マルチスポーツブランドのアディダスが2月11日、都内で「NEW ADIDAS TRAINING」のメディア発表会を開催した。
同イベントには、ボクシング現WBA世界フライ級王者の井岡一翔、プロテニスプレーヤーの伊達公子らトップアスリートやトレーナー総勢19名が登場。野球界からは、“代走の切り札”として読売ジャイアンツ一筋のキャリアを歩み、昨季、惜しまれつつも20年の現役生活に幕を下ろした鈴木尚広氏が登壇し、トレーニングにまつわるエピソードやこだわりなどを語った。
鈴木氏が現役生活の中で積み重ねた盗塁数は228。(200盗塁以上の)通算盗塁成功率は史上最高の82.91%だ。そんな日本球史に名を刻んだ走塁のスペシャリストがイベント終了後、『ベースボールキング』のインタビューに応じてくれた。今回は、道具へのこだわりと開幕が目前に迫ってきたWBCについて。
・インタビュー1はコチラ⇒「27.431」から「42.195」の世界へ
・インタビュー2はコチラ⇒盗塁は「カレーみたいなもの」?!
・インタビュー3はコチラ⇒代走の切り札が語る盗塁の技術
インタビュー=ベースボールキング編集部
――道具へのこだわりはありましたか?
鈴木:野球は道具を扱う競技なので、フィット感とか使った感触はすごく大事ですよね。
――当時はアディダスのスパイクを履いていたと思いますが、担当者に要望を伝える機会は多かったですか?
鈴木:僕はあまり要望は伝えなかったですね。履いた瞬間に良かったので。フィット感というか、“一体感”ですね。「履いている靴」と「履かされている靴」って全然違うじゃないですか。履いている靴は時間が経てば、より馴染んで靴自体が自分に変わっていくんですよ。
――良いと思ったものを使い続けると
鈴木:僕はそういうタイプでした。新しい物を履くって結構勇気がいるんです。
――道具ですごく気になっていたのが、鈴木さんはスイッチヒッターですが、代走で塁に出た時、左打席用のヘルメットを常にかぶっていたイメージがあります
鈴木:右ピッチャーの時は左用で、左ピッチャーの時は右用のヘルメットをかぶっていたんですよ。多分、右ピッチャーの時が多かったんでしょうね。
――塁に出るときに使うヘルメットを分けていたんですか?
鈴木:「このピッチャーが投げる」とういのは大体分かるじゃないですか。「このピッチャーが来たら代走行くぞ」と言われたときに、右ピッチャーだったら左用のヘルメットをかぶっていました。自分がバッターボックスに立ったことをイメージして(笑)。
だって気持ち悪くないですか? 打席には立ってないけど、右ピッチャーなのに右用のヘルメットで塁にいるのって(笑)。だから自分でヒットを打ったイメージで(笑)。そこに違和感があるのが嫌なんですよ。
――以前、通算228個の盗塁の中で「満足できる盗塁はほとんどなかった」と仰っていましたが
鈴木:満足できる盗塁なんて年に1回できるか、できないかでしたね。
――228個の盗塁の中で「これは完璧だった」と言える盗塁はありますか?
鈴木:228個も盗塁したかなぁ(笑)。どれかなぁ…。
――セ・リーグは名キャッチャー揃いでした。
鈴木:セ・リーグの方が走りづらかったですね。セ・リーグは細かい野球をするチームが多いじゃないですか。
「次の塁へいかに進むか?」という作戦があったり、相手ピッチャーもそれに対してクイックしたり、キャッチャーも注意深かったり。パ・リーグはドカンと一発が多かったりするので。リーグの持ち味が全然違いました。
――そういった違いもあるということで、ベスト盗塁を挙げるのは難しい?
鈴木:「何をとって最高か?」ということを考えているんですよね。場面が良ければ最高なのか? ただ単に良い走塁なのか? どれが良かったかっていうのは…。
でも、良い時はスタートした瞬間に「セーフになる」と感じますね。「自分って速いな」って思う時があるんです。風を感じるときがあるんですよ。塁間で。
――2009年の第2回WBC日本代表で、当時監督を務めた原辰徳さんが「亀井義行と鈴木尚広のどちらを選ぶか悩んだ」という記事を拝見しましたが、当時は代表入りについて話すことはあったのでしょうか?
鈴木:「お前もしかしたら選ばれるかもよ」っていう声を聞くことはありましね。でも、亀が出場して活躍しましたし、「行かなくて良かった」と思いましたね(笑)。
亀はイチローさんを励ますようなこともしてたし、役割が大きかったと思います。世界一にすごく貢献したと思うので。タラレバの話ですけどね。でも、「ヤバいんだろうなぁ」と思ってましたよ(笑)
――「行きたかったなぁ」ではなく?
鈴木:誰に聞いても「WBCの緊張感は全然違う」って言いますね。僕は経験したことがないですし、分からないんですけど。でも、プロ野球の世界でプレーすれば、プレッシャーはかかるわけですから。あの猛者たちがもっとプレッシャーを感じるということは、僕もそれを感じてしまうじゃないですか。
――超重要な場面で代走の可能性もありますしね。
鈴木:そうですよ(笑)。まぁ、そうなったら覚悟を決めるしかないんですけどね。1回は着てみたいと思います。
――ジャパンのユニフォームを?
鈴木:はい。今度は違う立場で着てみたいなぁと。憧れはありますね。
――第4回WBCが目前に迫っていますが、日本球界のOBとして日本代表にどのような戦いを期待していますか?
鈴木:日の丸を背負うというのは相当なプレッシャーがかかりますし、日本代表は2回優勝しているので、ファンの期待も大きくて勝つことを求められる。その中で勝つというのは非常に難しいので、タイトな戦いになるでしょう。
でも、日本代表には魅力ある選手が多くて、動ける選手もいますし。結果にこだわるけど、結果を考えずにプレーできたら良いと思いますね。
――“動ける”という点は短期決戦でも重要になりそうですね
鈴木:そうですね。そういう意味でも良いメンバーだと思います。僕の場合はジャイアンツの(坂本)勇人や菅野(智之)とかは気になりますし、筒香(嘉智)君とか、山田(哲人)君のようなすごいメンバーが揃ったので、厚みはあると思います。総合力で勝負できると思うんですよ。
――残念ながら出場を辞退する選手たちも出てしまいました
鈴木:そこは彼らが逆にモチベーションを強くできることだと思いますし、ネガティブなことも皆でカバーし合える日本にしかないチームワークの良さが出てくるんじゃないかと思います。それを生かして良い方向に行ってほしいですね。
⇒インタビュー1:「27.431」から「42.195」の世界へ
⇒インタビュー2:盗塁は「カレーみたいなもの」?!
⇒インタビュー3:代走の切り札が語る盗塁の技術
同イベントには、ボクシング現WBA世界フライ級王者の井岡一翔、プロテニスプレーヤーの伊達公子らトップアスリートやトレーナー総勢19名が登場。野球界からは、“代走の切り札”として読売ジャイアンツ一筋のキャリアを歩み、昨季、惜しまれつつも20年の現役生活に幕を下ろした鈴木尚広氏が登壇し、トレーニングにまつわるエピソードやこだわりなどを語った。
鈴木氏が現役生活の中で積み重ねた盗塁数は228。(200盗塁以上の)通算盗塁成功率は史上最高の82.91%だ。そんな日本球史に名を刻んだ走塁のスペシャリストがイベント終了後、『ベースボールキング』のインタビューに応じてくれた。今回は、道具へのこだわりと開幕が目前に迫ってきたWBCについて。
・インタビュー1はコチラ⇒「27.431」から「42.195」の世界へ
・インタビュー3はコチラ⇒代走の切り札が語る盗塁の技術
インタビュー=ベースボールキング編集部
道具へのこだわりと意識
――道具へのこだわりはありましたか?
鈴木:野球は道具を扱う競技なので、フィット感とか使った感触はすごく大事ですよね。
――当時はアディダスのスパイクを履いていたと思いますが、担当者に要望を伝える機会は多かったですか?
鈴木:僕はあまり要望は伝えなかったですね。履いた瞬間に良かったので。フィット感というか、“一体感”ですね。「履いている靴」と「履かされている靴」って全然違うじゃないですか。履いている靴は時間が経てば、より馴染んで靴自体が自分に変わっていくんですよ。
――良いと思ったものを使い続けると
鈴木:僕はそういうタイプでした。新しい物を履くって結構勇気がいるんです。
――道具ですごく気になっていたのが、鈴木さんはスイッチヒッターですが、代走で塁に出た時、左打席用のヘルメットを常にかぶっていたイメージがあります
鈴木:右ピッチャーの時は左用で、左ピッチャーの時は右用のヘルメットをかぶっていたんですよ。多分、右ピッチャーの時が多かったんでしょうね。
――塁に出るときに使うヘルメットを分けていたんですか?
鈴木:「このピッチャーが投げる」とういのは大体分かるじゃないですか。「このピッチャーが来たら代走行くぞ」と言われたときに、右ピッチャーだったら左用のヘルメットをかぶっていました。自分がバッターボックスに立ったことをイメージして(笑)。
だって気持ち悪くないですか? 打席には立ってないけど、右ピッチャーなのに右用のヘルメットで塁にいるのって(笑)。だから自分でヒットを打ったイメージで(笑)。そこに違和感があるのが嫌なんですよ。
満足できる盗塁は年に1回あるかないか
――以前、通算228個の盗塁の中で「満足できる盗塁はほとんどなかった」と仰っていましたが
鈴木:満足できる盗塁なんて年に1回できるか、できないかでしたね。
――228個の盗塁の中で「これは完璧だった」と言える盗塁はありますか?
鈴木:228個も盗塁したかなぁ(笑)。どれかなぁ…。
――セ・リーグは名キャッチャー揃いでした。
鈴木:セ・リーグの方が走りづらかったですね。セ・リーグは細かい野球をするチームが多いじゃないですか。
「次の塁へいかに進むか?」という作戦があったり、相手ピッチャーもそれに対してクイックしたり、キャッチャーも注意深かったり。パ・リーグはドカンと一発が多かったりするので。リーグの持ち味が全然違いました。
――そういった違いもあるということで、ベスト盗塁を挙げるのは難しい?
鈴木:「何をとって最高か?」ということを考えているんですよね。場面が良ければ最高なのか? ただ単に良い走塁なのか? どれが良かったかっていうのは…。
でも、良い時はスタートした瞬間に「セーフになる」と感じますね。「自分って速いな」って思う時があるんです。風を感じるときがあるんですよ。塁間で。
WBCへの想い…「1回は着てみたい」
――2009年の第2回WBC日本代表で、当時監督を務めた原辰徳さんが「亀井義行と鈴木尚広のどちらを選ぶか悩んだ」という記事を拝見しましたが、当時は代表入りについて話すことはあったのでしょうか?
鈴木:「お前もしかしたら選ばれるかもよ」っていう声を聞くことはありましね。でも、亀が出場して活躍しましたし、「行かなくて良かった」と思いましたね(笑)。
亀はイチローさんを励ますようなこともしてたし、役割が大きかったと思います。世界一にすごく貢献したと思うので。タラレバの話ですけどね。でも、「ヤバいんだろうなぁ」と思ってましたよ(笑)
――「行きたかったなぁ」ではなく?
鈴木:誰に聞いても「WBCの緊張感は全然違う」って言いますね。僕は経験したことがないですし、分からないんですけど。でも、プロ野球の世界でプレーすれば、プレッシャーはかかるわけですから。あの猛者たちがもっとプレッシャーを感じるということは、僕もそれを感じてしまうじゃないですか。
――超重要な場面で代走の可能性もありますしね。
鈴木:そうですよ(笑)。まぁ、そうなったら覚悟を決めるしかないんですけどね。1回は着てみたいと思います。
――ジャパンのユニフォームを?
鈴木:はい。今度は違う立場で着てみたいなぁと。憧れはありますね。
「総合力で勝負できると思う」
――第4回WBCが目前に迫っていますが、日本球界のOBとして日本代表にどのような戦いを期待していますか?
鈴木:日の丸を背負うというのは相当なプレッシャーがかかりますし、日本代表は2回優勝しているので、ファンの期待も大きくて勝つことを求められる。その中で勝つというのは非常に難しいので、タイトな戦いになるでしょう。
でも、日本代表には魅力ある選手が多くて、動ける選手もいますし。結果にこだわるけど、結果を考えずにプレーできたら良いと思いますね。
――“動ける”という点は短期決戦でも重要になりそうですね
鈴木:そうですね。そういう意味でも良いメンバーだと思います。僕の場合はジャイアンツの(坂本)勇人や菅野(智之)とかは気になりますし、筒香(嘉智)君とか、山田(哲人)君のようなすごいメンバーが揃ったので、厚みはあると思います。総合力で勝負できると思うんですよ。
――残念ながら出場を辞退する選手たちも出てしまいました
鈴木:そこは彼らが逆にモチベーションを強くできることだと思いますし、ネガティブなことも皆でカバーし合える日本にしかないチームワークの良さが出てくるんじゃないかと思います。それを生かして良い方向に行ってほしいですね。
⇒インタビュー1:「27.431」から「42.195」の世界へ
⇒インタビュー2:盗塁は「カレーみたいなもの」?!
⇒インタビュー3:代走の切り札が語る盗塁の技術