打席では力を抜き、インパクトの瞬間に力を込める。走塁では鍛え上げたフィジカルを生かし、一瞬の判断で次の塁を奪う。4年目の林琢真が、シーズン終盤の勝負どころで存在感を増している。
その背景には、打撃フォームの修正と、フィジカル面で取り組んできた瞬発力の強化がある。
「力を抜いて、インパクトの瞬間に力を入れるためですね」。打撃フォームを変えたのは、ホームランを放った9月14日の巨人戦の少し前。
構えから無駄な力みを徹底的に削ぎ落とし、インパクトの一瞬にすべてのエネルギーを集約させる。試行錯誤の末にたどり着いた新フォームについて、林は「悪くないんじゃないかなって思ってますけど」と控えめながら確かな手応えを口にする。
そして、もう一つの武器である「足」にもこだわりがある。
ウエイトトレーニングによって増した筋肉量。しかしそれはスピードの低下につながることもある。だがその課題にも向き合いながら、走力をキープさせる。
「瞬発力系のトレーニングを入れているんで。それの成果かなと思います」
打撃では「脱力」によってインパクトの最大化を狙い、フィジカル面では「瞬発力」を磨く。日々の小さな修正を積み重ねてきた成果が、勝負どころでの一打と、一瞬を逃さない走塁につながっている。
その成果が23日の中日戦で鮮明に表れた。1敗も許されないシーズン終盤の一戦で、チームを勝利に導くワンポイントとなったのは、林のバットと足だった。
右中間を深々と破るタイムリー三塁打を放ち同点とすると、続く戸柱恭孝のセカンドゴロでは果敢なギャンブルスタート。本塁へヘッドスライディングで飛び込み、喉から手が出るほど欲しかった勝ち越し点をもぎ取った。
そして、泥にまみれながら決死のホームインを見せた走塁には、相川亮二監督も「走者もチームとして価値のあるプレーだった」と賛辞を送った。
さらに、後続で食らいついて内野へ転がした戸柱も、林の判断と走力を信頼していた。
「駒沢大学の後輩の林がすごいスタートを切っていたので、転がせば何とかなると思っていました」
林自身が磨いてきた瞬発力が、泥臭く1点をもぎ取る大きな武器となった。
そして、打って、走るだけではない。守備でも目の前の白球に食らいつき、最後までアウトを奪うことに執念を燃やす。序盤の1,2回には併殺に絡むプレーでピンチを脱し、その後もジャンピングスローや、不規則な変化の打球にも対応。計9回の守備機会をそつなくこなした。「取れるアウトしっかり取ろうっていう、自分のところに飛んできたやつは全部アウトにしようっていう気持ちではいますね」
フォームを変え、肉体を変え、それによって生まれた小さな変化を、勝負どころのプレーへとつなげていく背番号00。「とにかく勝つという気持ちだけ」。言葉通りの執念が、終盤戦の苦しい戦いを突破する原動力となる。
取材・文 / 萩原孝弘