「ルールは平等」
開幕から2カ月が経とうとしているプロ野球2016年シーズン。ここまでで最も注目を集めているトピックのひとつが、新たに導入された「コリジョンルール」だろう。
捕手と走者の接触を避け、ケガを未然に防ごうというのが導入の目的であったが、新ルールを巡って各地で混乱が起こる事態に。新ルール導入にともなってホーム上のクロスプレーがビデオ判定の対象となったことも相まって、監督が飛び出してきて抗議するシーンがよく見られるようになった。
「野球にならない」という声まで挙がっている中、そんな騒動も気にせず“順応”しているチームがある。横浜DeNAベイスターズだ。
1点を巡る重要な攻防が、数分間の「リプレイ検証」の結果、かんたんに判定が覆ってしまうことがある。監督や選手たちは困惑を隠せないが、ラミレス監督は「ルールはどちらにも平等なんだ。その中でプレーするだけ」。こう平然と話す。
どっしり構えて迎え撃つ
5月20日のヤクルト戦。2点リードの5回、一死三塁の場面で打者は投手の成瀬だった。
この場面、ふつうなら内野は失点阻止の前進守備を取るのが定石。しかし、ラミレス監督は内野陣を定位置にとどめたのだ。首をかしげる采配かもしれないが、これこそ「コリジョンルール」を見据えた采配ともいえるものなのである。
仮に成瀬が内野ゴロを打って本塁がクロスプレーとなった場合、「コリジョンルール」によってブロックが出来ないことから、1点を失う可能性は昨年までよりも高くなっている。
そこで指揮官は考えた。リスクを冒す作戦よりも、まずは「1アウト」を…。新ルールを見据えた戦法を選んだのだ。
ただし、この時に限ってはその作戦はハマらなかった。確実にアウトをひとつ取りたかった成瀬にタイムリーを許してしまったからである。結末は誤算だったが、ラミレス監督くらいどっしりと構えている方が、選手も迷いなくプレーできるというものだ。
あくまでも“平然”と...
5月に入り、戦力が整ってきたDeNA。ケガから復帰した梶谷隆幸や筒香嘉智の活躍はもちろんのこと、若手の桑原将志や関根大気、乙坂智といったところが台頭。若き力がチームに勢いを与えている。
また、好調の要因となっている投手陣の安定感も、ここにきてどんどん増している。現在は最下位に甘んじるチームだが、実は先発投手が5回を持たずに降板したという試合はここまで1試合もない。これができているのは、12球団でDeNAが唯一である。
ラミレス監督も最近の戦いぶりには手応えを感じており、「今はそこまで順位をきにしていない。1日1日どう戦うかが大事。勝てば順位は上がっていく」と自信のコメント。陽気な現役時代のキャラクターからは想像もできないほど、緻密でよく考えられたな采配を見せる。
「ゲーム差は分かっているよ。でも、順位の話をすると選手たちにプレッシャーをかけてしまうことになる」。いま最下位にいようが心配なし。ラミレス監督は、ベンチの中であくまでも“平然”と振る舞い、目の前の一戦だけに集中する。