◆ 勝利後のクローザーの心境
「今日は絶対に勝たなくてはいけなかったです」。ベイスターズの正捕手・山本祐大の電撃トレードが発表された12日の昼、その衝撃が冷めやらぬ中で始まった試合は、チームにとっても、クローザー山﨑康晃にとって特別な意味を持つ一戦となった。
感傷的なムードが立ち込めたスタジアムには、チームリーダーの右腕の強い覚悟と、勝利の裏に秘められた複雑が渦巻いていた。
クローザーとして今季10セーブ目をマークした山﨑康晃。「気合も入りましたね」と普段よりも感情の昂ぶりを感じ、腕を振った。
しかもこの日の先発は最優秀バッテリー賞に輝き、何年もの間特別な関係を築き上げてきた東克樹。注目度が上がる中代わってマスクを被り、先制のタイムリーに好リードでお立ち台にも上がった松尾汐恩にも「頑張っていましたね」と微笑む。
共に戦った仲間との別れ。ファンも試合中に山本祐大の応援歌を流すなど、スタジアムには感傷的なムードが立ち込めていた。
「色んな感情のなかで、みんなの心が動くゲームだったと思いますね。チームとしてここは絶対に勝たないといけない試合だと思いました。何がとはあえて話しませんけれどもね」。普段の勝利後の柔らかさとは違い、引き締まった表情で山﨑康晃が口にした最後の言葉は、別れの寂しさ、新しくマスクを被った松尾汐恩への期待を含め、複雑な心境が表れていたように見えた。
この日の勝利は、新たに進むベイスターズにとって特別な1勝となったに違いない。
取材・文 / 萩原孝弘