「頑張ったことは頑張ったんですけど、もっとできたこともあったので、来年また頑張りたいと思えるようなシーズンでした」
ロッテの澤田圭佑はシーズン最終盤の10月1日に一軍登録抹消されたものの、開幕からほぼ一軍で過ごし、移籍後最多の42試合に登板した。
背番号を54に変更した今季、“速くて落ちるフォーク”の習得を目指し、昨年秋から取り組んできた。1月26日の取材では「イメージはだいぶ作れて、ここから試合とか始まるので、それでどうなるかを早く試したいなというか、バッターの反応が全てではあると思うので、いろんなことを想定しながらやっていこうかなというイメージです」と手応えを掴み、春季キャンプに突入。
練習試合では、地方球場ということもあり映像では球速が表示されない場合がある。140キロくらいは出したいと話していたフォークは、140キロ前後の球速帯で投げられているのだろうかーー。
「出ていないんじゃないですか。ストレートがちょっと今遅いので、それにつられて遅いですね」と、実戦が始まってから納得のいくスピードを出せていなかった。
3月10日のオリックス戦、1-4の8回一死走者なしで太田椋に2ストライクから投じた3球目(137キロフォーク)、4球目(138キロフォーク)とボール球になったが、140キロに迫るフォークを投げた。「スプリットに変えました。握りを浅めにしました」と、太田の3球目と4球目に投げたボールこそ、握りを浅めにしたスプリットだ。
3月13日の西武戦では、1-2の7回一死一塁で石井一成に1ストライクから投じた2球目の135キロのスプリットで空振りを奪い追い込むと、続く3球目の134キロスプリットで空振り三振に仕留めた。本人も石井に投じたスプリットについて「素晴らしかったです」と自画自賛。
フォークからスプリットに変更した理由について「球速ですね」と説明。確かに、オフから速くて落ちるフォークを目指し練習に励んできた。「チェンジアップに似ている球種になるので、チェンジアップと違う落ち球というので速くないと分けられない。遅い変化球やと、チェンジアップ一括りになる。スピードアップして変化を出すという感じです」
昨年秋からフォークを練習してきた中で、開幕前にスプリットに変更するのは勇気のいるように思える。
「秋にスプリットをめっちゃ練習していました。ジョニーさん(黒木知宏投手コーチ)にスプリットを見てもらって、1回完成したかなと思ったんですけど、ピッチングのトラックマン、ブルペンやったら3月13日の西武戦で投げていたスプリットは落ちる表示がされないんですよ」
「落ちないなと思って、2月に美馬さん(二軍投手コーチ)がフォーク得意なので、ちょっと深く挟むようなフォークを教えてもらったら、ブルペンでめっちゃ落差が出るんですよ。対バッターと考えた時に、開幕していく段階なので、大きい怪我(打たれる)するような球種を投げちゃいけない。リリーフなので。そうなったときに、13日の西武戦で落ちなくてもいいから速い変化球というのをチョイスして、スプリットにしたというのがあるので。練習していないわけではないです。秋もスプリット、フォークの両方を練習していました」
昨年の秋からフォーク、スプリット、どちらでも投げられるように練習を重ねていた。「大きい長打を打たれたくないので、そのリスクを少ない方をとったという感じです」と、このタイミングでフォークからスプリットに選択肢を変更したということだ。
ストレートも、実戦が始まってから球速が思うように出ていなかったが、バンテリンドームでのオープン戦で150キロを超えるボールを投げ込み、この日の最速153キロを計測。「ストレートもまだ良くなる感じがあるので、まだまだここから仕上げの段階というか、1つ、2つよくなりそうな気がします」。練習試合、オープン戦、9試合・9回を投げて、防御率0.00と結果を残し、開幕一軍を掴んだ。
◆ 開幕してから安定の投球
開幕してからは、4月3日のソフトバンク戦、0-2の9回に登板し1回・15球、三者凡退に抑え、その裏のサヨナラ劇に繋げた。4月7日のオリックス戦で今季初めて同点の1-1の7回に登板すると、4月12日の西武戦で今季初めて同点の0-0の8回にマウンドへ。4月16日の日本ハム戦では5-3の8回、今季初めて勝ち試合の8回に登板するなど、同点、勝ち試合での登板が増えてきた。「目の前の1球に集中してという感じです」と、同点、勝ち試合の登板であっても、矢印を自身にむけ、あくまで自分の投球することだけを心がけた。
3月上旬から握りを浅めにしたスプリットを投げているが、4月16日の日本ハム戦、5-3の8回二死一塁で万波中正を1ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた4球目のスプリットはシンカー系だった。
「あれは多分風がぶつかって横に流れたんですけど、結構前のPayPayドームで牧原さんに投げたスプリットは横曲がりしていたので、ゾーンに狙ったシンカー気味になっている感じがします」
シンカー気味に落ちることに関しては「動いて空振りが取れたらいいので、落ちてもいいし、流れてもいいし見たいな感じです」と明かした。
開幕直前にスピードが戻ってきたストレートは、4月19日の楽天戦、8-5の8回一死一塁で伊藤裕季也を3ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた6球目の148キロストレートは力強く、5月8日のソフトバンク戦、5-3の7回無死一塁で今宮健太に1ストライクから投じた2球目の151キロストレート空振り、3球目の空振り三振に仕留めたインコース151キロストレートをマークした。
今宮を三振に仕留めたストレートについて「まあまあです」としながらも、ストレートのスピードについて5月12日の取材時点では「開幕の時くらいから上がってきたので、スピードは今はまだ出そうな感じがある。それなりにいいかなというような感じです」と語った。
5月上旬はストレートで押す投球が目立った。5月12日の取材で、ストレートで押せているのはストレートに自信があるからなのか訊くと、「そうですね、まっすぐを自信を持っています」と頼もしい言葉。
この時期、「まだ使っていない。ストレートで押していって、完璧にストレートにあっていないので、チェンジアップよりはスライダー、スプリットの動く方を投げた方が。完璧にストレートを合い始めたら、チェンジアップの奥行きで勝負しながらというイメージで考えています」と、得意球でもあるチェンジアップを封印して抑え続けた。
5月28日の広島戦では、4-2の7回に登板した八木彬が大盛穂に適時打を浴び、なおも一死満塁とピンチが続く局面で澤田はマウンドへ。菊池涼介を146キロのストレートで右飛に打ち取ると、続く坂倉将吾を初球の130キロスプリットで一ゴロ。わずか2球で満塁のピンチを脱した。
坂倉を打ち取ったスプリットは「今年数字上一番よいスプリットだった」と5月30日の阪神戦の試合前練習で明かしている。
5月31日の阪神戦、2-2の6回に登板し1回を無失点、6月9日の中日戦、3-1の7回に登板し1回を無失点、6月11日の中日戦、2-2の10回に登板し1回を無失点に抑えるなど、6月2日(火)の週は1週間に4登板するなど、6月上旬は投げまくった。
6月19日の楽天戦では「まっすぐあっていないバッターに変化球を投げたらよく打たれるので、まずは真っ直ぐで勝負という感じですかね」と、1イニングを6球全てストレートで無失点。
6月終了時点で26試合に登板して、2勝1敗11ホールド防御率1.78と抜群の安定感を誇った。7月に入ると、8日の日本ハム戦で4失点、続く12日のオリックス戦で3失点したが、15日の西武戦から8月12日のソフトバンク戦にかけて6試合連続無失点。
7月15日の西武戦、3-2の7回無死満塁で外崎修汰を3ボール2ストライクから見逃し三振に仕留めたストレートは「投げ切った球なので、いい球ではあったかなと思います」と振り返れば、本人は「まあまあかなと思います」と話した8月2日の日本ハム戦、0-3の8回先頭の上川畑大悟を2ボール2ストライクから投ゴロに打ち取ったインコース149キロストレート、0-3の8回二死走者なしで水野達稀を1ボール2ストライクから空振り三振に仕留めたインコース151キロストレートなど、左打者のインコースのストレートも良かった。
スプリットも「とりあえず浮いて長打にならないように一番に投げているので、ワンバウンドまで振ってもらえるのは結構いいかなというような感じですかね」と、7月15日の西武戦、3-5の7回二死二塁でカナリオを2ボール2ストライクから空振り三振に打ち取った130キロのスプリットは素晴らしかった。
得意球のチェンジアップも「(打者が)狙ってはないと思うので、しっかりカウントを取る球にもなっているし、勝負球にしていけるような配球をしていけたらいいかなというような感じですかね」と、7月以降は投げる場面が増えた。
1回を無失点に抑えた7月23日の楽天戦は1回・11球を投げ、そのうち9球が変化球を投げるなど、変化球を使いながらの投球で、ストレートの良さがより際立っている印象だ。「配球が偏って、長打を打たれたり、ホームラン打たれたりというのがあったので、色々(佐藤)都志也と考えながら、やっています」
8月12日のソフトバンク戦、4-10の8回一死走者なしで正木智也を1ボール1ストライクから二ゴロに打ち取ったスライダー、4-10の8回二死走者なしで周東佑京に投じた初球ファウルにさせたスライダーは、チェンジアップのようなを軌道で、スピードも120キロ台前半だった。
「ちょっと縦のマイナスの変化も入れてみたいと思って。どうしても横だけやったら拾われる時もあるので、そういうのも試しながら」と明かした。
6試合連続無失点に抑えていたが、8月14日の西武戦で3失点、18日の楽天戦でも1失点と2試合連続で失点。8月22日の日本ハム戦の試合前練習後に「ギリギリのところ」、「今が一番の瀬戸際」と胸中を告白した。8月26日のソフトバンク戦、27日のソフトバンク戦はいずれも1回を無失点に抑えた。
スプリットは8月26日のソフトバンク戦、3-5の5回一死走者なしで栗原陵矢に1ストライクから空振りを奪った2球目の外角131キロスプリット、8月27日のソフトバンク戦、2-4の6回先頭の庄子雄大に1ボール1ストライクから空振りを奪った3球目の129キロスプリットがストライクゾーンからボールゾーンに良い落ちだった。
「スプリットも球速はちょっと出ていないけど、落ち方は安定している。投げ感はいいんですけど、あとはスピードが出てくれたらどんな場面でも投げられるような勝負球になると思う。ちゃんと落とすというのと、スピードをどういうふうな感じで両方上げていけるのかなというのは試行錯誤というか、スピードだけに偏りすぎたらストライクゾーンに残るような球で長打を打たれるイメージも湧くので、大事に落としすぎたら見切られるようなスピードになってきたりする。ギリギリのところを彷徨っている感じです」
だから、8月18日の楽天戦で2-4の7回二死一、二塁でマッカスカーに1ボールから空振りを奪った2球目のスプリットの球速が128キロといつもに比べて遅かったのかーー。
「そうです。間違いたくないので、ストライクゾーンに残ったら長打になる確率が高いので、絶対にボールにという意識で」
試行錯誤しながら、2試合連続無失点に抑えていたが、9月1日の西武戦の試合前練習後の取材で澤田は「ギリギリです。崖っぷちです」と気を引き締めた。
この時期、投球フォームを見ると、並進運動の時の動きが少し変わったように見えた。
澤田本人に確認すると、「変えています」と明かし、「ちょっと左肩を入れすぎて体が振られるような感じで投げていたので、夏にもなってきて体をあまり振りたくないなと思って、左肩を入れすぎないイメージ。いつもは限界まで(左肩を)入れてバチーンと反動でという感じなんですけど、それがオーバーになりすぎて、ばらつくことがあるので、そこをどうにかちょっと改善しているというか」と説明した。
反動を入れた方がスピードが出るようにも感じるが、澤田は「反動つけばつくほど出るんですけど、そこから落ちないレベルに改良しています」と、投球の技術者として球速が落ちないわずかなところを変化させている。
動きを変えるのはキャッチボールから試している。「キャッチボールで試してブルペンでも試して、試合でも投げて結果が良かったらそのまま続けるし、結果が微妙やったらそこから修正してという感じです。日々変えていかないと、同じことだけやっているとバッターに慣れて絶対に打ってくる」。目の前の打者を抑えるために、試行錯誤、より良い方向に進めるため日々進化して、マウンドに上がっていた。
9月は「特には変わりはないかなという感じですね。見栄えがいいだけじゃないですか」と、11日のソフトバンク戦でオリックス時代の18年以来8年ぶりにシーズン40試合登板。17日の楽天戦では、1-5の9回先頭の宗山を1ボールから投じた外角147キロ見逃しストレート、1-5の9回一死走者なしでマッカスカーを1ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた127キロスプリットはストライクゾーンからボールゾーンに良い落ちだった。
左打者のアウトコースのストレートは曲げているのか確認すると、「曲がっているっす。大体曲がっているので、曲がって欲しくない時もあるし、曲がっていい時もあるので、一概には言えないですけど」と明かし、マッカスカー三振に仕留めたスプリットは「(スピードは)出ない。大事に行きすぎてスピードは遅い。127とか8になっているので、それでも今はコントロールを間違いたくないし、長打を打たれたくない」とのことだった。
今季最後の登板となった9月28日の日本ハム戦は、1回を投げ2失点。今季は42試合に登板して、2勝1敗11ホールド、防御率4.14だった。
シーズンを振り返ってストレートに関して「良い時も悪い時もという感じで、まだまだ良くなる感じがするので、来年もっと良い球を投げられるように頑張ります」と話し、春先封印していたチェンジアップについても「左バッターに最後の方投げ続けられたので、フォークとチェンジアップ両方形になったかなと感じがします」と分析。
スプリットも「去年はなかった球なので、1年間投げ続けてホームランが1本なので、まあまあそれなりに試合で投げられるレベルの球にはできたかなと思います」と納得の表情を浮かべた。
昨季は勝負球として使うことが多かったスライダーは「コンスタントに。あんまり決め球には使わなかったような気がするんですけど、スライダーを1年間投げ続けて、左の外の方が良かったかなと。もう1回、右外をどうするか、ちょっと秋頑張らないといけないと思います」と課題を口にした。
「スライダーとスプリットを自信を持って勝負球にできるように。ストレートはストレートで頑張ります」。夏場以降苦しい投球が目立ったが、来季はシーズン通して、安定した投球を披露していきたい。
取材・文=岩下雄太