今季の阪神は8人もの捕手を起用
阪神のドラフト2位ルーキー・坂本誠志郎が正捕手争いに食い込んできた。巧みなインサイドワークを買われ、能見篤史の登板試合を中心にスタメンマスクを任されることが増えている。
近年の阪神の正捕手というと、矢野燿大をはじめ、野口寿浩、城島健司、藤井彰人、鶴岡一成など、長く“外様”に頼ってきたポジション。変わったかに思えたのは、2014年の梅野隆太郎の出現だった。ルーキーながら92試合に出場し、打率は.197だったものの7本塁打21打点と長打力で魅せ、「ついに生え抜き正捕手が現れた」と虎党を喜ばせたものだ。
ところが、その梅野は攻守ともに伸び悩みを指摘され、今季、彗星のように現れた原口文仁にすっかり居場所を奪われてしまった。現状では、その原口が正捕手に最も近い位置にいるのは間違いない。ただ、過去には腰を痛めて一度は自由契約になった経緯もある。最近では一塁手としての起用も増えており、長い目で見れば盤石とは言えないのかもしれない。
また、「超変革」のスローガンのもと、若手、ベテランを問わずチャンスを与えるのが金本知憲監督の流儀。事実、今季はここまで、原口、梅野、坂本のほか、鶴岡、岡崎太一、清水誉、小宮山慎二、さらには今成亮太と、実に8人が捕手として起用されている。ポジションを固定できていないことには賛否両論あるが、これは以前の阪神にはなかった姿勢であり、当の選手たちのモチベーションは間違いなく上がっているはずだ。
巧みなインサイドワークで正捕手争いに食い込む
1年目の坂本はここまで18試合でスタメン出場。9月16日のDeNA戦では秋山拓巳と2度目のバッテリーを組み、5回2/3を1失点にまとめる好リード。秋山を4年ぶりの勝利に導いた。秋山のほか、藤浪晋太郎、同じくルーキーの青柳晃洋など、能見以外の投手と組むケースも増えはじめている。
坂本は兵庫県養父市出身。強豪・履正社高から明治大に進学し、4年時には大学日本代表の主将も務めるなど、キャプテンシーの持ち主としても評価されている。決して体格や身体能力に恵まれているわけではないが、「率先垂範」を座右の銘に掲げ、チームを率いる意識は人一倍強く、捕手向きの性格だ。
インサイドワークを評価される反面、課題は打撃にある。8月24日のDeNA戦ではプロ1号本塁打を記録したが、現在打率は.200にとどまっている。原口、梅野らから正捕手の座を奪うには、打撃力の向上は必須条件になるだろう。
若手捕手が一気に台頭しはじめた阪神。チーム内でうまく競争させて全体の底上げができれば、捕手不足に泣いていたチームから捕手王国に変貌……という可能性も十分にある。坂本の今後の成長も、そのひとつの鍵となる。
※数字は2016年9月27日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)