提供:プロアマ野球研究所