暗黒時代からはじまった「死のロード」
セ・リーグ首位をひた走る広島カープに8.5ゲーム差をつけられている阪神タイガース。金本知憲監督が標榜する「超変革」2年目のシーズンは、2005年以来遠ざかっているリーグ優勝に向けた大事なシーズンだ。その一方ですぐ後ろにはDeNAも迫っている。
阪神はチームの本拠地である甲子園球場が高校球児たちの祭典、「全国高等学校野球選手権大会」の舞台となるため、甲子園大会がはじまるとビジターゲームが中心となり、大会が閉幕するまで甲子園球場を使用できなくなる。そのため、1990年代半ばの暗黒期を知るファンから、通称「死のロード」と呼ばれ、チームが調子を崩す期間とされてきた。
しかし、甲子園大会開催中に阪神のホームゲームがないわけではない。この期間中の阪神はホームゲームに京セラドーム大阪を使用するようになる。野外の甲子園球場よりも京セラドーム大阪は空調が利いてプレーしやすい分、むしろ好成績を残しているのでは? という気さえする。
10年間の通算成績は、まさかの勝ち越し!
そこで、過去10年の甲子園大会開催期間中の阪神の成績を調べてみると、過去10年の「死のロード」期間は以下のような成績だった。
【2007年】
8月8日~8月22日(優勝:佐賀北高)
<期間中の阪神成績>
21試合12勝8敗1分 勝率.600
※シーズン全体勝率.529(3位)
【2008年】
8月2日~8月18日(優勝:大阪桐蔭高)
<期間中の阪神成績>
14試合7勝7敗 勝率.500
※シーズン全体勝率.582(2位)
【2009年】
8月8日~8月24日(優勝:中京大中京高)
<期間中の阪神成績>
21試合11勝10敗 勝率.523
※シーズン全体勝率.479(4位)
【2010年】
8月7日~8月21日(優勝:興南高)
<期間中の阪神成績>
23試合10勝13敗 勝率.434
※シーズン全体勝率.553(2位)
【2011年】
8月6日~8月20日(優勝:日大三高)
<期間中の阪神成績>
20試合10勝8敗2分 勝率.555
※シーズン全体勝率.493(4位)
【2012年】
8月8日~8月23日(優勝:大阪桐蔭高)
<期間中の阪神成績>
24試合8勝13敗3分 勝率.380
※シーズン全体勝率.423(5位)
【2013年】
8月8日~8月22日(優勝:前橋育英高)
<期間中の阪神成績>
23試合14勝9敗 勝率.609
※シーズン全体勝率.521(2位)
【2014年】
8月11日~8月25日(優勝:大阪桐蔭高)
<期間中の阪神成績>
21試合11勝10敗 勝率.524
※シーズン全体勝率.524(2位)リーグ優勝
【2015年】
8月6日~8月20日(優勝:東海大相模高)
<期間中の阪神成績>
20試合12勝8敗 勝率.600
※シーズン全体勝率.496(3位)
【2016年】
8月7日~8月21日(優勝:作新学院高)
<期間中の阪神成績>
20試合11勝9敗 勝率.550
※シーズン全体勝率.451(4位)
10年間トータルで見ると207戦で106勝95敗6分。勝率は.527とむしろ「死のロード」期間の方が勝てているくらい。2位に最大13ゲーム差をつけ、7月22日に優勝マジックが点灯したにもかかわらず、夏場から失速して歴史的なV逸を記録した2008年にしても、期間中の成績は勝率5割をキープしていた。
ちなみに、京セラドーム大阪で行われるホームゲームの成績は10年間で32勝27敗。2013年以降に限れば18勝5敗にまで跳ね上がる。この数字を見る限り、今年の阪神はロード期間にいかに勝ち星を積み重ねられるかが逆転優勝のカギを握ると言えるだろう。
今年の高校野球の開幕は8月8日だったが、阪神が最後に甲子園で試合をしたのは7月27日のDeNA戦。その後は、9勝5敗1分けで徐々に差を縮めてきた。ちなみに、8月4日から同6日まで京セラドームで行われたヤクルト戦では阪神が3連勝を飾っている。
おもしろいのが、甲子園大会で東側の学校が勝ち進んだ年は阪神も好成績を残し、地元関西圏の大阪桐蔭が優勝した年は2014年を除いて負け越すか、勝率5割ジャストかという成績に終わっているということ。
特に大阪桐蔭が藤浪晋太郎を擁して優勝した2012年、阪神は8月11日の時点で8連敗を喫して自力優勝どころかCSの自力進出すら消滅するという惨状を経験して、シーズン順位は5位にまで沈んでいる。
奇妙な反比例を見せる阪神と大阪桐蔭の関係など、今年も見どころ満載となる夏の甲子園大会、並びにプロ野球ペナントレースから目が離せない。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)