第108回全国高校野球選手権大会 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2026・第33回

 第108回全国高校野球選手権大会は16日に準々決勝に進出する8校が決まった。

 優勝候補の筆頭と目される横浜(神奈川)や、熊本地震からの復興を目指す熊本代表の有明がすべて逆転のミラクルな進撃を見せるなど、興味深い顔ぶれが揃っている。

 100年を超す大会は、近年の世界的な気候変動もあって、毎年のように改革に迫られている。

 投手の負担軽減を目的とした球数制限や、延長の死闘を防ぐタイブレーク制や、炎熱対策の試合時間の二部制など多岐にわたる。

 今大会から採用されたのが「ビデオ検証」の導入だ。

 プロ野球では2018年から採用され、審判の判定に疑義のある時は当該監督が「リクエスト」を要請して、ビデオ映像をもとに再度チェックの上、最終的な判定が下される。テクノロジーの発達した時代。高校野球でも検討されて来たが、ようやく甲子園大会で採用が決まった。

 このビデオ検証と、選手に試合途中で休息を与える「クーリングタイム」によって、がらりとゲームの様相が変わった典型例がある。大会11日目の3回戦天理(奈良)対高川学園(山口)戦である。

 試合は5回まで3-0で高川リード。高川の先発・木下瑛二投手はそれまで天理打線を散発3安打無得点に抑えて来た。ここで8分間に及ぶクーリングタイムが入ることで勝負の流れは大きく変わった。

 好投する投手にとっては、8分間の休息は投球のリズムに微妙なズレを起こしかねない。逆に打順が3巡目になる天理側とすれば、もう一度対策も立てやすい。

 案の定、6回表に3安打と3四死球を絡めて4得点を上げて大逆転する。

 その裏、高川も二死一、二塁の同点機に九番・田中良典選手の放った一ゴロは、一塁手からベースカバーに入った投手と、一塁にヘッドスライディングで滑り込んだ田中選手の触塁が間一髪のプレーとなったが、一塁審の判定はアウト。天理の選手たちがベンチに帰り、高川のバッテリーも守りの位置に就いたその時、高川の松本祐一郎監督からビデオ検証の要求が出される。しかし、審判団はこのリクエストが「速やかでなかった」として却下。ゲームは進められていった。

 問題の場面。確かに高川ベンチからのビデオ検証要求はワンテンポ遅れた。

 一方で、ルールでは「速やかに球審に対してビデオ検証を求めることが出来る」と明記されているが、制限時間の規定はない。しかもこの裁定に対して審判団から明確な場内放送がなされていないから、不可解さが残った。

 「際どいプレーだから我々も選手に聞くのに時間がかかってしまった。ベンチの責任です」と松本監督は説明したが、ビデオ検証に今後、どう対処していくのかは勝敗の上でも重要なテーマになりそうだ。

 かつての高校球児は「水を飲むな」と教わったものだが、今では水分補給は当たり前。ひとりのエースか甲子園で300球、400球と投げていたのが、今では複数投手によるリレーなくして頂点にはたどり着けない。毎年のように変わる新たなルールへの対応は、いわゆる「甲子園戦法」も変えていく。

 今後は9回制から7イニング制への変更も議論されている。スピードアップのために「ピッチクロック」の導入も時間の問題だ。容姿で言えば、丸坊主姿の学校が減り、長髪を認めるスタイルが増えた。

 仙台育英の須江航監督が「高校生、最高の夜更かし」と言うナイター開催も見慣れた光景になった。女性審判も登場した。

 変わりゆく甲子園。順調なら22日に決勝戦が行われる。

 さて、新時代の王者にはどの学校が輝くのだろうか。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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