ソフトバンク・小久保監督 (C)Kyodo News

白球つれづれ2025・第11回

 大谷翔平の凱旋旋風が吹き荒れている。

 15日に東京ドームで行われた巨人対ドジャースの視聴率が明らかになった。

 日本テレビ系列で放送された同カードは22.9%を記録。(関東地区、ビデオリサーチ調べ)ワールドシリーズチャンピオンチームがシカゴ・カフスとのメジャー開幕戦(18、19日)を前にしたプレシーズンゲームながら、大谷がいきなり怪物弾を放つなど見どころ満載だった。それにしても近年の野球の地上波放送は2ケタ台に乗るのが稀だから、けた外れの破壊力をここでも見せた格好だ。

 メジャーに注目が集まっている裏で、日本の野球も28日の開幕までカウントダウンが始まっている。この時期になると評論家諸氏による順位予想が話題を呼ぶ。

 こうした中で、注目されたのが14~16日までペイペイドームで行われたソフトバンク対日本ハム戦である。

 結果は1勝1敗1分けで互角に映るが、チームの内情は順調な仕上がりを見せる日本ハムに対して、“火の車”のソフトバンクと、調整度に大きな差があるのが現状だ。

 象徴的だったのが第3戦だった。ソフトバンクの先発はメジャー帰国後に古巣の日本ハムに戻らずライバル球団に移籍した上沢直之。シーズンオフには新庄剛志監督が、その進路選択に疑問を呈するなど、ちょっとした因縁の関係にも発展していた。

 その上沢を初回から攻め立てた新庄ハムは、5回までに9安打5得点。しかも塁上の走者は上沢のクイック投球に弱点を見出すと、走り放題。重盗を含めた4盗塁でも揺さぶりをかけて圧勝だから、ソフトバンクには大きなショックが残った。

 17日現在、オープン戦の順位成績を見ると2位の日本ハムと、3位のソフトバンク。共に実力は伯仲して、パリーグの優勝候補に挙げられている。しかし、連日の誤算続きで頭が痛いのは小久保裕紀監督だ。

 直近の1週間だけでも栗原陵矢選手が、守備中にフェンスに激突して担架で運ばれる(診断の結果は右脇腹痛)、“ポスト甲斐”の1番手と目される海野隆司捕手は走塁中に右太腿を痛めて途中交代と故障者が続出している。いずれも開幕出場は微妙な状態だが、この時期の故障は調整のやり直しを意味する。もし、開幕アウトとなれば、チームにとって大きな打撃となる。

 今年のキャンプから「負の連鎖」が続いている。

 2月4日に内野のユーティリティープレーヤー・川瀬晃選手が右膝痛でリタイアすると、その後、スチュワート・ジュニア投手が右脇腹痛、新加入の上茶谷大河投手も右肘のクリーニング手術。さらに守備の要である今宮健太選手が左ふくらはぎ痛でキャンプを離脱(現在はファームで調整中)と故障者は数えきれない。

 甲斐拓也の巨人移籍で穴の開いた捕手陣は海野の離脱が長引けば影響は大きいが、もっと心配なのは内野陣だ。

 現状は三塁・栗原、遊撃・今宮の開幕出場が危ぶまれ、二塁も固定できていない。しかも小久保監督の構想では「キーマン」として5番に起用予定の栗原がいなければ、自慢の強力打線にも陰りが射す。これだけの不安材料が出ては、リーグ連覇に黄信号のピンチだろう。

 キャンプ序盤の故障は、直しながら調整も可能だが、開幕まで秒読み段階に来てのけがはチーム構想を大幅に狂わせる。

 ソフトバンクに限らず、各チームとも故障者による誤算はつきもの。特に気になるのはオリックス、ヤクルト、西武の3チームだ。

 オリックスでは森友哉選手が右内腹斜筋損傷なら、山下舜平大投手は腰痛、宇田川優希、吉田輝星投手ら四番からエースに中継ぎ投手までチームの骨格を成す中心戦力が離脱中。ヤクルトでは主将の山田哲人(左手首腱の脱臼)、3冠王・村上宗隆選手(右脇腹痛)の二枚看板が戦列を離れている。

 昨年のパ・リーグ新人王・武内夏暉投手が左肘靱帯損傷で出遅れる西武は、ここへ来て源田壮亮選手が左脚肉離れ、四番候補のレアンドロ・セデーニョと主軸が戦列を離れている。

 新シーズンに向けて、各チームとも補強をしていく。これが戦力の「足し算」とすれば、故障者や期待するほど成長が見られない選手が「引き算」となる。差し引いて、どんな陣容で長丁場を戦うのか。

 チームの底力が問われる開幕まで、間もなくである。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

この記事を書いたのは

荒川和夫

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