DeNA・小田康一郎(撮影=萩原孝弘)

 酷暑真っ只中の7月、DeNAドラフト1位ルーキー・小田康一郎はファーム月間MVPを獲得した。打率も.317と高い数字を残しつつ、得点圏打率.333とチャンスでの勝負強さも発揮。また出塁率.427と卓越した選球眼も光った。

 5月半ばまでは打率2割にも満たなかった。しかし春先に抱えていた課題を一つひとつクリアし、グラウンド上で躍動するその姿の裏には、フィジカルの強化と類稀なる観察眼のブラッシュアップがあった。

◆ 村田監督も手応え

 「一年目としては、いまのところいい形で育ってきていると思いますよ」。

 ファームを率いる村田修一・二軍監督は、小田の成長に目を細める。

「使いながら練習させて育てる」とのプランニング通り、若き才能の育成に強く寄り添っている指揮官は、春先に指摘されていたフィジカル面の課題についても「スイングスピードも上がってきましたし、打球速度もしっかり上がってきている。必然的に長打も出てきていますね」と評価する。

 振る力は努力で手に入る。しかし村田監督が特に評価しているポイントは、小田の持つ『考える能力』を元にした『野球に対する感性』。

 「野球小僧じゃないと出てこない感性ですね。守りでも走塁でも。へなちょこな空振りするけど、最後は逆方向にパチンって打つことができるんです。どういう意識でやってんのって聞いたら、『こういうイメージ、こういうニュアンスでやってます』というのが自分の言葉で出てくるんです」

 野球が好き、上手くなりたいをベースに、走攻守すべてで思考を巡らせる。

「データをしっかり頭に入れながら、自分の長所との兼ね合いを見ながら、ここは行っていいところ、ここはちょっと制限するところっていうのが、彼の中ではあると思います。それを持っている人間がやっぱ早く伸びてくる」

 ファームの中でも「状況判断を、今1番多分できる子かな」と絶賛する村田監督。その真骨頂が現れたのが、8月9日の満塁ホームランの場面だった。

 苦手とされていた左投手からのスライダーを完璧に捉えた一撃はライトネットに突き刺さった。

 「スライダーを狙ってたと言ってました。あのケースは前のバッターがまっすぐでデッドボールになっているから、絶対真っすぐはない。だからスライダーだって言い聞かせて打席に入りましたって言ってました。その辺の応用能力は高いですね。打席でそういうのを狙えるのは、やっぱり考える能力。またその勇気があるというのは、すごく次につながること。狙う勇気というのは、思ってていてもできない人がいっぱいいますからね」

 狙い球を絞り、一撃で捉える。それは鋭い観察眼と、自分を信じて振り抜く勇気の賜物だった。

◆ 噛み合った「考える力」と「振り切る力」

 指揮官からの高い評価を受けた観察眼。その武器について当の小田自身はどう感じているのか。

 「そこは大学時代に1番成長したところかなとは思っていました。でも、プロ入ってその考え方がどこまで通用するかはわからなかったので、村田さんから評価していただいてるっていうのは初めて知りましたし、嬉しいですね」

 少し口角を上げつつ、その取り組みを明かす。

 「1試合通して、常にどのバッターも観察するようにしています。味方のバッターに対し、どんな配球をするのか。例えばランナーありなのかなしなのか、得点圏なのかそうじゃないのか、点差もそうですし、いろんな状況をこう見ながら、試合を観察します」

 その結果につながった満塁ホームランの打席についても、その言葉からは、単なる直感ではない、深い洞察力と観察眼が垣間見える。

 「ホームランのときは、ピッチャーが交代して前のバッター、2、3人見られたんですけど、得点圏っていうのもあって、全打者に変化球で入っていたんです。さらに左対左の勝負でスライダーは僕が苦手っていうのもおそらくデータ持ってるでしょうし、スライダーが得意なピッチャーっていうのもわかっていたんで、可能性が1番高いのはそれかなと思いながら打席に入りました」

 ピッチャーの特性、状況、前の打者の配球。まるでチェスのように先を読み、結果につなげた。

 この観察眼は、打撃だけでなく守備にも活かされている。

「特にセカンドを守るときは、バッターの気持ちになりながらやっています。今のスイングはどういう球を狙った上でのスイングだったのか、仮に違う変化球が来た時に、どういうスイングになって凡打になるかっていうのを、あらかじめ先読みしながらポジショニングを取るようにはしてます」

 それは16を数える盗塁にも現れるように、野球に必要不可欠なポイントをまとめ、点と点を線にする能力に他ならない。

 だが、プロの壁を乗り越えるために必要だったのは「考える力」だけではなかった。前半戦の苦しい時期を打破するきっかけとなったのは、鈴木尚典コーチの助言による体力強化だった。

 「ウエイトもそうですし、尚典さんからずっとマスコットバットを振れと言われました。振る力をつけることもできるからって言われてて、今でも変わらずに毎日振ってます。それが本当に活きてきているなと思います。同じ左バッターで何度も3割以上打たれ、首位打者も獲られている方ですから、この人の言ってることは絶対正しいんだろうなと信じれた部分もありました。尚典さんだからこそすっと入ってきて、自分でもかなり変わったかなと思います」

 プロの強くて速いボールに対応するための身体を作り上げ、「考える力」と「振り切る力」が噛み合ったことで、パフォーマンスは一気に跳ね上がった。

「考える力もプロに入ってきて、いろんな人の話を聞いてさらに成長したところもあります。まだまだそのアマチュアの僕の考え方では足りなかったのも、前半戦のその苦しんだ時期の原因でもあると思います。いろんなその要因、フィジカルも、考える力も、色々うまく噛み合ってきたからこそ、今ちょっとずつ上がってきてるなって思います」

 一軍での初ヒット、そして定着へ向けて、ルーキーの眼差しはまっすぐ未来を見据えている。

 「でも今は上で先輩方が活躍されてるので、僕は勉強しながら上でも打てるようにこのままやっていきたいなと思っています。頑張ります!」

 横須賀の地で確実にプロの階段を上る小田康一郎。思考を重ね、身体を鍛え、着実に歩を進める背番号の先には、きっと横浜の未来を背負う主砲としての景色が広がっているはずだ。

 
取材・文 / 萩原孝弘

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この記事を書いたのは

萩原孝弘

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