オリックスの左腕曽谷龍平投手が、チームの先輩、九里亜蓮投手の助言で好投を続けている。
「マインド面が変わりました。試合中に余裕を持って投げることができるようになったんです」。曽谷が笑顔でマウンドでの心境の変化を明かした。
曽谷は、奈良県斑鳩町出身。明桜高(秋田)、白鴎大から2022年ドラフト1位でオリックスに入団。1年目から6試合に先発登板し初勝利を挙げ、2年目は打線の援護を欠きながらも7勝11敗、防御率2.34で先発ローテーションを守った。3年目の昨季は、切れ味の鋭いスライダーを武器にキャリアハイの8勝(8敗)を挙げたものの、後半に勝ち星を積み上げることができず防御率(2.34から4.01)、イニング数(119回から114回1/3)で前年を上回れなかった。
4年目のシーズンを前に掲げたのは、イニング数とクオリティスタート(QS、6回以上自責点3以下)。「自分でコントロールすることが難しい勝ち星や防御率ではなくイニング数にこだわりたい」と話したのは、昨年10月のこと。34歳で自分より50イニングも投球回を上回り、チーム最多の11勝を挙げた九里に助言を求め、一緒に自主トレをさせてもらった。
長いイニングを投げるためには、首脳陣の信頼を勝ち取ることが条件になる。そのための指標がQS。「QSを続けて信頼できる投手を目指す」という曽谷にとって、「年間200イニングが目標」と公言する九里は、身近にいる“先生”だった。
「(九里さんと練習して)何が変わったかといえば、長いイニングを投げたいという意識が強くなったことと、マインド面です。ピンチを迎えてもチャンスだと捉えて、冷静に投球を組み立てられるようになりました。慌てずに自分の投球をすることに集中できるようになったんです」。これまでは自分に向かっていた矢印が、焦りがなくなり冷静になったことで打者に向かい、しっかりと勝負することができるようになったという。
キャッチボールも、これまで以上に大事にするようになった。自主トレ後も、毎週月曜日の「投手指名練習」で常に九里のキャッチボールの相手を務める。「練習でしか悩めないことがあるんです。そこで考えることが大事だということを、今年は改めて感じています。フォームはもちろんなんですが、イメージしているのは、軽く投げてもベース盤で強い真っ直ぐがいくことです」。九里と行うキャッチボールの距離は30m。互いにキャッチャー役になって投げ込む。マウンドからホームベースまでの距離は18.44mだが、30mを強く投げ込むことで、ベース盤で強い球を投げることにつながるというわけだ。
「30mで垂れない球を投げることができれば、18mならより強い球が投げられるということです。(距離が長いので)ちょっとでもズレたらボールがあっちにいったりしてしまいます。僕にはその発想はありませんでしたから、目からうろこでした」と曽谷。
今季はここまで3勝3敗。しかし、QSは登板7試合中、4試合で記録。昨季は21試合中、9試合だったことを考えると大幅に改善している。6月3日の巨人戦(東京ドーム)では、7回を被安打2、奪三振10、与四球1、1失点で先発投手の責任を果たした。「チームの信頼を得て、ローテーションの一角を担える、試合を作るピッチャーを目指します」。宮城大弥、山下舜平大両投手がトミー・ジョン(TJ)手術で離脱し、左腕にかかる期待はさらに大きいが、どんな状況でもブレずに腕を振る。
取材・文=北野正樹