No.1ファン宣言
「本当はね、オーナーがファンってどうかと思うんですけど、でも私、1番のファンでいたいと思います」。そう公言したDeNA創業者で現在も経営者として舵を取る役職の南場智子オーナーは、右手の小指にはめたDBスターマンのリングに目をやり、DeNAの企業使命に用いられる“Delight”をイメージさせるようなパッと華やぐような笑顔を浮かべた。
多忙にも関わらずシーズン中もかなりの頻度で現地観戦し、さらに「ポストシーズン全部現地!」とXで明かす南場オーナー。20日に開催された新入団選手本社訪問会では自ら壇上に立ちルーキーたちに金言を送ると同時に、勝利への執念を感じさせた。
2012年に球界に参戦し13年間シーズンを戦ったDeNA。オーナーも「その間ですね、めちゃくちゃいろんな経営努力してきました」と言い切る。
「数年がかりで選手層を厚くしてきました。その間も頑張ってお客さんを増やして、それによって収益が上がるじゃないですか。売り上げが上がって、少しずつ赤字が減って利益を上げ始めると、それをもっと選手の報酬に充当できるという形で。ビジネスの成功とチームの強化っていうのは両輪なんです。この両輪を実現して、少しずつ強くなってきたっていうことなんです」と弱小と言われたチームの再建を果たした道のりを披露。
しかし「どうしても最後の1点『勝つ』ことができなかった。これ、私たちの事務方にはどうしても最終的に手が出ない領域なの。どうしても勝つことができなくて、最後の1点が足りないよっていうことで、だいぶ焦り始めていました」と最後の埋まらないピースを求め続けていた。
その上で掴んだ日本一の座。「優勝してわかったことはですね、最後の1点とかへちまとか言ってたのは間違いだった。もう本当にそれが全てでした。それまでやってきたこともとても重要なことだったけれども、 それまでやってきたいろんな経営努力でお客様に提供できたデライトと、優勝でお客様に届けられたデライトだと、もうマグニチュードが違いました。全然インパクトが違った。やっぱり勝負事は勝たなきゃダメ。 勝つということが、どれだけユーザーさんの1人1人の人生や、街全体の喜びに繋がるのかということを痛感した。もちろんそれまでも勝ちたい勝ちたいって気持ちはとっても強かった。本当にバーニングっていうか、胸が灼けるけるような気持ちだったんですけれども、勝ってみてわかったのが、これが全てだと、ここまで違うとは思わなかった」と頂上からの景色を見たことで、新たな発見があった。
さらにパレードでは直接ファンの声を耳にし「おめでとうよりも多くありがとうっていう声が多くて。私はファンの皆さんにありがとうって言うんですけど、ファンの皆様のからもありがとうっていう声で返ってくるんです。ファンの皆様からしたら、自分たちのベイスターズなんだよね。自分たちのベイスターズが自分たちに最大のプレゼントをくれたということで、あの本当に大切な預かり物をしてるんだなと思いました。 やっぱり勝たなきゃいけないと」と勝利へのこだわりは何倍にも高まった。
それを踏まえた上で、ルーキーたちに求めたのが「1番のファンサービスが全力プレーです。いいプレーでファンの人に感動を届けてほしいなと。気を抜いたような、集中力に欠けたような試合で取れる星を落としてしまうことは、何十万人の横浜のファンの人たちの24時間を台無しにします。それが日曜日だったりすると48時間台無しにします。だからどうか、全力プレーをしてほしいです」と切に願った。
その想いは「私はファンの気持ちにめちゃくちゃ近いので、ファンの方々も同じように全てを台無しにされてしまうっていう気持ちでいらっしゃると思います。やっぱりがっかりするプレーを見た時は、それ以上なんか深い何かを負ってしまったりとか、いろんな影響が出てしまいますからね」との語り口は、完全にコアなファンそのものだった。
ベイスターズファン代表兼球団オーナー・南場智子氏。これからも深いベイスターズ愛を胸に、優しくも厳しい視線を我がチームに送り続ける。
写真・取材・文=萩原孝弘