コラム 2025.01.20. 18:02

日本球界復帰を目指すゴジラの未来予想図【白球つれづれ】

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ワールドシリーズ第5戦の始球式を務めるヤンキースでプレーした松井秀喜氏 (C)Kyodo News

白球つれづれ2025・第3回


 大谷旋風に続け、とばかりに、日本人選手のメジャー流失が止まらない。

 昨年の山本由伸に次いで、今季は菅野智之がオリオールズに入団。そして今オフ最大の注目を集めた佐々木朗希が日本時間19日に、ドジャースとのマイナー契約を明らかにした。いずれも投手ばかりだが、今オフにはヤクルトの村上宗隆選手がポスティングによるメジャー挑戦を決めている。

 そんな中で、レジェンド・松井秀喜氏の動向がにわかに注目を集めている。

 昨年暮れには、イチロー氏が主宰する女子高校野球との交流試合に「KOBE CHIBEN」の特別ゲストとして出場。イチロー氏とは、その後の対談で「長嶋さんの元気なうちに、自分の元気な姿を見せたいなと言う気持ちはありますけどね」と古巣の巨人復帰を希望する、ともとれる発言をしている。

 これだけなら、リップサービスとも受け取れるが、今月19日にテレビ朝日系列で放送された『有働タイムス』でも、長年親交のある有働由美子キャスターから「日米どちらの指導者を望む?」と質問されると「日本かな?」と、ここでも語っているから、日本球界への復帰、もっと突き詰めれば将来の巨人監督へ前向きな意思を固めた?と取れなくもないのだ。

 事実、こうした発言を聞いた山口寿一巨人軍オーナーも、阿部慎之助監督の立場に配慮しながら「松井さんと長嶋さんは親子みたいなものでしょうから、(将来的には)そういう風になるといいですね」と期待を隠さない。

 昨年、就任1年目でリーグ優勝を果たした阿部監督の指導力は高く評価されている。これまでの巨人監督の任期を見れば、3年から5年の長期政権となるのが一般的だが、不成績に終わった場合には、それよりも短くユニホームを脱いだ例もある。

 松井氏は「阿部監督を心から応援している」と配慮も忘れないが、“一寸先は闇”もまた、勝負の世界の掟だ。

 巨人の四番から、メジャー随一の名門・ヤンキースへ移籍したのが2003年のこと。その後、2009年にはワールドシリーズのMVPに輝くなど9年間のメジャー生活を終えた後も、生活の拠点はニューヨークにあり、現在はヤンキースのGM特別アドバイザーとして活動している。

 一方で、長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督とは特別な師弟関係を築いてきた。長嶋氏が監督時代にドラフト1位の抽選を引き当て、入団後は球場や長嶋氏の自宅で毎日欠かさず打撃指導を受けている。当時は「四番1000日計画」と呼ばれたが、その後も指導は続き、ヤンキース移籍後も日米の電話越しで素振りの音を聞いて長嶋氏がアドバイスを送ったと言う。

 2004年に長嶋氏が脳梗塞で倒れた後も、重要な席には松井氏が付き添うなど“一番弟子”として献身的な姿を見せた。13年には国民栄誉賞を同時受賞。その恩師は今年89歳を数え、松井氏も50歳の節目の年を迎える。現役時代は「ゴジラ」の愛称で怪物の名を欲しいままにして来た松井氏も、指導者の道を選ぶなら“適齢期”に差し掛かっているのも事実だ。

 今季の巨人は、昨年までの絶対エース・菅野がメジャーに去り、その抜けた穴をどう埋めるのかが連覇への大きなポイントとなる。さらに、近未来を描いてみると、岡本和真、戸郷翔征や大勢など投打の主軸が、これまたメジャー志望を語っている。もはや、巨人のみならず、これが日本球界の潮流である。

 何年後になるかは定かではないが、将来、巨人の松井監督が誕生する頃には指揮官自らが「第二の松井」を育成しなければならないだろう。

 先日、日本の野球殿堂入りしたイチロー氏は、間もなく米国の殿堂入りも確実視されている。日米を股にかけて活動しながらアマチュア野球の指導に情熱を傾けている。そして、これまで進路を明らかにしてこなかった松井氏は古巣への復帰を念頭に動き始めた。

 メジャーでも活躍したレジェンド達が、今度は日本のために還元する時代。今後の松井氏の動向からも目が離せない。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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