楽天・吉井理人新監督(左は三木谷浩史オーナー、右は石井一久GM)(C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2026・第25回

 楽天に吉井理人監督が誕生して1週間近くが経とうとしている。

 期しくも、復帰戦となったのが昨年まで指揮を執った古巣のロッテ相手。

 雨天中止もあり、3連戦は2試合となったが、結果は2連敗。塩川達也前監督代行時代から含めて、今季6度目の5連敗と泥沼状態は続く。

 今月16日に新監督就任の記者会見が行われた。

 三木肇前監督の休養と塩川監督代行が発表されてから、わずか6日後のことだ。シーズン中に外部から招請、就任するのは“史上初”と言う。さらにその席に三木谷浩史球団オーナーが出席。同オーナーの監督就任会見出席は、星野仙一氏以来、16年ぶり。多くのマスコミは、それを今度こそ、チーム改革を断行するオーナーの本気度の表れと伝えている。

 沈みかかっている難破船のような軍団の船長を、任す方も、任される方も勇気が要ったはずだ。

「ダメ元。火中の栗を拾う形だとは思う」と語る三木谷オーナーに対して、吉井新監督は「はじめは本当に迷ったのですが、(オーナーの話を聞いて)やるぞと決めてから覚悟は決まっています」と異例のシーズン途中の就任を受け入れた。

 会見の席でオーナーは、吉井監督の契約年数など細部には言及せず「中長期的な契約。勝者のメンタリティーを埋め込んで欲しい」と語り、「設備面、組織面、人材面。すべての意味において今後大きく投資をして最強軍団にしていく」と全面バックアップにチーム大改造計画まで打ち出した。

 だが、この三木谷構想を100%信じる気にはなれない。

 先に語っている「組織面」や「人材面」において、これまでどんな歩みを進め、どんな反省があるのか? 大きな投資をする前に、明確な総括がなければ大きな投資も、最強軍団も“絵に描いた餅”になりかねないからだ。

 至近な例を挙げる。吉井新監督誕生のわずか1週間前に三木肇前監督の休養は発表された。交流戦で巨人に敗退直後に話し合いは持たれ、発表は10日の午前1時。会見を開くわけでもなく、球団の一方的な発表だけである。

 三木前監督の指揮官としての資質に疑問符はついても、20年と25年には前任監督の苦境の中をピンチヒッターのような形で指揮を執っている。球団にとっては、立派な功労者を紙切れ一枚で、しかも深夜に休養を発表する企業風土。

 2004年に球団創設以来、延べ10人の指揮官を誕生させたが1年、もしくは2年以内に交代を命じられた監督は、初代の田尾安氏から、マーティ・ブラウン、大久保博元、平石洋介、今江敏晃に三木各氏まで6人を数える。いつしか、こうした性急な人事に「誰も楽天の監督はなりたがらない」と言う風評まで飛び交っている。

 今回の監督交代でも、大きな役割を果たしたはずの石井一久GMはダンマリを決め込み、説明責任を果たさない。「人事面」の改革を進めるなら、こうした悪しき慣習から改めなければ意味がない。

 今季の三木前監督の言動をチェックしていくと、先発メンバーや作戦面を問われて「他の人に聞いてください」と言葉を濁すケースが多く伝えられた。一部では用兵や作戦面まで監督とは違うところから指示が出されていると言う球界OBの声もある。これでは誰が監督をやっても長くは務まらない。

 吉井新監督と言えば、投手コーチとして、ダルビッシュ有、大谷翔平、佐々木朗希投手らを育て上げた名伯楽。その一方でコーチ時代には監督と起用法を巡ってたびたび衝突も繰り返した職人肌でもある。今回、楽天側は「中長期的な契約」としているが、再び球団側から理不尽な介入が行われた場合には、怒りの退団に発展する可能性も排除できない。ここでは「組織面」の大改革が必須だろう。

 三木谷オーナーは「データ重視」のチーム改革の例として、同じくオーナーを務めるサッカー「ヴィッセル神戸」の成功例を上げている。

 確かに近年の野球界も「データ重視」は顕著で戦略、戦術にも大きな影響を及ぼしている。しかし、一方で「データ野球」は楽天だけでなく、12球団に浸透しつつある。パソコンを操るだけでなく、いかに活用して、選手側に落とし込むかは、人間の分野だ。ある程度まで戦える陣容を整えることが先で、データだけが先走っても好結果は生まない。

 財界ではソフトバンクの孫正義オーナーともしのぎを削る三木谷氏。孫氏には王貞治球団会長という全幅を置く専門家がいる。そうした大きな理解者がいないから「ワンマン・オーナー」と呼ばれ、厳しい声が届きにくい現状がある。

 21日現在、23勝42敗1分け。パ・リーグの借金をすべて背負い、5位ロッテの背中も見えない。

 残り試合を無駄にしないと言うなら、まずは足元の病巣を見つめ、改革の第一歩としなければならない。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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