2023.08.18 18:00 | ||||
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2020年1月6日のロッテ浦和球場。
室内練習場ではこの年から背番号『16』に変更になったばかりの種市篤暉が、半袖で黙々とキャッチボールをしていた。同日の練習後に新背番号の16について取材する中で、エースについての話題になった。当時種市は「去年(19年)8勝して今年(20年)はそれ以上の成績を残してくれると計算していると思うので、それ以上の活躍をしないといけない。貯金は、これからエースになりたいと思っているので、そこは大事じゃないかなと思っています」と話した。
種市にとってエースとはーー。
18年9月24日の巨人との二軍戦で先発し守備のミスから失点し、3回2/3を投げ7安打8失点でノックアウトされた翌日、種市に初回にミスから失点してしまったことについて質問すると、「守備をカバーするのがピッチャーだと思いますし、エースになりたいならそういうところをカバーしていかないといけない」と、高卒2年目で一軍で先発ローテーション入りを目指しファームでアピールする立場だったが、はっきりと将来“エース”になりたいと口にした。
話は20年1月6日に戻る。“エースになりたい”と種市が口にしたとき、ふと18年9月25日の取材のことを思い出した。種市にそのことを伝えると「全然(18年9月25日の取材で言ったことは)覚えていないですね。ただ、このピッチャーが投げて勝てると思ってもらえるのがエースだと今(20年1月6日時点)は思っています。自分が投げる時は安心して見れるくらいのピッチャーになれればと思います」。
あれから3年――。20年、一時三振数でリーグトップに立てば、7月25日の西武戦でプロ初完封勝利を達成するなど順調に“エース”の階段を登っていた中で、同年9月に右肘のトミー・ジョン手術。ここまで辿り着くのに手術もあり、少し時間はかかった。
今春季キャンプで「僕の中ではローテを目指して1年間守り抜ける技術、体力、このキャンプでつけて1年間頑張りたいと思います」と、先発ローテーションを勝ち取る立場だったがしっかりとアピールし開幕先発ローテ入りを果たすと、白星を積み重ね、7月には自身初のオールスターゲームにも出場。8月4日の楽天戦でシーズン自己最多タイの8勝目を挙げ、プロ入り後初めて中5日で先発した10日のオリックス戦で7回無失点に抑え9勝目。
自身初となる二桁勝利がかかった18日の楽天戦は初回に先頭の辰己涼介にセンター前に運ばれたが後続を抑え無失点で切り抜けると、2回以降は力強いストレート、右打者には効果的にツーシームを使い、スコアボードに0を並べていく。2-0の6回先頭の辰己に2ボール2ストライクから空振り三振に仕留めたインコース148キロストレート、4-0の7回二死走者なしで岡島豪郎を3ボール2ストライクから見逃し三振に仕留めたインコース148キロストレートは非常に素晴らしかった。
4-0の8回に二死一、三塁から小深田大翔にセカンドの適時内野安打で1点を返され、さらにセカンド・中村奨吾の悪送球の間に一塁走者・辰己を三塁に進めてしまったが、味方の守備を助けるのも種市の役割。今季打ち込まれていた小郷裕哉を左飛でピンチを脱し、最少失点で切り抜けた。最終回は守護神・益田直也が締めて、種市にとっては嬉しい10勝目を手にした。
また、この試合で7三振を奪い佐々木朗希にならびリーグトップタイの130奪三振となった。三振へのこだわりについて、「(三振は)取りたいです。取りたいですけど、2ストライクになったら前に飛ばないほうがリスクは少ないと思うので、取れる時は取りたいと思います」と今月上旬の取材で語っている。
種市の実力、これまでの取り組み、向上心を考えれば、まだまだ10勝は通過点にすぎない。リーグ優勝するため、種市には最低でも貯金10、残り登板は先発した試合は全て勝って欲しいというのが本音。個人に目を向けても、最多勝、最多奪三振、最高勝率などのタイトルを狙える位置にいる。種市は前回のオリックス戦、そして今回の楽天戦とチームが連敗している中で連敗を止め、2試合連続で7イニング以上を投げ、チームを勝利に導いた。エースの条件として“このピッチャーが投げて勝てると思ってもらえる”とかつて話していたが、いまや立派なエースに成長したと評価しても良いのではないだろうかーー。筆者個人としては、過去の取材を思い出した種市篤暉の10勝目だった。
取材・文=岩下雄太
室内練習場ではこの年から背番号『16』に変更になったばかりの種市篤暉が、半袖で黙々とキャッチボールをしていた。同日の練習後に新背番号の16について取材する中で、エースについての話題になった。当時種市は「去年(19年)8勝して今年(20年)はそれ以上の成績を残してくれると計算していると思うので、それ以上の活躍をしないといけない。貯金は、これからエースになりたいと思っているので、そこは大事じゃないかなと思っています」と話した。
種市にとってエースとはーー。
18年9月24日の巨人との二軍戦で先発し守備のミスから失点し、3回2/3を投げ7安打8失点でノックアウトされた翌日、種市に初回にミスから失点してしまったことについて質問すると、「守備をカバーするのがピッチャーだと思いますし、エースになりたいならそういうところをカバーしていかないといけない」と、高卒2年目で一軍で先発ローテーション入りを目指しファームでアピールする立場だったが、はっきりと将来“エース”になりたいと口にした。
話は20年1月6日に戻る。“エースになりたい”と種市が口にしたとき、ふと18年9月25日の取材のことを思い出した。種市にそのことを伝えると「全然(18年9月25日の取材で言ったことは)覚えていないですね。ただ、このピッチャーが投げて勝てると思ってもらえるのがエースだと今(20年1月6日時点)は思っています。自分が投げる時は安心して見れるくらいのピッチャーになれればと思います」。
あれから3年――。20年、一時三振数でリーグトップに立てば、7月25日の西武戦でプロ初完封勝利を達成するなど順調に“エース”の階段を登っていた中で、同年9月に右肘のトミー・ジョン手術。ここまで辿り着くのに手術もあり、少し時間はかかった。
今春季キャンプで「僕の中ではローテを目指して1年間守り抜ける技術、体力、このキャンプでつけて1年間頑張りたいと思います」と、先発ローテーションを勝ち取る立場だったがしっかりとアピールし開幕先発ローテ入りを果たすと、白星を積み重ね、7月には自身初のオールスターゲームにも出場。8月4日の楽天戦でシーズン自己最多タイの8勝目を挙げ、プロ入り後初めて中5日で先発した10日のオリックス戦で7回無失点に抑え9勝目。
自身初となる二桁勝利がかかった18日の楽天戦は初回に先頭の辰己涼介にセンター前に運ばれたが後続を抑え無失点で切り抜けると、2回以降は力強いストレート、右打者には効果的にツーシームを使い、スコアボードに0を並べていく。2-0の6回先頭の辰己に2ボール2ストライクから空振り三振に仕留めたインコース148キロストレート、4-0の7回二死走者なしで岡島豪郎を3ボール2ストライクから見逃し三振に仕留めたインコース148キロストレートは非常に素晴らしかった。
4-0の8回に二死一、三塁から小深田大翔にセカンドの適時内野安打で1点を返され、さらにセカンド・中村奨吾の悪送球の間に一塁走者・辰己を三塁に進めてしまったが、味方の守備を助けるのも種市の役割。今季打ち込まれていた小郷裕哉を左飛でピンチを脱し、最少失点で切り抜けた。最終回は守護神・益田直也が締めて、種市にとっては嬉しい10勝目を手にした。
また、この試合で7三振を奪い佐々木朗希にならびリーグトップタイの130奪三振となった。三振へのこだわりについて、「(三振は)取りたいです。取りたいですけど、2ストライクになったら前に飛ばないほうがリスクは少ないと思うので、取れる時は取りたいと思います」と今月上旬の取材で語っている。
種市の実力、これまでの取り組み、向上心を考えれば、まだまだ10勝は通過点にすぎない。リーグ優勝するため、種市には最低でも貯金10、残り登板は先発した試合は全て勝って欲しいというのが本音。個人に目を向けても、最多勝、最多奪三振、最高勝率などのタイトルを狙える位置にいる。種市は前回のオリックス戦、そして今回の楽天戦とチームが連敗している中で連敗を止め、2試合連続で7イニング以上を投げ、チームを勝利に導いた。エースの条件として“このピッチャーが投げて勝てると思ってもらえる”とかつて話していたが、いまや立派なエースに成長したと評価しても良いのではないだろうかーー。筆者個人としては、過去の取材を思い出した種市篤暉の10勝目だった。
取材・文=岩下雄太