DeNA・庄司陽斗(撮影=萩原孝弘)

 2026年、庄司陽斗から放たれるボールには、明らかな変化が見て取れる。昨シーズンと比較してアベレージで約5キロ向上した球速。最速は150キロオーバーと、唸る。しかしその進化は“結果であってゴール”ではない。

 「スピードがあって損することはないので、もちろんあってもいいですけど、でも別にスピードがあったからいいかって言ったら、そんなこともない。ちゃんとコーナーを突いてキュッっと刺すピッチャーももちろんいますし、やっぱり一概にスピードがあったから100%アウトを取れるかって言われたら、そんなことはないと思うので。その中でどうバッターを抑えるかっていうところが、やっぱり1番大事なところだと思う」

 アップしたスピードは、あくまでも打者を抑えるための準備の副産物に過ぎないと分析している。

◆ 100パーセントを出すための「過程」

 昨年3月には支配下登録をゲットしながら、結果的に一軍のマウンドに上がることはなかった。オフには再び育成契約に切り替えられた左腕は、忸怩たる思いを胸に抱きながらも「昨年は考えすぎてしまった」との反省をエネルギーに変えている。

 今季ファームでの好投を支えている土台は、地道な作業の繰り返しで培われた。

 「色々トレーニングしてきた中でいいものが見つかったところはあるかなっていう感じです。それを継続しながら、もう少し何があってるのかとかっていうのを探っていけたらなっていうとこなんで。100パーセントになることは多分なかなかないかなってところなので、もっともっと追い求めていけないとこでもあります」

 動作解析もした。股関節の可動域を広げ、メディシンボールを投げ、自分の中にしっくりくる感覚を丁寧に手繰り寄せてきた。ただ完璧などない。だからこそ、その日その日のベストを尽くすための準備を続けている。

◆ 自分との戦いからの脱却

 昨年はファームで3勝8敗。支配下の期待には応えられなかった。苦い経験を経て、今年はひとつの道しるべに辿り着いた。

 「フォームのこととか、今日調子悪いなとかいいなとか、そういうところにベクトルが向いてくると、やっぱどうしてもバッターと対戦するっていうのは難しくなると思いました」

 細かい調整は、練習やトレーニング、ブルペンの段階で終わらせる。マウンドに上がれば、あとは自分の感覚で打者をねじ伏せるだけ。

 「自分と戦っていると、いいボールが投げれててもなんか打たれてしまうのかなっていう感じが自分の中にあるんです。ゲーム中に考えるっていうのはあんまり自分はしたくないので、本当にやっぱりバッターと対戦するところを1番マウンドでやらなきゃいけないこと。最終的にはほんとに、自分の中の感覚が良くなるかどうかってところだとは思うので」

 自分が気持ちよく投げる。ピッチャーとしての“仕事の原点”に立ち返ることで、光が刺してきている。

◆ 名伯楽も太鼓判

 「彼は寡黙に、黙々とやります。彼ほどたくましい選手はいない」と入来祐作二軍チーフ投手コーチは努力家の一面に相好を崩す。

 「一年目は右も左もわからないまま、無我夢中でやっていたのでしょうけれども、昨年つまずいて。つまずくと一回はわけわからなくなりますから。そこから自分の中のポイントが出来かけているだろうと僕は思っています。苦労して掴んだものはなかなか忘れませんからね」。苦心した昨年も、努力でプラスに変えられると確信する。

 その結果が今にある。「いま多分プロに入ってから一番いいんじゃないですか。本当に一生懸命やるので、絶対キチンと実を結ぶときがやってきますよ」

 幾人もの一流選手を育てた名伯楽だけに、その言葉には説得力がある。

◆ 支配下の先に見つめる、師の教え

 育成選手として再出発した庄司にとって、二桁背番号はもちろん重要。だが心は師と仰ぐ今永昇太(現・カブス)の言葉が占めている。

 「今永さんにも支配下は通り道だと思って、1軍で活躍するところを目指してやっていかないとって言葉をいいただきました。もちろん支配下を目指さないとですので、そこにはやっぱり目は行きます。でもやっぱり自分がやるべきことをしっかりまずやるっていうところをやっていきたい。ここからです。まだまだ」

 支配下への復帰は、あくまで1軍で通用するためのプロセスに過ぎない。「常に何かわからない状況の中で、自分のいいものを掴んでいく方が自分には合ってるのかなって。実際にはわからないところですけど、でもなんかそういうのもあるのかなって」。自分だけの正解を求める思考も”投げる哲学者”の異名を取る、師匠のそれとも重なる部分がある。

 熟考し、探り、迷いを断ち切り、目の前の打者を打ち取る。そのシンプルな積み重ねの先に、“ハマのウッディ”の道が拓ける。

取材・文=萩原孝弘

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この記事を書いたのは

萩原孝弘

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