コラム

今やメジャーでは当たり前に “守備シフト”の実態は…

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極端な守備シフト

守備位置が自由すぎる?


 メジャーリーグの2018年は、レッドソックスが5年ぶりのワールドチャンピオンに輝いて幕を閉じた。日本人としては、今季から海を渡った大谷翔平(エンゼルス)がメジャーの舞台でも“二刀流”の活躍を見せ、ア・リーグ新人王を受賞。日本人17年ぶりの快挙に沸いた。

 大きく取り上げられた大谷の活躍によって、今年から本格的にメジャーリーグの試合を見始めたというファンの方も多かったことだろう。日本との違いに驚くことも多々あったであろうが、中でも特徴的なのは極端すぎる“守備シフト”だろう。

 今回は今やメジャーでは当たり前となった守備シフトについて、データサイト『Fangraphs』 から今季のデータを中心に紹介したい。


攻守両面で苦しんだエンゼルス


 守備シフトと一口に言っても様々だが、多いのはどちらかの塁間に内野手が3人偏る形で守るもの。主に引っ張り傾向の強い打者に対して敷くシフトで、例えば左のプルヒッターが登場した時、二塁手は通常よりも一二塁間を狭めて深く守り、広く空いた二塁手と遊撃手の間に三塁手が回ってくるという形。三塁線はガラ空きになるが、二遊間を抜けてセンターへ…と思った打球が、記録上「三ゴロ」となったりするシーンを目撃した方もいたのではないか。

 データを見ると、やはり「左打者」が打席に入った時にシフトが発動することが多い。実際、2017年には対左打者の22.1%でシフトが敷かれたという数字も残っているほどだ。

 『Fangraphs』では、シフト時の成績もまとまっている。なお、そのデータは「本塁打」や「三振」といった守備シフトに無関係だった打席は省き、“シフトを敷いた時に前に飛んだ打球の数”を打席数としてカウント。そのうち、“どのくらいの確率で安打になったか”が打率となっている。

 それを踏まえて、2010年以降のメジャーリーグで「シフトあり時の打率と打席数」を見てみよう。

【守備シフトが敷かれた時の打率と打席数】
2010年:率.317(3323)
2011年:率.298(3065)
2012年:率.318(6176)
2013年:率.304(8545)
2014年:率.305(14972)
2015年:率.307(24486)
2016年:率.310(34801)
2017年:率.305(33218)
2018年:率.305(40730)


 こうしてみると、率はあまり大きな変化がないなか、()内の打席数は激増。守備シフトが敷かれた回数は急増しているということが分かる。ここ7~8年で10倍以上に膨れ上がっており、もはやシフトを見ない試合はないと言っても過言ではない。


 では、今季のメジャーリーグで最も守備シフトの影響を受けなかったチーム(打線)はどこだったのだろうか。シフトあり時のチーム打率ランキング上位3チームと、下位3チームは次の通りだ。


【守備シフトが敷かれた時の打率ランキング・チーム】
.346 ロッキーズ
.345 ブレーブス
.340 マーリンズ ↑ トップ3
~~~~~~~~~~~~~
.278 ブルワーズ ↓ ワースト3
.271 フィリーズ
.268 エンゼルス


 比べてみると、1位と最下位では7分8厘もの差が出ていた。最下位は大谷が所属するエンゼルス打線で、今季最も相手守備シフトの罠にかかっていたことになる。続いて、シフトあり時のチーム被打率ランキングだとどうなるか。


【守備シフトが敷かれた時の被打率ランキング・チーム】
.275 ブルワーズ
.276 タイガース
.276 オリオールズ
~~~~~~~~~~~~~
.317 エンゼルス
.318 パドレス
.321 ナショナルズ


 ここでもワースト3位にエンゼルスの名前が…。2018年に限って言うと、エンゼルスは攻守両面において守備シフトに苦労していたことになる。


投手・大谷には不運な結果


 続いて、選手レベルでもデータを調べてみた。

 最も守備シフトに助けられた投手は、今季13勝を挙げたブレーブスのマイク・フォルタネビッチ。シフトあり時の被打率は.186だった。シフトなしの状況では.277なので、自軍の守備シフトにかなり助けられたと言えるだろう。

 一方で、シフト時に被打率が最も高くなったのがナショナルズのタナー・ロアークで.364。シフトなしでは.260だったので、守備シフトが大きく裏目に出た投手の一人だった。


 では、“二刀流”の大谷はどうだったのだろうか。打者としては、シフトあり時の打率は.348に対し、シフトなしも.357とほぼ同じ。シーズン中にはシフトの裏をかいて三塁線にセーフティーバントを試みるシーンも見られたが、打者・大谷にとって守備シフトの有無はあまり関係なかったようだ。

 一方、投手大谷にとっては守備シフトが裏目に出る機会が多かった。シフトあり時の被打率は.368。シフトなし時の.250に比べ、打球が野手の間を抜けるケースが多くなってしまった。

 前述したように、大谷だけでなく、今季のエンゼルスは投手・野手の両方で守備シフトをうまく活用できなかったということ。エンゼルスは今季の反省を生かし、来季につなげることはできるだろうか。

 そして、繰り返されていく攻撃側と守備側の試行錯誤のなか、守備シフトは今後どのように進化を遂げるのか。こちらも注目だ。


文=八木遊(やぎ・ゆう)

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