コラム 2018.07.19. 18:30

夏の高校野球、異常な暑さで考えられる対策とは…?

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異常な暑さのなかで…

異常なまでの猛暑


 今年の夏も、全国各地で猛暑が続いている。

 18日には岐阜県多治見市で40度を超える気温が計測され、全国で一日数千人規模の熱中症患者が搬送されるなど、猛烈な暑さから不要な外出は控えるような呼びかけまでなされている。

 今年の夏が異常なのか、それとも今年のような気象がスタンダードになってしまったのか…。もし後者なら、日本の夏の風物詩の一つ「夏の高校野球」にも対策が必要だろう。7月は各地で予選が行われており、炎天下でプレーする選手だけでなく、観客が熱中症で搬送されるケースも少なくない。

 熱中症対策として、まずはこまめな水分・塩分補給や睡眠の質向上、栄養管理などが挙げられる。しかし、これらの対策はあくまでも個人(学校)レベルでのこと。大会を運営する高野連にも、夏の暑さに対する抜本的な改革が今後求められていくだろう。

 球児たちにとって「甲子園球場」は聖地だ。特に夏の全国大会は、日本の夏に欠かせない一大イベントになっている。クーラーが効いた室内で観戦するにはこの上ないエンターテインメントだが、プレーする球児たちは命懸けだ。強豪校は日々の練習などである程度の暑さには耐性ができているだろう。それでも、真夏に日陰のないグラウンドで2時間以上もプレーを続ければ、いつ倒れてもおかしくない。


次の歴史をつくっていくためにも…


 対策として挙げられるのが、開催場所の変更だ。甲子園から近いところでいえば、京セラドーム大阪の名前が挙がる。文字通りドーム球場のため、試合中は暑さとは無縁。台風などで交通機関が乱れない限り、天候による試合中止などの心配もいらないというメリットもある。

 ただし、球児たちにとっては「甲子園」でプレーすることが何よりの目標であることがほとんどだろう。甲子園球場から京セラドームに場所をすげ替えることへの反発は少なくないはずだ。

 そこで、大会の“一部”を京セラドームに移行するというのはどうだろうか。たとえば、全ての出場校にとっての初戦はかならず甲子園で行い、各チームの2試合目以降はドームで行うという案だ。準決勝と決勝は再び甲子園に戻してもいいだろう。

 さらに、甲子園球場で試合を行う場合は、その時間帯を制限することも考えるべきかもしれない。たとえば、1試合目を午前7時半に開始。午前中に1~2試合を行い、夕方(午後4時)以降に1~2試合を行う。最も暑くなる正午から午後4時頃までは試合を行わない。暑さの対策という意味では最も有効的ではないだろうか。日程にある程度のしわ寄せがいくことはあるかもしれないが、その分はドームで1日5試合行うなど帳尻を合わせればいい。


 しかし、最も大きな問題は7月を中心に全国各地で行われる予選の開催だ。地方にはドーム球場はおろか、照明設備がない球場も少なくない。そこは、開幕時期の前倒しを提案したい。

 すでに沖縄県などは6月中旬ごろから週末を中心に早めの開幕日を設定しているが、他の地区も春季大会が終了してから間を空けずに開幕とするのはどうか。6月いっぱいは週末を中心に開催し、暑くなる7月は早朝と夕方以降のみに開催するといった流れだ。

 今年で100回目を迎える伝統ある夏の甲子園大会。だからこそ開催場所、開催時期、試合時間などの見直すべき点をしっかりと見直し、今後に繋げていくことが重要なのではないか。

 “聖地”で死者が出てからでは遅い――。球児たちにとってより健全な運営に期待したい。


文=八木遊(やぎ・ゆう)


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