ソフトバンク・甲斐拓也(C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2024・第45回

 阿部巨人の“期末テスト”の成績表が、まもなく明らかになる。

 4年ぶりのリーグ優勝も、DeNAの下剋上の前に日本シリーズ進出を逃したチームは、シーズンオフと同時に大補強作戦を決断した。

 FA宣言した阪神・大山悠輔、ソフトバンクの甲斐拓也と石川柊太の3選手同時獲得を狙ったのだ。2016年以来のトリプルアタックである。

 しかし、大山は先月29日に阪神への残留を発表。「地鳴りのようなあの感動をもう一度感じたい」と甲子園の熱狂的な虎党の声援が残留の決め手になったと言う。

 大山の獲得策は、メジャー志向を明らかにしている主砲・岡本和真選手と密接な関係があった。近い将来に岡本がチームを去った場合、4番・一塁に大きな穴が空くのは明らか。さらに三塁も守れる大山なら、近年衰えの目立つ坂本勇人選手の座も補える。まさに一石二鳥の補強だったのだ。ライバルチームの戦力を削ぐことまで考えれば一石三鳥とさえ思えた。

 最初の答案は0点に終わった巨人にとって甲斐の獲得は失敗が許されない。

 ソフトバンクが常勝軍団になる中で正捕手を守り続けたベテラン。2010年の育成ドラフト6位で入団した苦労人だが、「甲斐キャノン」と称された強肩と安定感のある守りと、リードで侍ジャパンのレギュラーにまで上り詰めた。

 そんな甲斐は昨年オフに球団が維持した複数年契約を断り、単年契約を選択している。すでに今年のFA資格取得を念頭にしたものと見られる。育成選手がFAで大型移籍となれば史上初の事。同じく育成同期の千賀滉大投手がメジャーリークのメッツに移籍したことも刺激になっている。

 これほどの大物だから、ソフトバンクとしても、おいそれと手放すわけにはいかない。甲斐が抜けた場合、現状で新たなレギュラー捕手と目されるのは来季6年目を迎える海野隆司選手だが、今季の出場は51試合で、途中出場も多く、打率は1割台では心もとない。

 すでにソフトバンクでは宣言残留を前提に、4年総額12億円の大型契約を提示している。これに対して巨人もさらに上を行く5年以上の好条件を出して熱烈アタック。まもなく直接交渉に臨む前に水面下では激しい争奪戦が展開されている。

 巨人には今季、大城卓三、小林誠司、岸田行倫といずれもレギュラーを張れる人材がいる。それでも捕手出身の阿部慎之助監督は動いた。

 このオフ、大城がFA資格を取得、その動向が知注目されていた(その後残留が決定)こともあるが、ここでも岡本のメジャー志向が関係する。仮に岡本が数年以内に退団した場合、甲斐を獲得できれば不動の正捕手が出来上がる上に、大城の一塁コンバートもしやすくなる。大山の獲得はならなかった以上、何としても日本一奪取のためには甲斐の移籍は実現させなければならないのだ。

 菅野智之のメジャー挑戦で、空いた穴には石川も欲しい。こちらは巨人以外にヤクルト、ロッテ、オリックスが獲得に名乗りを挙げ、ソフトバンクも引き留めている。

 一昔前なら、FA選手の獲得は巨人の独壇場だった。巨額の動くマネーゲームになると対抗相手も限られた。しかし、近年はソフトバンクの大型補強の前に名門球団のアドバンテージも消えて、ここ数年は若手育成に舵を切ってきた。

 久しぶりのFA大作戦。先月には山口寿一オーナー自ら、大型補強を熱望する“ラブコール”まで送っている。甲斐との直接抗し様の場には阿部監督が直接乗り出して口説き落とすと言われる。再び、常勝軍団に生まれ変われるかのターニングポイントと言っていい。

 甲斐と石川の獲得なら、大山を除いても70点近い成績を上げられる。一方ですべてが失敗に終われば、オフの成績表は限りなく赤点になる。

 運命の時は、間もなくやって来る。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

【荒川和夫・プロフィール】
1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

この記事を書いたのは

荒川和夫

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