憧れの地に立ったDeNAの若き左腕
3月27日、その男は“憧れの地”である広島・マツダスタジアムのマウンドに立った。
DeNAの若き左腕・石田健大。広島工業高時代から憧れ、そして目指していた場所が、マツダスタジアムのマウンドだった。
2016年シーズンの開幕第3戦目。石田はプロ入り2年目にして初の凱旋登板を果たす。
「本当に思い入れがあるマウンドです」と語ったように、1球1球魂を込めたピッチングを披露。ピンチを迎えても低めを丁寧につく投球で、広島打線を抑え込んで行った。
6回一死まで0行進を続け、味方打線も女房役・戸柱のプロ1号などで3点をリード。勝ち投手の権利を持ってマウンドを降りる。
しかし、マウンドを譲った2番手の長田が大乱調。押し出し四球にタイムリーを浴びるなど、あっという間に同点に追いつかれてしまう。7回には逆転も許し、チームは敗戦。初めてのマツダスタジアムは、ほろ苦い思い出となった。
いつかマツダでリベンジを...
広島工高出身と言えば、広島の新井貴浩が第一人者だろう。年の離れた先輩・後輩となるが、この日は“直接対決”があり、石田が“大先輩”を完封してみせた。
互いの意地が垣間見えたのが2回。先頭打者の新井に対して、真っ向勝負を挑んだ石田。フルカウントまでもつれた見ごたえのある対決だったが、最後は低めのストレートがズバッと決まり、見事に見逃しの三振に斬ってみせた。
憧れの地で、憧れの大先輩との対戦を果たした石田だが、「僕はかなり意識していますが、新井さんはそんなに意識していないと思います」と笑顔で話した。
ルーキイヤーの昨年は、大学時代から抱えた左肩痛で出遅れ、一軍ローテに入ったのは夏場以降のこと。一軍ではすでに同期入団の山崎康晃が頭角を現していた。石田は「自分に焦るなと、言い聞かせてやっていました」と当時を振り返る。
オフには三浦大輔や三嶋一輝、山崎康晃に交じって厚木市内で合同自主トレを敢行。その後は沖縄に飛び、バッテリーを組んだ嶺井博希と合流しての第2次自主トレ。充実したオフを過ごした。
プロ初となったオフで、一回り大きくなった石田。今シーズンは一緒に汗を流してくれた先輩たちの思いも背負い、マウンドに上がる。
出鼻こそくじかれたが、凱旋登板の機会はきっとまた訪れるだろう。いつかマツダスタジアムのマウンドで“リベンジ”を果たすのを楽しみにしながら、石田の活躍を見ていきたい。