「自分が1番生きる場所」で…
2009年、当時の横浜ベイスターズに育成ドラフト1位で入団した国吉佑樹。196センチ、100キロと恵まれた体を持ち、2年目には支配下登録、プロ初勝利も挙げた有望株であるが、プロ入りから7年目を迎える現在に至っても「開花した」とは言えない。
昨シーズンは中継ぎとして28試合に登板したが、絶対的な信頼は得られず。現在も一軍と二軍の間でもがいている最中だ。
今年、その国吉にひとつの転機が生じている。秋季キャンプ中にラミレス新監督と話し合い、先発に再転向することが決定した。
「自分のスタイルが1番生きる場所(=先発)でやりたい」と、本人も先発転向を熱望していたこともあり、指揮官はその熱い気持ちに応えた格好となった。
ひとつ新たな目標ができた国吉。明らかに目の色が変わった。
オフは毎年恒例となった“たった1人のタイ自主トレ”を敢行。練習環境も整っていない地で自らマウンドを作るなど、ハングリー精神を取り戻すには最適の場所で汗を流した。
練習の休養日には現地タイの子供たちを対象に野球教室も行い、「ずっと待っていてくれた子供たちのためにも、野球教室はなんとしてでもやりたかった」と、異国の子供たちとの交流も刺激になったようだった。
昨年のキャンプでは、元巨人の江川卓氏から指導を受け、内角球の大切さを学んだ。
それまで国吉には、右打者の外角に逃げる球種はあったものの、内角に変化するボールがなかった。江川氏からアドバイスされた「内角のストライクと、1個外れるボールを練習しろ」を実践。比較的安全とされる外角主体のピッチングから、“怖いところ”であった内角に投げられるようになった。
当時指揮を執っていた中畑清前監督も、国吉の変化に「ピッチングの内容がガラリと変わった」と絶賛。国吉も、かなりの手ごたえを掴んで今シーズンに臨んでいる。
最速150キロを超える大型右腕の再出発。現在はファームで先発ローテーションを務め、一軍昇格のチャンスを虎視眈々と狙う。まだまだ伸びしろがあるのは間違いない。進化した国吉は、必ずやハマスタのマウンドに戻ってくることだろう。