ソフトバンク・近藤健介(左)と栗原陵矢 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2026・第28回

 みずほPayPayドームのお立ち台で、栗原陵矢選手の軽妙なトークが笑いを誘う。

「昨日、近藤さんがヒーローインタビューで、結構煽って来たんで、何かちょっと腹立つなあと思って打ちました」。

 12日の楽天戦は栗原の独壇場だった。

 初回に先制タイムリーを放つと3回にはホームランレース独走の25号2ラン。チームの全打点を叩き出して、四番の仕事をきっちり果たした。

 近藤への“復讐コメント”には伏線がある。

 前日の同カードでは、近藤健介選手が、お立ち台で相棒をこうイジった。

「昨日クリに走者ためていっぱい回したけれど打ってくれなかったので、自分で打ちました」。

 年齢では3歳年上の近藤が、13日現在、20本塁打に67打点なら、栗原は25本塁打に62打点と両部門で、それぞれがトップと2位を並走。良きライバルの相乗効果でチームは先月30日から待望の首位に立った。バットも、口もただいま絶好調である。

 過去にMVP(24年)はもとより、首位打者、本塁打王、打点王と打撃タイトルをすべて獲り尽くした近藤は、現在最も打撃技術の高いスラッガーとして知られる。

 これに対して栗原は故障に泣かされる年も多く、これまでタイトルとは無縁。それどころか、今春のキャンプでは、古巣の捕手に再挑戦までさせられている。その時点ではレギュラー捕手の海野隆司選手に不安があったことや、もしもの緊急事態に備える小久保裕紀監督の危機管理の一環ではあっても、あらゆるポジションをこなせる「便利屋」の側面もあった。

 そんな栗原にとって、近藤は目の前にいる「生きた教科書」だ。

 体の使い方から、バットの走らせ方、狙い球の絞り方など、同じ左打ちで体格も似ている。数年前までならクリーンアップは近藤に柳田悠岐、山川穂高選手らが座り、レギュラーを守るのが必死だったが、徐々に成績を伸ばして、近藤先生を意識するところまで成長した。

 今や、リーグ随一の「KK砲」だが、セリーグでは阪神の佐藤輝明と森下翔太両選手が同じようにチームメイト同士で打撃タイトルを競っている。ソフトバンクも阪神も首位を走っているのは、良きライバルの存在が無縁ではないはずだ。

 13日、メジャーリーグでは新人ドラフト2日目を迎え、注目のスタンフォード大・佐々木麟太郎選手がマイアミ・マーリンズの8巡目指名(全体235位)を受けた。

 佐々木は昨年のNPBドラフトでソフトバンクから1位指名。その進路は現時点で①メジャー入り②学業を優先させてスタンフォード大残留③ソフトバンク入団の選択が残されている。交渉期限はメジャーが日本時間7月28日午前6時で、ソフトバンクとは7月31日まで。

 米国留学を決めたいきさつから、メジャー直行が有力視されているが、今月初めに帰国した際には、ソフトバンクと入団交渉も行っている。個人的には尊敬する人物に孫正義オーナーの名前も挙げている。

 早ければ、近日中にも進路は決定すると見られるが、もし大逆転でソフトバンク入団ならチームにとっても、将来の大砲を手にすることになる。「KKプラスK砲」となれば、黄金軍団はさらに輝きを増すはずだ。

 もし、佐々木獲得が不調に終わっても、現在のチーム力は充実している。

 栗原はこうも言う。

「近藤さんが打つと嬉しいけど、悔しい部分もある。なかなかかなう相手ではないが立ち向かっていきたい」。

 軽妙な“掛け合い漫才”が続けば、栄光のゴールも見えて来る。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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