コラム 2023.09.27. 15:05

名門カージナルスが33年ぶりの地区最下位 “予想通り”埋まらなかった大きな穴

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埋められなかった、大きな穴…

3地区制になってからは初めて


 セントルイス・カージナルスは現地時間26日(日本時間27日)、敵地でのブリュワーズ戦に4-1で快勝。先発したマイルズ・マイコラスは7回を1失点に抑えて、8勝目(13敗)を飾った。

 これで今季の成績を69勝88敗としたカージナルス。もし残り5試合に全勝しても、ナ・リーグ中地区の最下位は確定済みだ(4位・パイレーツが5戦全敗なら同率)。

 メジャーでも屈指の名門チームが地区最下位に終わるのは、3地区制になってからは初めて。2地区制だった時代を含めると、1990年以来で実に33年ぶりの屈辱となった。


投手陣が大苦戦、その要因は…?


 カージナルスといえば、侍ジャパンで活躍したラーズ・ヌートバーが所属している。そのため、開幕前は日本での注目度も高かったが、開幕3試合目を終えた段階で2勝1敗としたのを最後に、一度も貯金をつくることはなかった。

 シーズン負け越しは2000年以降で2度目。大きな借金をつくった最大の理由は、投手陣の崩壊につきるだろう。

 93勝を挙げて地区優勝を果たした昨季は、チーム防御率がリーグ4位の3.79だった。ところが、先発投手陣を中心に大きな変化なく迎えた今季のチーム防御率はなんと4.75まで悪化(26日現在)。リーグ内の順位も4位からワースト4位(12位)へと急降下した。


 ただ、こうなることは開幕前からある程度、ファンも織り込み済みだったはずだ。

 何故なら、長らくカージナルスの屋台骨を支えてきた捕手のヤディエル・モリーナが昨季限りで現役を退いたためである。

 モリーナはトニー・ラルーサ政権下の2004年途中、21歳にして正捕手に定着。それ以降は中心選手として攻守でチームを引っ張ってきた。打っては通算2168安打を放ち、守っては巧みなリードと強肩で、ベテラン・若手にかかわらず投手陣の能力を最大限に引き出してきた。


大きすぎたモリーナの穴


 そんなモリーナがチームを去って迎えた今季は、同地区ライバルのカブスからFAになっていた強打のウィルソン・コントレラスを獲得。守備面には課題を残すものの、昨季までの7年間で117本塁打のパンチ力を買われて、カージナルスの新たな正捕手となった。

 しかし、守備だけでなく打撃でも精彩を欠き、開幕から1カ月後には捕手失格の烙印を押され、指名打者としての起用が増えていく。それでも控え捕手のアンドルー・キズナーとの併用は続き、7月以降は打棒が復活したものの、守備は最後まで苦しんだまま。先週に左手首を痛めると、閉幕を待たずして負傷者リストで今季を終えた。


 結局、コントレラスがカージナルス初年度に残した成績は、125試合(うち捕手として90試合)に出場して打率.264、20本塁打、67打点。打撃はほぼ期待通りの数字を残したといえるが、捕手としては特にシーズン序盤に投手との連係に苦労する場面が目立った。

 数字を見てもその苦労ぶりは如実に表れており、コントレラスの捕手防御率は5.07。これは、キズナーの4.36に比べると、両者の打撃力の差を鑑みても小さくないマイナス要素だったといえるだろう。

 将来の野球殿堂入りも期待されるモリーナが残した大きすぎる穴。それを埋めるのは簡単なことではない。当面の間、カージナルスの暗黒時代は続くかもしれない。


文=八木遊(やぎ・ゆう)

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