ツインズのポール・モリター監督

◆ サプライズをねらうツインズ

 メジャーリーグ全30チームの中で多くの日本人選手が所属したことがあるチームといえば、名門ニューヨーク・ヤンキースやロサンゼルス・ドジャースが思い浮かぶ。

 逆にシンシナティ・レッズは、これまで一人も日本人選手を獲得しておらず、日本では馴染みの薄いチームの一つだ。他にもミネソタ・ツインズは、2011年から12年まで西岡剛(現阪神)が所属していたものの、西岡の退団後は日本でツインズの動向を見聞きする機会はそれほど多くない。

 その西岡も、ツインズ時代というとケガに悩まされた期間が長く、2年間で出場できたのはわずか71試合のみ。そのため、当時でもツインズの話題を日本で聞くことはあまりなかった。近年は低迷しているツインズであるが、実は西岡が加入した当時は強豪チームの一つであった。

◆ 短かった黄金期…

 2002年から西岡が加わる直前の2010年まで、9年間で実に6度の地区優勝を記録。投手はヨハン・サンタナやジョー・ネイサン、野手ではトリー・ハンターやジョー・マウアーなどがチームを支えていた。彼らの絶頂期こそ、まさにツインズの黄金期だったのだ。

 しかし、当時のツインズはプレーオフになるとレギュラーシーズンで見せた勝負強さが影を潜め、9年間のプレーオフ成績は6勝21敗。そのうち、ヤンキース戦だけで12敗(2勝)を喫している。

 奇しくも最後に優勝した2010年というと新球場初年度だったが、その後は低迷期に突入。2011年から借金30以上というシーズンが13年まで続いた。

◆ 若手野手の台頭で逆襲なるか

 そんな中、地元出身のスター選手だったポール・モリターが監督に就任したのが15年。その年は下馬評を覆し、83勝79敗と5年ぶりの勝ち越しに成功。再び黄金期の到来…かと見られた。

 しかし2016年は開幕から9連敗を喫するなど再び低迷。浮上するきっかけさえつかめず、ミネソタ移転後ワーストとなるシーズン103敗を喫した。このオフも目立った補強はなく、今季も苦戦は必至の状況だ。

 それでも、野手陣には明るい兆しも見えている。二塁手のブライアン・ドジャーは昨季42本塁打を放ち、リーグ屈指の大砲に成長。若手では、粗削りながら身体能力はメジャー屈指ともいわれるバイロン・バクストンや、デビューした15年から2年間で43本塁打を放った長距離砲のミゲル・サノらの成長が待たれる。

 一方で、チームの大きな課題となっているのが投手陣だ。特に先発陣は昨季1人も2ケタ勝利を記録できず、防御率もメジャーワーストの5.39に終わった。有望な若手投手も育ってきていないのが現状である。

 戦力的には、あと2~3年は辛抱が必要となるだろう。それでも、就任1年目にサプライズを起こしたモリター監督の手腕に期待するファンは多い。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊・プロフィール】 1976年、和歌山県出身。大学卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。日本にファンタジーベースボールを流行らせたいという構想を持ち続けている。

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