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野球現場における熱中症対策の実例── 野球でも熱中症は抑えられる
9月に入ったとはいえ、昔と違って厳しい暑さが続くこの時期。野球を頑張る子ども達に対しては、まだまだ熱中症への注意が必要です。今回は『熱中症を科学する スポーツの現場から見た、選手を守る最新の暑熱対策』(竹書房)から、「熱中症になりやすい人の特徴」についての箇所を抜粋して紹介します。
野球は熱中症の発生数が最も多いスポーツとなっています。夏の甲子園などでも、試合中に足が攣ってしまう選手をよく見かけるようになりました。
足が攣ったときの現場の対応として、コールドスプレーを患部に吹きかけているシーンもよく目にしますが、これは熱中症のことをよく理解していない対応だと言わざるを得ません。足が攣ったときの最善の対応は、攣った筋肉をしっかりとストレッチしてあげることと、神経伝達トラブルを鎮静化させるために、攣った筋肉を氷で冷却することです(詳細は次項を参照)。また、筋肉が伸びたり縮んだりするためには、ミネラルが必要不可欠なので、ミネラルをしっかり摂取することも重要です。筋肉が収縮するためにはナトリウムとカルシウムが、筋肉を緩ませるにはマグネシウムがそれぞれ必要となります。そして、筋肉自体の水分を保つためにはカリウムが必要です。
筋肉が攣るという症状は、これらのミネラルがバランスよく備わっていないことで表れます。ですから、足が攣らないようにするためには、筋肉が縮んだり伸びたりするために必要なミネラルを十分に摂取するよう心がけましょう。
スポーツ選手は体を大きくするためのタンパク質と、パフォーマンスを発揮するためのエネルギーとなる糖質を摂取することが大切です。それを理解している人は多いのですが、先述したミネラルの必要性に関してはまだまだ広く認知されていないのが実状です。
札幌日大高校野球部のトレーナーの方に話を伺ったところ、普段からミネラルの補給に意識的に取り組んでいるため、近年は足が攣ったり熱中症になったりする選手をひとりも出していないそうです。
そのトレーナーの方は、日々の食事から栄養面を考えて指導しているのに加え、高濃度のミネラルを含んでいるタブレット(いわゆる塩分タブレットよりも高濃度のミネラルを配合)などを試合前に選手たちに摂取させていました。もちろん、試合中の水分補給や身体冷却の指導、さらには暑さに慣れる対策(暑熱順化)もしっかり行われていました。
慶應高校の医科学サポートをしているスタッフの方も、札幌日大と同じような対策を施していて、熱中症の発生を抑えています。このように、スポーツ医科学という知見を正しく理解し、それを最適な形で取り入れることができれば、野球でも熱中症は抑えることができるのです。
日本スポーツ振興センターの発表資料を見ると、野球の熱中症による死亡事故の原因の8割は、試合中ではなく練習中に起こっています。つまり、野球で熱中症になったというよりも、指導者の知識不足による過度なトレーニング(炎天下での激しいラントレーニングなど)が原因となっているのです。
私がアスリートのみなさんにおすすめしているひとつのアイテムが、「ORS Sports」などの可溶性のタブレットです(錠剤を水とともに摂取するタイプ)。このタブレットにはナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムなどのミネラルがバランスよく含まれており、いまのところ、これを飲んだ選手は私の前ではひとりも熱中症の症状になったことがありません(12錠で2000円程度。webでも購入できます)。
飲み物に関しては、第5章の「水分補給とサプリメントを科学する」で詳しくお話しますが、熱中症対策にはスポーツドリンクよりも経口補水液のほうがおすすめです。
<まとめ>
足攣りを解消するには、十分にミネラルを摂取することが重要です。高校野球の現場では、水分だけでなくミネラルの補給も徹底し、熱中症や足攣りを防いでいるチームもあります。野球の熱中症事故の多くは、暑熱対策が不十分な状態での過度なトレーニングが原因です。
『熱中症を科学する スポーツの現場から見た、選手を守る最新の暑熱対策』(2025/5/29 発売)
笠原政志 (著), 清水伸子 (著)
竹書房

