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熱中症は予防でゼロにできる唯一の疾患

9月に入ったとはいえ、昔と違って厳しい暑さが続くこの時期。野球を頑張る子ども達に対しては、まだまだ熱中症への注意が必要です。今回は『熱中症を科学する スポーツの現場から見た、選手を守る最新の暑熱対策』(竹書房)から、一部を抜粋して紹介します。


 アメリカや中南米、あるいはオーストラリアといった海外の野球界では、「野球で熱中症が起こることはない」といわれています。高温多湿の日本とは環境面で異なる部分はありますが、日本で熱中症が多発するのは文化的な違いも大きく関与していると私は考えています。

 日本と海外の野球では、練習内容、練習時間などが大きく異なります(日本は長時間の練習、激しいトレーニングなどをする傾向が強い)。また、日本では練習中もユニフォームをちゃんと着て練習しますが、海外では場合によっては短パンで練習したりもしています(熱を体内にこもらせない手段を用いている)。練習中もこまめに休憩を挟み、水分補給もしっかりしているので、海外では熱中症になる選手が少ないのです。

 私は「熱中症は予防できる唯一の疾患である」と考えています。運動中の心停止は突然に起こるものなので、予測が大変難しく予防の限界はあります。しかし、熱中症にはなりやすい環境や原因があり、医科学分野での研究も進み、ほとんどの熱中症は防げる状況になってきました。指導者や保護者が気をつけてやっていけば、熱中症は防ぐことができるのです。保健行動科学という学問があります。これは、選手たちを指導する立場の人間や、上の立場にある人間が適切なコーチングを行えば、その実演者(選手)も知識が増えて具体的な行動に移せるようになるということを追究している学問です。

 私が勤務する国際武道大学で当時指導していた大学院生(現在は高等学校教諭で野球部の指導者)が、高校野球の指導者と選手を対象に熱中症に関する予防行動のアンケートを実施しました(指導者は約120人、選手は約1600人)。その結果、指導者の熱中症に対する知識レベルが高いと、選手の知識レベルも高くなることがわかりました(そのことに関しては、第2章の「戦略・戦術的熱中症対策を科学する」で詳しく述べます)。

 本章ですでにお話ししましたが、熱中症になる内的要因と外的要因を十分に理解していれば、熱中症は防ぐことができます。「熱中症は予防できる唯一の疾患」です。日本のスポーツシーンのみならず、労働の現場などの熱中症をゼロにするには、みなさんの熱中症に対する知識レベルを高くすることが最も重要なのです。

<まとめ>
 海外の野球界と比べ、日本では環境や文化的な違い(長時間練習や服装など)から熱中症発生率が高くなっています。しかし、熱中症は予防可能な疾患であり、指導者の知識が選手の予防意識向上にもつながります。熱中症を防ぐには、正しい知識を広めることが重要です。

詳しくはこちらから

『熱中症を科学する スポーツの現場から見た、選手を守る最新の暑熱対策』(2025/5/29 発売)
笠原政志 (著), 清水伸子 (著)
竹書房